取材ボランティアレポート「ワンコインコンサートvol.151 チェロ 上村文乃」
2025年9月19日、上村文乃さんによるチェロのワンコインコンサートが開催されました。
ワンコインコンサートは、「1時間」で「500円」、「短めの曲」で「楽しいトークを交えながら」気軽に楽しめるカジュアルコンサートシリーズです。
平日のランチタイムに開催されているので、タイミングが合わずなかなか足を運ぶ機会に恵まれませんでしたが、今回夏休みを利用し聴きに行きました。
私は今まで鍵盤楽器や管楽器に親しんできましたが、それと同時に弦楽器への興味もあり、その中でも特にチェロの音色に強く惹かれ、いつか習いたいと考えていたほど憧れを抱いていたので、生演奏は念願叶っての機会でした。
慣れ親しんだ大ホールに足を踏み入れてみると、一階席はほぼ満席で平日の昼間にも関わらずたくさんの音楽ファンが聴きに来ており、非常に驚きました。
コンサートが始まると、まるで薔薇の花びらのようなデザインが施された、ローズピンク色の美しいドレスを身にまとったチェリストの上村文乃さんと、ピアニストの大崎由貴さんがステージに現れました。
上村文乃さんは国内外のコンクール優勝多数の実力派でモダンからバロック、さらには現代音楽まで幅広くこなすチェリストです。
アンコールを含め、9曲演奏された中で印象に残った2曲がありました。
「チェロとピアノのための3つの小品Op11(ウェーベルン)」は非常に短く面白い曲でした。リズムが複雑で、一体どのような楽譜なのかと思うほど休符が多く、ピアニストとの呼吸を合わせるのが非常に難しそうであるという感想を抱きました。
ひとつひとつの音がキャラに富んでいて、不協和音にも思える個性的な旋律の、その不規則性に一瞬で引き込まれた曲でした。
もう1曲は「無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調BWV1009(J.S.バッハ)」で、全6曲で構成される組曲です。なめらかに途切れることなく続く旋律が、これぞ王道のチェロのための曲といった感じです。私の個人的な好みとしては「無伴奏チェロ組曲第1番ト長調」の中の「プレリュード」が一番好きですが、第3番の明るく華やかな雰囲気にも心を打たれました。
チェロの音は低音域から高音域まで幅広い音域を持つことから、人間の声に一番近い楽器だと言われています。音から音へ途切れなく移行できるのが弦楽器の特徴で、表現豊かで優しく癒し効果のある音色が魅力です。それは、ビロードの上をしずくが撫でるようになめらかに転がり、やがて深海へと沈み込むように、包まれる感覚を与えます。
深みのある柔らかい音、力強く身体全体を使った響きのある音、息遣いが客席に伝わるほどの迫力ある演奏でした。
また、ピアニストの演奏も非常に繊細で緻密に計算された音色が素晴らしく、引き込まれました。
前知識なく聴きにいった演奏会でしたが、「演奏後、拍手はすぐにせず、音の余韻を楽しんでから盛大な拍手を贈るとより楽しめます」と案内通り、余韻を存分に堪能でき、充実した時間となりました。
(取材ボランティア:krn)
取材したイベント
vol.151 ワンコインコンサート チェロ 上村文乃
2025年9月19日(金曜日)11時30分から
メンバー:上村文乃(チェロ)、大崎由貴(ピアノ)
場所:文化会館 大ホール