三重県総合文化センター ブログ

台湾 文化の交差点で味わう優しいひととき 〜舞台「珈琲時光」台湾公演レポート〜



第七劇場(三重)とShakespeare’s Wild Sisters Group(台北)ー2つの劇団による日本と台湾の国際共同制作として、2016年より始まった演劇プロジェクトNotes Exchange。そのフィナーレとなる舞台「珈琲時光」の台湾公演が、12月1日に開幕しました。今回は、その小旅行の様子をご紹介! (Photo:松原豊)

淡水の街並みと、丘の上に立つ雲門劇場



 

 台湾公演の会場は、台北駅前から地下鉄MRTで約40分。博物館や公園が点在し、アーティスティックな雰囲気が漂う人気のスポット・淡水地区にあります。雑多で豊富な食材が揃う淡水老街には、屋台が立ち並び、100円ほどで味わえるイワシのつみれスープ「魚丸湯(ユーワンタン)」は絶品。更に河沿いを進むと、お洒落なカフェや雑貨屋が立ち並び、夜にはこの時期、幻想的なイルミネーションを見ることができます。  

 そこから小高い丘のほうへ歩みを進めると、見えてくるのが雲門劇場。緑に囲まれた中に、遊び心溢れるオブジェが点在し、眼下にはフォトジェニックな景色が広がります。雲門劇場は、世界的に有名なダンスカンパニー「雲門舞集」の本拠地。基金を設立し建てられた民間の劇場で、稽古場とホールを併設し、曲線美の外観が近未来を思わせます。敷地内の蓮池には「旋的冥想(めぐる瞑想)」と名付けられた、雲門第一人者のパフォーマー羅曼菲(ルオ・マンフェイ)の像も。


 



 

音楽のように日常を紡ぐ戯曲と 質感や温度が伝わる演出





 そんな由緒ある劇場で幕を開けた舞台「珈琲時光」。小津安二郎がセットの小道具にも本物の一級品を使用するなどのこだわりを見せたように、今回の舞台も衣装や食器にもセンスが光ります。初日は、老若男女100名以上のお客様が訪れ、12月3日にはレセプションパーティーも開かれました。その中からいくつか現地の声をお届けします。

《珈琲時光》多重的人物丶時空丶語言丶物件…,猶如多重旋律線的分進交融和對話。?一條旋律線,既能共存,也能獨自存在,自成一個世界。這樣的時光,?是複雜,但在呈現上,卻能有條不紊,乾淨明晰,簡約中又不失温度,甚至連字幕的成型與速度,也創造了空間的節奏。江文也和小津是故事的人物,或只是符號,王嘉明和鳴海康平的交會更成就了一齣好戲。
—林采韻(藝評人)

《珈琲時光》重層的な人物、時空、言語、モノ…、いくつものメロディが交わり、溶け合い、対話を成していく。メロディごとに共存することも、単独で存在することもでき、1つの世界を構成している。このような時間、複雑で、しかしあるがままで、秩序立てることもできて、洗練され、シンプルかつ温度を失わない。字幕に至っては、その心地よいスピードで、空間のリズムをも創造していた。江文也※1と小津は物語の中の人物であり、あるいはただの記号であるが、王嘉明と鳴海康平の試みは成功していた。実によい芝居であった。
—林采韻(劇評家)

導演鳴海康平的簡潔俐落,卻從王嘉明的複雜中,萃取出一種透明感,以往王嘉明的多線處理中所?生的和聲外音也好、裝飾音也好、不協和音也好,都被梳理成存在但看不見的光,但我最喜愛的是,鳴海康平雖然以極簡的手法塑造《珈琲時光》,但有別於極簡常伴隨的冰冷,鳴海卻賦予整齣戲一個剛剛好的温度—就像??,温熱不湯口。
—林芳宜(作曲家)

鳴海康平の演出はシンプルで無駄がなく、王嘉明の複雑な戯曲から、透明感を抽出して、これまでの王のマルチライン処理で生成された外部音、装飾音、不協和音、それらすべてが透過されて、目には見えない光になっていた。しかし、私が最も好きなのは、鳴海康平がきわめてシンプルな方法で《珈琲時光》を形作りながら、冷めてもおらず、熱すぎもせず、ちょうど良い温度でコーヒー(作品)を提供していた点だ。
—林芳宜(作曲家)

 日本側の演出家・鳴海康平さんと、台湾側の劇作家・王嘉明(ワン・ジャミン)さんの戯曲が、まるでパズルのピースのようにはまり、舞台上に豊かな劇空間が広がった瞬間でした。




そしてバトンは三重・金沢へ

 盛況のうちに幕を閉じた台湾公演。2月には、いよいよ三重・金沢公演が開幕します。多感な青春時代を三重で過ごした小津安二郎。その小津へのオマージュを込めて、台湾映画の巨匠・侯孝賢(ホウ・シャオシェン)※2が製作した映画「珈琲時光」。そして、台湾の水利事業に貢献した金沢出身の技術者・八田與一※3。三重・台湾・金沢がつながり、一つの味わいが生まれる瞬間をぜひ劇場でお楽しみください。


 

【注釈】
※1 江文也(こうぶんや)…1910-1983年。台湾出身の作曲家・声楽家。日本に留学し1936年のベルリンオリンピック芸術競技では管弦楽曲「台湾舞曲」を発表。のちに大陸に渡るも戦争によって国籍を奪われ日本と中国に2つの家族を持つことになる。映画『珈琲時光』では、ヒロイン・陽子がライターとして彼の生涯を調べていく。

※2 侯孝賢(ホウ・シャオシェン)…1947年-。台湾の映画監督。1989年の第46回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞(『悲情城市』)をはじめ、国内外の数々の映画賞を受賞。2003年には、小津安二郎生誕100年を記念した映画『珈琲時光』(主演:一青窈・浅野忠信)を製作している。侯監督と台湾側の劇作家・王嘉明さんが友人であったことから、今回の舞台が実現した。

※3 八田與一(はったよいち)…1886-1942年。金沢出身の土木技術者。台湾へ渡り、上下水道の整備に貢献したほか、烏山頭ダムを完成させ嘉南地域の農業を救った。この功績を称え、ダムの近くには彼の銅像と記念館が建てられている。

三重県文化会館×金沢21世紀美術館 
第七劇場×Shakespeare’s Wild Sisters Group

日台国際共同プロジェクト Notes Exchange vol.3
舞台「珈琲時光」

企画協力 侯孝賢
脚本   王嘉明
演出   王嘉明 鳴海康平
出演  【台北】Fa、圏圏 
    【三重】佐直由佳子、小菅紘史、
        木母千尋、菊原真結、三浦真樹  
    【静岡】鈴木真理子〔SPAC〕 
    【金沢】西本浩明〔演芸列車「東西本線」〕
日時       2月10日(日) 14時/19時
     2月11日(月祝)14時
     上演予定時間|約100分 
     ※日本語・中国語・英語字幕付き 
     ※各回終了後、トークセッション開催
会場   三重県文化会館 小ホール
料金  《整理番号付き自由席》一般2,500円(当日3,000円)
     25歳以下1,000円 18歳以下500円
★三重県文化会館、エムズネット、第七劇場WEBサイトにて販売中。

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