三重県総合文化センター ブログ

社会見学:わくわく劇場体験ツアー「伊賀市立三訪(みわ)小学校」

《開催日時》2021年11月4日(木曜日) 13時30分から15時まで
《会場》三重県総合文化センター 中ホール
《団体》伊賀市立三訪小学校 5年生

伊賀市立三訪小学校5年生の皆さんを、劇場の普段は入れない部分に入って、劇場でのお仕事や裏側を体験してもらう「わくわく劇場体験ツアー」へご案内しました。
客席でホールのことや音響・照明などについての説明を聞いて、いざ舞台の上へ!

劇場体験ツアー 写真1
照明の熱を間近で体験。熱い!まぶしい!とみんな興味津々。

舞台上では照明器具の熱を感じてもらったり、光に色をどうやってつけるのかなどを見てもらいました。

劇場体験ツアー 写真2
調光室で「フェーダー」を操作し色染め体験!2つの色を組み合わせるとどうなる…?

その次は2階にある音響・照明を操作する部屋に移動し、機械の操作を実際に体験。

劇場体験ツアー 写真3
大迫(おおぜり)に乗って、奈落から舞台上へ登場してみる体験。客席が見えてきた!

楽器庫や楽屋などを見学し、機構を使って舞台に登場する特別体験も!
最後にちょっとした舞台機構ショーを見てもらってツアーは終了です。
どの子も興味津々に舞台スタッフのお仕事を体験してくれていました。 

参加者の声
  • ふだん、体験できないことを体験できて楽しかった。
  • そうぶんのことを知ることが出来て良かった。
  • 舞台の上だけじゃなくて、ホール全体に仕かけがあってびっくりしました。

社会見学について

三重県総合文化センターでは、小学校中学年を対象とした社会見学を実施しております。
未来の利用者である子どもたちに、公共の施設でのマナーやルールの他、普段は入ることのできない施設の裏側や、そこで働く人々のさまざまな「仕事」について楽しく学んでいただけるコースをご用意しています。
詳細は、「社会見学・施設見学」ページをご覧ください。

取材ボランティアレポート「ワンコインコンサート ミュージカル菜那くらら&花陽みく」

ワンコインコンサート

待ち望んでいた宝塚OGによるワンコインコンサート『ミュージカル菜那くらら&花陽みく』が一年越しでやっと開催されます。花組と月組でエトワールを務めた2人の歌声を大ホールで聴くことができるなんてなんと嬉しいことでしょう。

こちらは毎年恒例の国際共同組合デー記念コンサートです。開演前に梶館長から県内4つの共同組合の紹介と公演の見所としてエレクトーン奏者の宮崎誠さんの伴奏も愉しみにとの話しがありました。ワンコインコンサートのソロ出演歴もある宮崎誠さんは伴奏も併せると県文化会館への出演が4回もあるそうで、意外な縁に開幕前から客席と舞台の距離が縮んだような気がします。

気持ちも和み暗転した客席に突如として宝塚の代名詞とも言える『ベルサイユのばら』のプロローグが重々しく流れます。耳に入る多彩な楽器の音色はオーケストラの伴奏かと錯覚するほどで、事前に話しを聞いていなければとてもエレクトーン1台の演奏とは思えません。

そして舞台中央に2人の姿が。
退団してから3年以上経っているのにまったく変わらない姿に胸が熱くなります。

『ベルサイユのばら』と言えば男装の麗人オスカルが有名ですが主役はマリーアントワネット。マリーアントワネットの幼少期から斬首刑までを書いた同作の歌い出しは故郷を思う切ない歌詞の『青きドナウの岸辺』から。高く澄んだ歌声が客席を瞬時に魅了していきます。
続いて宝塚では珍しく1年間のロングラン公演となった伝説の海外ミュージカル『ME&MYGIRL』をメドレーで。ロンドンの下町ランベスで生まれた女の子が両親に「世の中に出て悔しいことが起きたら顎で受け流しなさい」と言われた言葉を健気に守り、笑って明るく歌う『顎で受けとめなさい』など、短い歌のひとつひとつに気持ちを込めて歌う姿は観ている者を物語の世界へと導いてくれます。そして同公演一幕の最後に歌われる軽快な『ランベスウォーク』では自然と手拍子が入り徐々に会場の空気が温まっていきます。
宝塚の代表曲を歌い終わった後は2人が選曲したソロを順番ずつ歌い継ぎます。宝塚公演パパラギより『心はいつも』、ミュージカルモーツアルト!より『ダンスはやめられない』、ミュージカルロミオ&ジュリエットより『あの子はあなたを愛している』、現在再演中のミュージカルレ・ミゼラブルより『夢やぶれて』…。

