取材ボランティアレポート「なぜ人は聖地を目指すのか−聖地巡礼 世界遺産からアニメの舞台まで−」
なぜ人は聖地を目指すのか
私も含め、退職した人たちの話題は、『どんな時間の過ごし方をしているのか?』といった内容が多いように思える。
旅行、読書、外食、スポーツ観戦等がよく話題になるが、四国遍路を何日間もかけて、地道に続けやり遂げた話を聞いた。その時、非常に高尚なものと思え、その行為の目的、信仰心とはどのようなものか興味を持った。
この度の講座は、それらの疑問を解き明かす鍵になるのではとの思いで受講した。
講座では、21世紀以降、巡礼者が近年激増しているスペインのサンティアゴ・デ・コンポステラの地を目指す巡礼の紹介があった。聖地である大聖堂と聖遺物の由来、巡回ルート、周囲の環境、巡礼のための交通手段(バス、徒歩、自転車、馬、ロバ等)、また、講師自身が巡礼の中で出会った人々とのエピソードも交えられていた。
印象深かったのは、巡礼者の大半が宗教心を持っているわけでははなく、聖遺物への崇拝を目的としないという点であった。
その目的は、「本来の自分をとりもどす」、「自分の学びのための出会い」、「自己の内視」等とのことであった。こうした話を聞いていると、観光を主な目的としない旅と、巡礼の違いはあまり大きくないのではないかと思った。
かつての信仰は、神や教会、教団が中心であったのが、「自身が聖なるものとつながりたい」「個人でなんとかするのでほっておいてほしい」という考えに変化しているという。
特に日本の宗教は、とりわけ多くの人が知的な信仰ではなく、気分や感情によって関わるため、スピリチュアル化しやすいとのこと、そうした信仰の変化に対し、伝統的な価値を大切にすることが重要だとも話されていた。
多くの情報に振り回されることなく、幅広い価値観をもち、今までに培った感性で今後自身の信仰について関わることが大切なのではと感じた。
(取材ボランティア:渡邉)
取材したイベント
なぜ人は聖地を目指すのか−聖地巡礼 世界遺産からアニメの舞台まで−
2024年10月12日(土曜日)13時30分から
講師:岡本 亮輔(北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院 教授)