三重県総合文化センター ブログ

取材ボランティアレポート「源氏物語に埋め込まれた真意を読む」

講師

会場に入ると、ステージの上には大きなグランドピアノが暗めの照明の下でぴかぴか輝いていた。通路には紫式部という名前の花が飾られ、源氏物語好きの人たちの気分を盛り上げてくれている。受付が始まるとあっという間に席が埋まり、開演を今か今かと待ちわびた。

この日の会場の雰囲気は、「朗読会」というより「演奏会」。
もちろん、私たちが待っていたのは、河原徳子さんというスーパースター。
そう、あの日、会場にいた私たちの目の前に現れたのは、紫式部その人。
河原徳子さんは、見事に紫式部に成り代わって私たちに源氏物語の世界を再現してくれた。

演奏

今回は、「朗読とピアノ」のコラボレーションで、ピアニストの西野愛さんが河原徳子さんの朗読に合わせて演奏。あまりにも朗読にぴったりで感動したのだけど、全曲、この日のために作られたオリジナル曲だということだった。

ああ、そんな貴重な演奏が、たった一日で終わってしまうなんて!これはぜひ、CDにしてほしいし、テレビ番組で「源氏物語特集」として再現してほしいと心から思う。

瀬戸内寂聴訳の源氏物語は、実は全巻買ってある。瀬戸内寂聴さん渾身の力作だから、まよわず全巻注文して買ったのだった。しかし、まだ全然読んでない。ひとたび、ページを開き、源氏の世界に没入してしまうと、俗世に戻ってこれない気がして怖いのだ。だから、ゆっくりお茶でも飲みながら、読書を楽しむ生活ができるようになった時のために、本棚の一番奥にしまってあるのだけれど、河原徳子さんの朗読を聞いたら、我慢できなくなってきた。源氏物語を持って喫茶店に行き、モーニングをいただくっていうのはどうかな。できれば、クラシック音楽がBGMにかかっているお店がよい。和服を着ながら読むとさらに雰囲気が出るかもしれない。

会場の様子

ピアノの伴奏で朗読を聞くという優雅な設定はとてもロマンチックなのだが、紫式部が源氏物語で訴えたかったことはそんなロマンチックなことではなかった。光源氏という一人のモテ男を中心に繰り広げられる恋の物語には違いないが、そこには、主体的に人生を選ぶことのできない女の悲哀がつまっていた。

源氏物語の前半は昼ドラの世界だけど、後半はまさに現代社会に生きる私たち女性が抱える問題そのもの。女性の自立がかなわず、自分の意思で人生を選ぶことのできなかった時代ではなく、がんばれば自分で人生設計ができるようになった今だからこその苦悩があの時代にここまで具体的に書かれていたとは驚きである。紫式部の生きていた時代にできた女性の唯一の自立は「出家」。出家することでしか、女性は男から自由になることができず、心の平安を保つことができなかった。だからこそ、紫の上は死ぬ直前に「出家させてくれ」と光源氏に必死に頼んだ。

そんな世界をステージ上で繰り広げてくれた河原徳子さんに感謝です。

(取材ボランティア:海住さつき)

取材したイベント

源氏物語に埋め込まれた真意を読む

開催日:2019年9月22日
会場:三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」多目的ホール
講師:河原徳子さん(朗読文学サークルパティオ主宰、日本文学研究家)

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