ソロが終了し中盤が過ぎると緊張が溶けたのか2人とも少しホッとした様子で、こんな大きなホールでソロを歌うことができて幸せだと嬉しそうに話していました。歌劇団にいたのに不思議な話しだと思いますが、宝塚ではメロディラインは男役が歌うもので、娘役はハーモニーがほとんど。ソロを歌うことは少なくてそのような感慨が口に出たのかもしれません。一昨年行われた宝塚OGのワンコインコンサートでは男役と娘役のコンビでしたから娘役の美しい歌声を堪能できる今回のコンサートは貴重なのです。

そんな2人が最後に選んだ曲はNHK朝ドラの主題歌『おひさま〜大切なあなたへ〜』。MCでは無観客公演のことにも触れられ観客の前でパフォーマンスをすることの意義を噛みしめて話され客席に観客がいることの重要さを語っていました。そんなコロナ禍での公演の困難さが歌詞と繋がります。

あなたは私の奇跡
あなたは私の希望

この暮らしが続くのなら
なにもいりはしない
(『おひさま〜大切なあなたへ〜』作詞:岡田恵和)

2人の心地よい透明な歌声は自粛生活に疲れた心に涼やかに染み入ります。お別れはプログラムには載っていないけれどもOG公演でお馴染みの『すみれの花咲く頃』を。宝塚を知らない人でも口ずさめる有名な歌は実は娘役のソロから始まります。

春 すみれ咲き春を告げる
春 なにゆえ人は汝を待つ
『すみれの花咲く頃』作詞:Fritz Rotter・白井鐵造)

優しい歌詞とソプラノの歌い出は聞く人を常に感動させます。引き続いて『この愛よ永遠に〜Forever TAKARAZUKA〜』が。大地真央の公演主題歌だったこの歌は歌詞を変えて宝塚を代表する歌となりました。コロナ禍で公演が中止となる度にどれだけこの歌詞に励まされてきたでしょう。そしてそれを周知の宝塚ファンが応援するように湧き上がる手拍子。まるで大劇場公演を観ているようです。

終演後のロビーには「宝塚を観るのは本当に久しぶり」、「また大劇場に観に行きたいね」など喜びの囁き声が響きます。

清楚で愛らしい容貌の菜那さん、多彩な表情で魅せる花陽さん。退団してもなお宝塚を感じさせることのできる2人の娘役力はなんと素晴らしいことでしょう。今となっては何ごともなく日常生活をおくるれることが本当に奇跡。大きな声で笑い、話し、エンターテイメントを堪能できる日が戻って欲しいと心より願いました。

(取材ボランティア:鈴木ゆかり)

取材したイベント

ワンコインコンサート ミュージカル菜那くらら&花陽みく
2021年7月16日(金曜日)11時30分開演

早わかりコラム「歌舞伎十八番と勧進帳」


歌舞伎十八番

得意なことをよく「十八番(おはこ)」と言いますよね。この言葉の由来とされるのが歌舞伎十八番。本来は「じゅうはちばん」と読みます。江戸歌舞伎の代表的な家系「成田屋」の初代〜 4代目市川團十郎が得意としたお家芸18作品をまとめたもので、7代目市川團十郎によって1832年(天保3年)に定められました。代々の團十郎が荒事を得意としていたことから、歌舞伎十八番も豪快でおおらかな演技が魅力の役が登場します。今回のレクチャーで解説していただく『勧進帳』では、武蔵坊弁慶がそれにあたります。

