そう言ってくださるのはとてもありがたいことです。私たちは国境を越えられる作品づくりをポリシーのひとつにしています。これまで海外4ヶ国、国内15都市で公演してきました。これからも昨年美里に開設された新拠点 Théâtre de Belleville を基盤に、国内外で作品を発表していきます。そのとき実は大切なのは新作の存在です。手間も時間も費用も大きくかかる新作ばかり量産していても行き詰まりますが、再演ばかりでも表現の発展性がありません。そのバランスが肝になるわけです。その意味で年に1度その機会をいただけることは大きな軸になります。その新作を県内の別の場所や、県外、海外へと巣立たせていきたいですね。そして、私たちが三重県に拠点を移して感じることがあります。たとえば東京のような地域ではエッジの効いた前衛的な表現の作品でも人口の0.01%が劇場に来るだけでも1000人以上になりますし、自分が演劇をやっているまたは関わっている人口自体が多いので、ほかの地域とは劇場体験と親しみがある人口絶対数が違います。でもほかの地域では単にエッジが効いている、ある意味で限られた観客のためだけの志向性ではだめで、同時に普遍的な要素を持っていないといけない。見たことないようなスタイルの演劇でも、劇場で客席にいるみなさん一人ひとりにとって劇的な体験をしてもらうことが重要で、エッジが効いている、つまり表現の可能性を探りつつ普遍的な要素を持ちながら国境を越えられる作品という、より私たちの目標に対して明確にシビアな作品製作になってくると思います。お芝居好きのひとにも、そうでないひとにも、個々それぞれに刺激的な劇場体験をしてもらいたいわけです。その意味では今回の原作「アリス」は子どもから大人まで広く知られているタイトルですし、劇場体験に親しみが薄いひとも、現代演劇にアレンジされた「アリス」を体験しにぜひ劇場に来てほしいと思います。
国際NGOプランが推進するBecause I am a Girlキャンペーンの主旨に賛同した作家が、それぞれ異なる国のプランの活動地を取材し、その体験をもとに執筆して生まれた書き下ろし短編集です。執筆陣には『トレイン・スポッティング』のアーヴィン・ウェルシュや『ショコラ』のジョアン・ハリスなど世界一流の作家が参加しています。 角田光代さん自身も、プラン・ジャパンより依頼をうけて2009年と2011年に西アフリカ・マリの女性性器切除の撲滅活動や、インドの人身売買シェルターの様子を取材。そのルポは『CREA』や『日経ウーマン』など各誌に掲載されました。その経緯から、角田さんは本書のコンセプトに共感して翻訳を決意し、このたび出版に至ることになりました。
Because I am a Girlキャンペーンについて
Because I am a Girlは、国際NGOプラン(本部:イギリス)が展開するグローバルキャンペーン。世界では、女の子であることに加え、年齢が低いことも家庭や社会で軽視される要因となります。将来の稼ぎ手として期待できない女の子は、家計への負担などから、学校へ行くことも許されず、早くに結婚させられたり、働かされたりと差別を受け、自分の人生が自由に選択できることすら知りません。NGOプランは彼女たちが「生きていく力」を身に付け、途上国の貧困が削減されることを目指します。
毎年10月11日は国際ガールズデーです
国際ガールズデーは、プランジャパンがBecause I am a Girlキャンペーンの一環として、国連に働きかけた結果制定されました。 国際ガールズ・デーの制定は、ジェンダー(文化的・社会的に形成される男女の差異)の平等をもたらし、社会的に軽視、差別され、時に危険な目にあってきた女の子たちが、潜在能力を発揮できる社会を作っていくための第一歩です。女の子一人ひとりが持つ可能性や能力を社会で存分に生かしていくために、国際ガールズ・デーは大きな役割を担っています。