取材ボランティアレポート「そうぶんの竹あかり」
立冬が過ぎて日の入りが急に早まった11月11日。
今年5年目となる「そうぶんの竹あかり」が祝祭広場で開催となりました。
今年の竹あかりのテーマは『世界はただ輝いて』。
そして今回は、11月12日から始まる「女性に対する暴力をなくす運動」のイベントであるパープル・ライトアップとコラボレーションした紫にペイントされたリボン型の竹(竹ひご)と紫のライトも点灯されて、いつもと違った雰囲気の竹あかりも見ることができます。
この日のオープニングセレモニーでは、一昨年前から竹あかり会場で流れていた倍音楽演奏家の「倍音人(バイオンビト)Road」さんの生演奏が行われました。
音は音程を決める基音と音色を決める倍音で構成されています。倍音は単一ではなく整数倍の周波数が幾重にも重なった音で、倍音がどう共鳴するかによって音色は決定されます。
演奏に使われる楽器はガンクドラムとハンドパン。ガンクドラムは日本の楽器で四日市で製作されており、ハンドパンはスイス発祥の楽器です。両種はよく似た円盤型の金属製打楽器でスピリチュアル音楽として耳馴染みのある癒やしの音色を発します。
落日とともに明るさを増す竹あかりを前に入念なリハーサルを終えたRoadさんが、一畳分もない小さな低いステージに胡坐を組み、楽器を抱え込みました。
イメージを確認するかのように竹あかりを仰ぎ見てから、弾くように軽く指先で楽器を叩くと、ボワンと膨らんだ空気のような高音が波打つような感覚で流れ出します。
その音を辿って耳を傾け、叩く・押さえる・擦る独特の奏法。それは次第に早くなり素早く動く両手からは長く美しい響きと響きのない短い音が幾重にも重なって波紋のように遠くへ拡がっていきます。
音の綾は無邪気な子どもたちの笑い声と出会うと現実を包み込み、すべての音が遠くから聞こえてくるような幻想的な空間へと変わりました。広場の聴衆をすべて包み込んだ音の綾は夕闇の片隅で秘やかに耳をかたむけていたそうぶんの警備員を包み込んで、最後に暗闇に解けて20分間の短い演奏は終わりました。
わずかな静寂中「今日はよう寝られそうや」と誰がが呟いた声にハッと引き潮のように現実が戻った目の前には、始まりと同じように竹あかりがただ輝いているだけでした。
(取材ボランティア:鈴木ゆかり)
取材したイベント
そうぶんの竹あかり「世界はただ輝いて」
2021年11月11日(木曜日)から11月28日(日曜日)まで