歌舞伎十八番の演目

@暫(しばらく)     A矢の根(やのね) B鎌髭(かまひげ)    
C勧進帳(かんじんちょう)D不動(ふどう)  E七つ面(ななつめん)  
F鳴神(なるかみ)    G助六(すけろく)   H蛇柳(じゃやなぎ) 
I象引(ぞうひき)    J押戻(おしもどし)K解脱(げだつ)
L毛抜(けぬき)     M景清(かげきよ) N嫐(うわなり) 
O関羽(かんう)     P不破(ふわ)   Q外郎売(ういろううり)

勧進帳

歴史上の悲劇のヒーロー源義経と彼の忠臣・武蔵坊弁慶の関所越えの逃亡劇を題材にした忠義のドラマ。能の『安宅』を原作とした松羽目物(下手に五色の揚幕、上手に能舞台に見られる臆病口、後ろに大きな松の絵が描 かれた舞台セットを使用した作品)です。弁慶による勧進帳の「読み上げ」、 富樫と弁慶、義経3人による「天地人の見得」、富樫と弁慶との緊張感溢れる「山伏問答」、足を踏みならしながら花道を引っ込む弁慶の「飛び六法」など、長唄の名曲に合わせて運命のドラマが展開します。解説は古典芸能のスペシャリスト・三重大学の田中綾乃先生と、歌舞伎の補綴も手掛ける木ノ下歌舞伎の木ノ下裕一さん。『勧進帳』は木ノ下歌舞伎でも上演歴があり、「関所を越える」=「あらゆる境界を超える」という視点で、弁慶を外国人俳優が、義経を女性が演じるなど大胆な演出と解釈で観客の度肝を抜きました。そんな思い入れたっぷりの作品をお二人で語り尽くしていただきます。

 

おしゃべり古典サロンvol.7

テーマ 「勧進帳(かんじんちょう)」
講師 木ノ下裕一さん(木ノ下歌舞伎主宰)
   田中綾乃さん(三重大学人文学部准教授)
日程 2020年8月14日(土)14時00分〜16時00分
会場 三重県文化会館 小ホール
料金 1,000円

イベント詳細はコチラ

取材ボランティアレポート「こいのぼりがいっぱい!!」

こいのぼり2021

その準備は気温が一桁に落ちた少し寒い朝のこと。

2年振りに『こいのぼりがいっぱい!!』のイベントが決定し、久し振りに顔を合わせたスタッフとボランティアは開始時間を待ちきれずに準備を始めます。

ギュウギュウと箱詰めされていたこいのぼりたちが外へ出られる日がやっときました。感動が目に沁みる…じゃない!マスク越しでも咳き込むほどの強烈な防虫剤臭!驚いてスタッフを見ると「心配だったので途中で防虫剤の量を増やしました」テへッと笑う。さすがに抜かりがない。

しわしわのこいのぼり

しかし…出てきたこいのぼりたちはシワッシワで元気がなさそう。一方のスタッフとボランティアは生き生きとこいのぼりをワイヤーに繋げていきます。

作業風景

「ここは色が同じだから、変えた方がいいよね。違う色あるかな」
「端の方は壁に引っ掛かるから小さいのがいいんだよね」
勝手知ったる作業を着々とこなし、祝祭広場にこいのぼりの花畑が広がります。軍手代わりの花柄のガーデニング用の手袋がお花畑によく似合う。

こいのぼりはワイヤーの片側に一列に並べないと揚げる途中で絡まり大きな手間となるのですが、今年は風がないので作業は本当に楽。順調に準備が整い、スタッフ考案の『ワイヤー2本連続揚げ作戦』で大量のこいのぼりたちはあっという間に空の上へ!

けれど…。風がなく、だらりとぶら下がるこいのぼりはまるで洗濯物のよう。ずらりと垂れ下ったこいのぼりたちを見て「まぁメザシのようだわ〜」と笑う朗らかな声が合図となったのか、微風に吹かれ一匹また一匹とこいのぼりが泳ぎ出します。一斉でなく気ままに、あっちこっち揃わずに。その緩さが妙で心地よい。

そうだね、この1年はこいのぼりだけじゃなく私たちも外に出てゆっくり空を見ることもなかったよね。自由になったこいのぼりと一緒に気持ちも軽くそうぶんの空に漂っていきます。

