三重県総合文化センター ブログ

【取材ボランティアレポート】日本人はどこから来たのか?3万年前の航海徹底再現プロジェクト

講演風景

「日本人は大陸からやって来た」。

 何となく、そう信じてはいた。

マンモスも、仏教も、漢字も、豆腐も、元はといえば、み〜んな大陸からやって来たのだから、日本人も同じルートをたどったのだろうなあと思ってはいた。
マンモスはたしか、日本列島が大陸と地続きだった時に歩いてやってきたはず。
仏教は船に乗って中国に渡ったお坊さんたちが、必死の思いで持ち帰ったんでしょ?

じゃあ、そもそも日本人は、いつ、どうやって来たの?

 「最初の日本人は、3万年以上前に海を越えてやってきました。その証拠に、約3万8000年前頃(後期旧石器時代)の遺跡が日本中で1万箇所みつかっているんです」。

海部陽介さんのお話は、3万8000年以前の遺跡が日本ではみつかっていないこと、3万8000年前を境に、どっと遺跡が増えるということは、その頃に何かが起こった、つまり、誰かがどこかから来たと考えるのが自然だというところから始まり、実は、その頃というのは、ホモ・サピエンスが全世界に広がり出した時代なんですよ、とテンポよく展開していった。原人・旧人にはできなかったがホモ・サピエンスにはできたこととは何でしょう?という質問が投げかけられると、会場中から一斉に「海を越えた」「寒い地方に行った」という声が次々あがる。まるで、アクティブ・ラーニングの教室のようだ。開始5分であっという間に聴衆は海部さんの話術に引き込まれ、すっかり3万年前の航海再現プロジェクトの乗組員になったかのような気持ちになった。

講師

具体的には、台湾から与那国島の航海を再現するのがこのプロジェクトの目的。なぜなら、当時、大陸と日本は、少なくとも沖縄ルートは陸続きではなかったので、船に乗って渡ってきたということがわかってきたからだ。つまり、海部さんたちが取り組んでいるのは、人類が最初に作った船を再現しようという試みでもある。

船の材料としては、草、竹、丸木の3つの可能性を考えており、まずは草で作ることに取り組んだ。材料を草にするだけではなく、道具もすべて、当時の遺跡から出たものを使うから、例えば、草を刈るのに鎌を使わず、石器を使ったり、方角を見るのに道具を使わず目視に頼るとか、すべて手探りで当時の状況を再現していく。ありとあらゆる英知を集め、成功に向けて、日本だけでなく、台湾も巻き込んだ一大プロジェクトになっている。

第一回目の実験の様子を撮った映像を見せてもらった。ようやく船の準備が整って、海にこぎ出すのだが、たった7人の男女が、笠帽子をかぶって、波間に木の葉のように揺られながら、小さな草の船を必死で漕いでいる姿を見ていたら、思わず手に力が入ってしまった。がんばれ!負けるな!でも、無理しないで!無事で帰って来て!

結果として、1回目の実験は失敗に終わってしまったのだけど、2019年の本番に向けて、準備は着々と進んでいるという。

実験の様子はテレビ番組にもなっているので、ぜひご覧いただきたい。

講演が終わるころには、すっかり海部陽介さんを始め、プロジェクトのメンバーのファンになってしまった。もしもこの航海が成功すれば、日本人のルーツに関する研究が大きく前進することは間違いない。私たちの祖先が、人類初の航海を成功させて渡ってきたなんて、何て誇らしいんだ!しかも、それを実証したのが日本人のチームだなんて、私たちにとって大きな自信になる。

お名前に「海」の字が入っている海部さん。自ら現場に出て陣頭指揮をとっておられ、すっかり日焼けして、その横顔が精悍な正真正銘の「海の男」。きっと3万8000年前にも、海部さんのような方がいて、海を渡って新天地を切り開くというロマンを実現させたにちがいない。

プロジェクトの成功を心から応援したい。

(取材ボランティア:海住さつき)

取材したイベント

日本人はどこから来たのか?3万年前の航海徹底再現プロジェクト

日程 2017年9月23日(土曜祝日)
会場 三重県男女共同参画センター 多目的ホール

【取材ボランティアレポート】見る知る巡る!みえミュージアムセミナーの先ドリセミナー

大野館長

みえミュージアムセミナーの先ドリセミナー

基調講演 博物館で若返る? あなたの脳年齢
講師 三重県総合博物館館長 大野照文さん

第2部 ミュージアムトーク
パネリスト 桑名市博物館:杉本竜さん、パラミタミュージアム:湯浅英雄さん、松浦武四郎記念館:山本命さん、斎宮歴史博物館:船越重伸さん、海の博物館:縣拓也さん
進行 大野照文さん

「博物館で若返る?あなたの脳年齢」という講座のチラシを見たとき、いったい何が語られるのかと大いに期待を抱き、すぐさま参加の申込みをしました。講座を聞いて、衰えかかってきた自分の脳が再び活性化できるヒントを得られるなら、これほどうれしいことはありません。

第一部の冒頭で大野照文さんが語られたゾウの歴史は、私の知的好奇心を刺激してくれました。約5000万年位前に初めてゾウがアフリカに出現し、各地へと移動しました。その頃日本は大陸と陸続きであったため、日本へもゾウはやってきており、化石がよく出てくるのだそうです。しかし1500万年位前に大陸の移動が起こり、日本は大陸から切り離されました。200万年前からは氷河期が始まり、またゾウが渡ってくるようになりましたが、1500万年前〜200万年前の間、海の中の孤島であった日本には本来ゾウはいないはずです。しかし、ミエゾウは500万年前〜300万年前に日本にやってきました。かれらはどのようにして日本にやってきたのか、これは今も謎だといわれました。

