取材ボランティアレポート「おしゃべり古典サロン」vol.13、14
2024年7月6日に開催された『おしゃべり古典サロン』
今年は、秋に三重県文化会館 中ホールで上演される木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』(さんにんきちさくるわのはつがい)の特別企画として、木ノ下歌舞伎(通称:キノカブ)主宰である木ノ下裕一さんと三重大学人文学部准教授の田中綾乃さんにお越しいただき、全編・後編合わせて計4時間にもおよぶ通し解説が行われました。
『三人吉三廓初買』は河竹黙阿弥作の刀と金が巡り合って三人の吉三郎を中心に展開する因縁と恩愛の物語で、この物語は、三人吉三の『因果譚』と文里一重の『恩愛譚』の2つに大きく分かれています。歌舞伎では三人吉三のみが上演されることが多いそうですが、キノカブでは文里一重の話も上演されるようです。
そして初演から2014年まで160年間上演されなかった地獄のシーンも観ることができるとのことです。今回は木ノ下歌舞伎による2015年版の地獄シーンを映像で見せて頂きました。
地獄の休日の様子が演じられており賑やかな雰囲気です。踊りもあり、コント仕立てでとても面白い場面でした。
お二人によると『因果譚』と『恩愛譚』の世界は対になっておりネガティブな江戸とポジティブな江戸の両面が相克になっているそうです。この作品が作られた安政7年は幕末の末の末で地震があったり、コレラが大流行したりと、人々がとても苦しい時代でした。そのため作品の様々なところで、当時のリアルな時代背景や現状が登場人物の背景にあらわれているとおっしゃっていました。
木ノ下さんは歌舞伎の現代劇化に監修と補綴(ほてい)をする際に、現代人が物語に違和感を覚えないように補足のセリフや演出などをいれて、理解できるようにしているとのことでした。2024年のラストシーンは2015年版とは異なる2024年バージョンとなるところが見どころだそうです。
一見すると難解そうにも感じられる歌舞伎ですが、この作品は現代劇化されているので若者からご高齢の方まで気軽に楽しみながら古典芸能の世界に浸ることができる作品となっているのではないかと思います。
木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』は10月13日日曜日に中ホールで上演されます。
是非一度、ご覧ください。
(取材ボランティア:krn)