こいのぼり2021

ふと気がつくと子どもがこいのぼりの下を両手を広げ飛行機を真似てブーンブーンと走り回っています。強い日差しにこいのぼりの影が地面に映り、それはこいのぼりと一緒に水底を泳ぎ回っている小魚のようにも見えます。見上げると透きとおった青空に気ままに泳ぐ鯉たちの群れ。ふと自分も川底にいるような、そんな錯覚に陥ります。

さて、そうぶんコソコソ話。
150匹のこいのぼりの中に頭に「祝」と書かれたこいのぼりがいます。「祝」こいのぼりを見た人はいいことがあるとかないとか。そうぶんを訪れた際には「こそっと」探してみてください。

(取材ボランティア 鈴木ゆかり)

取材したイベント

春のそうぶんに行こうよ!こいのぼりがいっぱい!!
開催期間:2021年4月23日から5月9日まで

こいのぼりがいっぱい詳細ページへのリンク

取材ボランティアレポート「そうぶんの竹あかり」

竹あかり

年末も近くなり、振り返ると「そうぶん」ではたくさんのイベントが中止となった寂しい年でした。しかし、恒例のイベント「竹あかり」は行われると聞いたので早速作業場を訪れてみました。

今年は密を避けて祝祭広場での開催となります。裏庭の紅葉とのコラボが観られないのは残念ですが、こちらなら場所も広く安心して観ていただけます。なので、恒例のトンネル型ではなくワイヤーを使い立地を効果的に演出した高さを強調するダイナミックなデザインとなっています。

作業風景

目を惹くのがフレンテ2階に林立する4メートルの竹。設置はとても大変だったけれど、実は1本1本にワイヤーを取り付けて張り渡らせるのがもっと大変だったとか。

竹あかり作家・演出家川渕皓平さんが描いたデザインを紙上から起こし立体化させるためにワイヤーの角度と長さを予め計算し作業に入ったそうです。その丁寧な下準備がアイデアを正確に表現できているのです。さらにワイヤーにぶら下がっている円形の枠にも美しい揺れを生むために計算がしてあります。8本の竹で作られている輪は、外側だけを止め、やはり計算された長さと間隔でワイヤーから吊り下げています。どちらも川渕さんとスタッフが現場で調整しながら完成させた労作です。輪の二番目の竹に取り付けたLEDライトが絶妙な配置で竹の外面を反射させ、風が吹くと瞬きながら回転する様は銀河系の集まりのようです。

竹あかり

作業ボランティアの方が「竹をおんなじ長さとおんなじ太さに割ることは本当に大変な作業なんですよ。特にデザインの中心となる大きな球体は生竹だから早く形を作って止めてしまわないとどんどん乾いて割れてしまうんです。

作業風景

しかも川渕さんのこだわりで重なる部分は15センチまでと決めているから、さらに大変なんですよ」と、教えてくれました。

美の細部にこだわる川渕さんの思いと、スタッフの美を実現させたい思いとが重なり造られた竹あかりの美しい景色。川渕さんは最後の最後までひとつひとつの竹の中のライトを調節していました。祝祭広場に拡がる竹あかりを眺め、右から左へと流れていく美しい景色にはそんな汗も流れているのです。

今年の竹あかりは昨年より多くの竹が使われており、幽玄の世界が祝祭広場いっぱいに拡がっています。川渕さんが初めて挑戦された空中を照らし回る竹あかりは、そうぶんでしかみられません。

今年のテーマは『三千世界』。

4メートルの竹先から祝祭広場の裾野に向けてユラユラと揺れ光りながら拡がる竹あかりの須弥山。コロナ禍で狭められた私たちの心の前に現れた竹あかりの三千世界。みつめる人たちのその心を少しだけ広げて温めてくれることでしょう。

(取材ボランティア:鈴木ゆかり)

取材したイベント

そうぶんの竹あかり

開催期間 2020年11月19日(木曜日)から12月6日(日曜日)まで

「そうぶんの竹あかり」詳細ページへのリンク

取材ボランティアレポート「不思議な確率の世界」(みえアカデミックセミナー2020)

講座の様子

毎年、夏になると、書類でパンパンに膨らんだファイルを小脇にかかえた大人たちでごったがえす受付の風景が、今年はすっかり様変わり。ソーシャルディスタンスを保つため、定員を減らして始まった「みえアカデミックセミナー2020」も、残すところ二日となった8月25日。颯爽と登壇した先生は、数学の先生。

えーっ?数学?もう何十年もやってないような・・・大丈夫かな・・・?