一体どのような方法で来たのかと考えると興味が湧いてきて、帰りにミエゾウの復元模型を見に行ってみました。なんという巨大さだろう。なるほどこれほど大きければ浮力も大きく、泳いで来られないわけがない。小さな人間でもドーバー海峡を泳いで渡るという快挙を成し遂げたという話をきいたことがありますが、この巨大さなら、朝鮮半島の先端から島伝いに九州へ、あるいは樺太から北海道へなら渡れたはずだと確信しました。一つの話から「好奇心が刺激され、観察、推理、そして確かめの連鎖が生まれます」という大野館長の言葉の通り、この日私は家に帰っても、次々と湧き起こる疑問(なぜ海を渡ったのだろう、なぜ多くのミエゾウが来たのかなど)解明の糸口を探して、インターネットに向かい合っておりました。

第2部

第二部では三重県内にある5つのミュージアムの学芸員さんから、学芸員になったきっかけや各ミュージアムの紹介をお聞きしました。その中で、私が特に興味を覚えたのは桑名市博物館です。市の博物館であるにもかかわらず、桑名藩や松平定信の関係資料・古万古焼・万古焼・浮世絵・刀(村正)など上質な収蔵品があり、展示会を自館の収蔵品でやれるということでした。これは、桑名に住んでいた人たちがお金持ちであっただけではなく文化への意識が高かったため、博物館へたくさん寄贈をされて貴重な文化財の散逸を逃れたことによります。ぜひ一度訪れて素晴らしい作品群を見てみたいものだと思いました。
「ここがすごいぞ」という松浦武四郎記念館、「祟り、祟られ、化け、化かされ」の斎宮歴史博物館、「骨まで愛して」と訴える海の博物館など、多くの博物館が魅惑的な言葉で私を誘っていて、今年の秋もまたとても忙しくなりそうです。

(取材ボランティア:興味津々子)

取材したイベント

見る知る巡る!みえミュージアムセミナーの先ドリセミナー

日程 2017年9月9日(土曜日)
会場 三重県文化会館 レセプションルーム

【取材ボランティアレポート】見る知る巡る!みえミュージアムセミナーの先ドリセミナー

講演風景

秋です。
秋といえば、「芸術の秋」。
三重県生涯学習センターでも、毎週のようにワクワクするイベントが目白押し。

どれに参加しようかなあ・・・とスケジュール帳とにらめっこしながら計画たてるのも、秋の楽しみのひとつ。たくさんあるイベントの中で、毎年、特に楽しみにしているのが「みえミュージアムセミナー」。

歴史の宝庫である三重県には、北から南まで様々な個性派の博物館・美術館があり、全部を回るのはなかなか大変なのだが、何と!「みえミュージアムセミナーの先ドリセミナー」では、各地の博物館の館長さん・学芸員さんたちが一堂に会し、それぞれの博物館のおすすめポイントを熱く語ってくれるのだ。

第一部は、三重県総合博物館の大野館長が「博物館で若返る?あなたの脳年齢」と題して、好奇心の起源が、人類発祥の地、アフリカで生き延びるために必要な能力だったというお話から。ライオンなどの猛獣に襲われないようにするために、当時の人類は、周りをよく見て、少しでも怪しいことがあれば「あれは何だろう?」と興味を持って探求することが必要だったそうです。襲われそうになるという怖い体験をし、それを何とか乗り切ることができると「あ〜よかった!助かった!」という幸福感で満たされる。それが快感になって、人類は好奇心を持つようになったという。現代社会では、猛獣に襲われることはあまりないけれど、急速な環境変化に適応するために、今、また、好奇心が問われている。大人も子どもも、もっと博物館に行って、好奇心を刺激されたほうがいい。

第2部シンポジウム

第二部は、桑名市博物館、パラミタミュージアム、松浦武四郎記念館、斎宮歴史博物館、海の博物館から、館長さんや学芸員さんが集まり、「私が学芸員になったきっかけ〜学芸員が紡ぐ三重の夢〜」と題して、熱いトークが繰り広げられた。

みなさん、決して恵まれた環境ではない中で、できる限り、多くの人に来てもらいたいという思いで日々、奮闘していらっしゃる。驚いたのは、三重県には、先祖から伝わる家宝を、公共性の高いものだからと、博物館に寄贈する篤志家の方が多くいらっしゃるということ。おかげで、予算が限られている中、所蔵品は充実しており、他県から貸し出し依頼が絶えない館があるとか。

また、なるべく多くの方に見ていただきたいという思いから、例えば、NHKの大河ドラマのテーマに合わせた企画展をしたり、参加型のイベントを開催するなど工夫をこらしているとのこと。博物館の学芸員さんは、実は想像よりもアクティブな方たちなのだというのが、今日、一番の発見だったかもしれない。

実は、今日のシンポジウムに参加していた博物館の中で、地理的に遠いためまだ行ったことがない場所が一か所あるので、この機会にぜひ行こうと心に決めた。

館長さんや学芸員さんのお話を直接聞くと、親近感がわいて、何となくとっつきにくかった博物館が身近に感じられるようになったのも今日の収穫。

芸術の秋はまだまだこれから。

三重県内の博物館周りをして、秋を満喫したいと思う。

(取材ボランティア:海住さつき)

取材したイベント

見る知る巡る!みえミュージアムセミナーの先ドリセミナー

日程 2017年9月9日(土曜日)
会場 三重県文化会館 レセプションルーム

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