「確率論が専門です」と自己紹介して始まった講義は、まず、簡単な計算から。
「みなさん、さいころを振って1の目が出る確率を計算してみましょう」

うん、それは簡単だ。さいころの目は1〜6まで6個だから、1/6でしょ?
あれ?でも割り切れないよね?小数点で表すと、0.1666666666・・・・・?

「では、次の問題です。コインを投げて、表が出たら100円手に入れることができ、裏が出たら100円失うというゲームで、手に入るお金の平均値は?」

むむむ・・・ちょっと難しいぞ。先生が何やら計算式をホワイトボードに書き始めた。

 

講座の様子

表が出る確率は0.5。裏が出る確率も0.5。
だから、平均値は、
100円×0.5+(-100円)×0.5=50円-50円=0円

なるほど!つまり、当たるも八卦当たらぬも八卦。五分五分ってことね!

だけど、実際、この賭けをやっている時の人間の心理を考えてみると、

ずーーーーっと負けが続くと、「もう、そろそろ運が向いてくるんじゃないか?そろそろ、敗けを脱出して勝ちに転じるんじゃないか?」などという期待がわいてきて、ゲームをやめる踏ん切りがつかない。

そういう現象も、「ランダムウォーク」という、自然科学、ギャンブル、投資などさまざまな確率現象をシンプルに分析する手法で説明がつくそうだ。

わたしたちの身の回りで、ゲームや賭けだけでなく、保険料をどうやって決める?という時にも、確率論が使われている。

 コインの表か裏か?みたいな決断を迫られた時、私たちは直感に頼るわけだけど、直感と確率は案外ずれていることが多い。コインを投げる回数が少なければ、確率からずれた結果になることもあるけれど、「大数の法則」といって、コインを投げる回数をどんどん増やしていくと、結果がかぎりなく確率に近づくんだそうだ。だから、大量に契約を結ぶ保険で、保険会社が損をしないという。

 「21世紀は確率の時代です。これから勉強をしようという若い人たちには、ぜひ、確率論を勉強するようにすすめてください!」
先生はそう力強く言って講義を終わった。

これからはAI=人工知能の時代。そこでものを言うのが、「確率論」。

あなたも、21世紀の未来にむかって、確率論を勉強してみませんか?

(取材ボランティア:海住さつき)

取材した催し

みえアカデミックセミナー2020「不思議な確率の世界」

日時:2020年8月25日(火曜日)13時30分
講師:鳥羽商船高等専門学校 一般教育課 准教授 田中秀幸

早わかりコラム「人形浄瑠璃と歌舞伎」

8月1日開催のおしゃべり古典サロン。夏芝居の代名詞「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」を題材に、人形浄瑠璃と歌舞伎を見比べながら双方の魅力を再発見します。今回はサロンに先立ち、まずは人形浄瑠璃と歌舞伎とはなんぞや?というサクッと解説をお届け!

【人形浄瑠璃】

物語を語る「太夫」、情景を音で表現する「三味線」、一体の人形を三人で遣う「人形」―この「三業」が一つとなった人形浄瑠璃。ユネスコ無形文化遺産にも登録されている、日本を代表する古典芸能です。1684年、義太夫節の始祖である竹本義太夫が大坂・道頓堀に竹本座を創設し、作者に近松門左衛門を迎えることで、人形浄瑠璃は大流行します。その後、豊竹座をはじめとした小屋が次々と生まれますが、歌舞伎人気におされて次第に衰退。しかし時は幕末、淡路の植村文楽軒の一座によって息を吹き返し、今日では「文楽」が人形浄瑠璃の代名詞となっています。

◆近松亡き後を盛り上げた三人の作者
天才・近松門左衛門亡き後の竹本座を盛り上げたのが、今作『夏祭浪花鑑』の作者である並木千柳、三好松洛、竹田小出雲です。中でも並木千柳は、もとは竹本座のライバル豊竹座の立作者をつとめ、その後、歌舞伎作者に転身。今度は竹本座に移籍し、『菅原伝授手習鑑』『義経千本桜』『仮名手本忠臣蔵』の三大名作を生み出します。そんな千柳を、竹本座の古株・三好松洛、座本の竹田小出雲が支えました。

◆希代の人形遣い・吉田文三郎
三人の作者と併せて覚えておきたいのが、人形遣い・吉田文三郎。それまでは専門に分かれていた立役・女形を両方演じることのできる古今きっての名手で、三人遣いの人形操法も彼の功績です。一方で、演出に注文をつけ太夫が退座する事件(1748年『仮名手本忠臣蔵』初演時)を起こしたり、自ら独立を企てるなどの野心家でもありました。なお、1745年『夏祭浪花鑑』初演時の本水・本泥を使った演出も文三郎の発案とされています。


【歌舞伎】

1598年、出雲の阿国という女性が、奇抜なファッションや行動で「傾き者」と呼ばれた人々の扮装をし、京都で「かぶき踊り」を始めたのがルーツと言われています。その人気ぶりから、遊女ら女性たちの「女歌舞伎」や、元服前の少年たちの「若衆歌舞伎」が生まれますが、風紀を乱すと幕府が禁止。そこで登場したのが、現在の形にも通じる成人男性中心の「野郎歌舞伎」でした。歌舞伎は、その成り立ちから、逆境の中で世間の常識を打ち破り、常に最先端の流行を取り入れる反骨精神溢れる芸能だったのです。

◆上方の和事と江戸の荒事
京都・大坂から江戸へと広まった歌舞伎ですが、町の気質とも相まって上方と江戸でその作風も違っていました。上方では、優男による色恋沙汰を柔らかく情感豊かに演じてみせる「和事」が人気を博し、坂田藤十郎が活躍。江戸では、市川團十郎を創始者として、勇壮な豪傑たちによるいわゆるヒーローものの「荒事」が好まれました。

◆人気となった団七もの
1698年初演、大坂で三人の侠客が活躍する歌舞伎『宿無団七』が大当たりしたことから派生作品が多数作られ、今作『夏祭浪花鑑』もその系譜を受け継いでいます。まずは人形浄瑠璃で上演され、翌月には歌舞伎化。更に、今度は『夏祭浪花鑑』に影響を受けた並木正三が歌舞伎『宿無団七時雨傘』を執筆しました。なお並木は、廻り舞台を考案した江戸中期を代表する歌舞伎作者でありながら、一時は並木千柳の師弟として人形浄瑠璃の作者も務めていました。こうして、人形浄瑠璃と歌舞伎は時に同じ演目を上演し、あるいは改良を加え、互いに切磋琢磨してきたのです。

おしゃべり古典サロンvol.5

テーマ 「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」
講師 木ノ下裕一さん(木ノ下歌舞伎主宰)
   田中綾乃さん(三重大学人文学部准教授)
日程 2020年8月1日(土)14時00分〜16時00分
会場 フレンテみえ 多目的ホール
料金 1,000円

イベント詳細はコチラ

取材ボランティアレポート「源氏物語に埋め込まれた真意を読む」

講師

会場に入ると、ステージの上には大きなグランドピアノが暗めの照明の下でぴかぴか輝いていた。通路には紫式部という名前の花が飾られ、源氏物語好きの人たちの気分を盛り上げてくれている。受付が始まるとあっという間に席が埋まり、開演を今か今かと待ちわびた。

この日の会場の雰囲気は、「朗読会」というより「演奏会」。
もちろん、私たちが待っていたのは、河原徳子さんというスーパースター。
そう、あの日、会場にいた私たちの目の前に現れたのは、紫式部その人。
河原徳子さんは、見事に紫式部に成り代わって私たちに源氏物語の世界を再現してくれた。

演奏

今回は、「朗読とピアノ」のコラボレーションで、ピアニストの西野愛さんが河原徳子さんの朗読に合わせて演奏。あまりにも朗読にぴったりで感動したのだけど、全曲、この日のために作られたオリジナル曲だということだった。

ああ、そんな貴重な演奏が、たった一日で終わってしまうなんて!これはぜひ、CDにしてほしいし、テレビ番組で「源氏物語特集」として再現してほしいと心から思う。

瀬戸内寂聴訳の源氏物語は、実は全巻買ってある。瀬戸内寂聴さん渾身の力作だから、まよわず全巻注文して買ったのだった。しかし、まだ全然読んでない。ひとたび、ページを開き、源氏の世界に没入してしまうと、俗世に戻ってこれない気がして怖いのだ。だから、ゆっくりお茶でも飲みながら、読書を楽しむ生活ができるようになった時のために、本棚の一番奥にしまってあるのだけれど、河原徳子さんの朗読を聞いたら、我慢できなくなってきた。源氏物語を持って喫茶店に行き、モーニングをいただくっていうのはどうかな。できれば、クラシック音楽がBGMにかかっているお店がよい。和服を着ながら読むとさらに雰囲気が出るかもしれない。

会場の様子

ピアノの伴奏で朗読を聞くという優雅な設定はとてもロマンチックなのだが、紫式部が源氏物語で訴えたかったことはそんなロマンチックなことではなかった。光源氏という一人のモテ男を中心に繰り広げられる恋の物語には違いないが、そこには、主体的に人生を選ぶことのできない女の悲哀がつまっていた。

源氏物語の前半は昼ドラの世界だけど、後半はまさに現代社会に生きる私たち女性が抱える問題そのもの。女性の自立がかなわず、自分の意思で人生を選ぶことのできなかった時代ではなく、がんばれば自分で人生設計ができるようになった今だからこその苦悩があの時代にここまで具体的に書かれていたとは驚きである。紫式部の生きていた時代にできた女性の唯一の自立は「出家」。出家することでしか、女性は男から自由になることができず、心の平安を保つことができなかった。だからこそ、紫の上は死ぬ直前に「出家させてくれ」と光源氏に必死に頼んだ。

そんな世界をステージ上で繰り広げてくれた河原徳子さんに感謝です。

(取材ボランティア:海住さつき)

取材したイベント

源氏物語に埋め込まれた真意を読む

開催日:2019年9月22日
会場:三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」多目的ホール
講師:河原徳子さん(朗読文学サークルパティオ主宰、日本文学研究家)

取材ボランティアレポート「M祭!2019」

エムコレ

台風の心配もありましたが予定どおり『M祭!』を開催すると言うことで行って来ました。
『M祭!』はご存じのとおり三重県立総合博物館、図書館、文化会館、生涯学習センター、男女共同参画センターが一体となって行う子どもたちの好奇心を刺激し、楽しく学んで体験できる県内最大級のイベント、子どものためのお祭りです。

開始30分前、スタッフは準備に大忙し。
「おはようございます。台風、逸れてよかったですね」
「でも暑さが心配なんですよ」
連日の猛暑に運営スタッフは気が抜けません。何が起こるかわからないのが子どもの世界。さて、どんな一日が始まるのでしょうか。
開始時間10時、大人たちの心配をよそに我先にと子ども達は駆けてお目当てのイベントに滑り込みます。

「やったー、一番!」
「元気いいね、このイベントが最初なの?」
「お茶を飲んで2つめ」
「お茶?」
後ろからゆっくりと歩いてくるお母さんたちが恥ずかしそうに、
「抹茶を飲んでました・・」

「冷たいお抹茶を飲んでみよう」は、大人も子どもも参加できるイベント。なるほど、親の愉しみも入っていて両得です。そうしている間にも、幼児から小学生、外国に由来のある子どもたちまで、どんどんと子どもの列は伸びていきます。朝一番からこんなにもたくさんの子どもたちが集まって来るなんてM祭の浸透率に驚かされます。
そんな子どもたちの興味をひこうとイベントスタッフは一生懸命。

「これ作って行かない、楽しいよ!」

2つの絵をくるくる回すとパラパラマンガになる「ぶんぶんゴマ」に子どもたちは興味津々。
うれしそうに大きく頷いて駆け出す子、恥ずかしそうに小さく頷いて親と一緒に歩いて行く子、子どもたちの表情は多様で本当にほほえましいものです。

お昼前、午後に向かって子どもたちがどんどんと増えていく中、祝祭広場では暑さ対策にスタッフがビニールプールで水風船をせっせと膨らましていました。子どもたちが絶対的に大好きな風船で誘って涼をとろうなんて素晴らしいアイデアです。

ゴミラー
ゴミで作ったゴミラー
ゴミラー
OHPを使って天井に映し出します
ゴミラー

祝祭広場をぐるっと回って、フレンテみえの生活工房へ。
ゴミを使ってアート作品を作るイベントでは子どもの意外な才能に触れることができます。

「これはとても素敵ですね、見本ですか?」
「いいえ、全部子どもたちが作ったものなんです」

昔は手先の器用な子どもが図画工作の優等生でしたが、今の子どもたちはいろんな情報があふれている環境から好きなものを取り出すことができるので、ゲームクリエーターかキャラクターデザイナーかのような完成された未知なる創造物が作られているのです。ただただ、子どもたる才能の爆発した世界に大人は感服するのみです。

風車
八重のかざぐるま作り体験
ぶんぶんゴマ
ぶんぶんゴマ作り体験

とは言え、単純明快な遊びも子どもは本来的に好きなもの。
塗り絵や、竹とんぼならぬ「ストロートンボ」、草笛、昔懐かしい缶バッチ、走って走って風とひとつになれる風車・・・宝物を抱えて親子で笑う帰り道。

そんな中、いつの間にかシルバーカーを押した女性が同じように親子の背を目で追っていることに気がつきました。たくさんの子どもたちをいとおしそうに眺めるその姿は温かさと優しさに溢れています。

ここに文化施設があることが、M祭の開催が、今日と明日の元気が生まれるひとときになるのだと、その背中が伝えてくれます。子どもたちのためにすることはすべての大人たちに還ってくるものなんだよと、目にはみえない素敵なコミュニケーションをもM祭は作っているようでした。

(取材ボランティア:鈴木ゆかり)

取材したイベント

M祭!2019 キッズ・アート・フェスティバル

開催日:2019年8月4日
場所:三重県総合文化センター、三重県総合博物館

インターン取材レポート@〜「見る・知る・感じる、認知症ケアの知恵ぶくろ」〜

こんにちは。 インターンシップ生の中村と高野です。

今回は「見る・知る・感じる、認知症ケアの知恵ぶくろ」に参加させていただきました。認知症についてあまり知識がなかった私たちですが、このイベントを通じて認知症についての理解が深まりました。 

まず、講演会1の「認知症とともに生きる」では自身も認知症である渡辺康平さんに当事者の視点から見える社会を教えていただきました。つぎに、講演会2の「安心して老いるために」は介護の現場からの視点でどのように老いを生き、どのように死を迎えることが幸せなのかを考えさせられました。最後に、体験講座の菅原直樹さんによる「介護する“わたし”、認知症の“わたし”」はジェスチャーゲームや老いのプレーパークの方々による寸劇を見て、認知症の方への対応の改善を考えました。 

    このイベントを通して次のことを学びました。認知症の方の言っていることが例え間違っていても、頭ごなしに否定するのではなく相手の言っていることにまずは乗ってみる。否定しても関係を悪化させるだけだからこのことが大切だそうです。ですが、頭ごなしに否定しないことは認知症の方相手だからではなく、どのような人との関係でも大切といえると思います。菅原さんのおっしゃっていた「相手の物語に寄り添っていくことでお互いもっとラクに過ごせるかもしれない」という意味が分かりました。

    認知症の方を責めてしまいがちですが、そうではなく認知症の方を支え、理解すること、心のサポートをすることが大切だと学びました。 認知症だと言うのが恥ずかしいから周りに隠すのではなく近所の人へ伝え、地域で協力して認知症の方もその家族も住みやすい環境を作っていくことが大切だと思いました。

     【文】インターン生 高田短期大学 中村、高野
      【写真】松原豊

    取材したイベント

    見る・知る・感じる、認知症ケアの知恵ぶくろ

    開催日 2019年8月28日(水曜日)
    場所  三重県総合文化センター内 レセプションルーム

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