三重県総合文化センター ブログ

取材ボランティアレポート「楽楽浪曲塾」

楽楽浪曲塾

小さいころ、つけっ放しのラジオからよく浪曲が流れていたのを覚えています。
「旅ゆけば駿河の国に茶の香り、ここは名に負う東海道・・・」
「佐渡へ佐渡へと草木もなびく、佐渡は居よいか住みよいか・・・」
「妻は夫をいたわりつ、夫は妻に慕いつつ、頃は六月中のころ・・・」
などなど、出始めの文句は今も覚えています。どの曲も私の心の奥深くにあり、聞けばともに口ずさめて、とても懐かしい思いに駆られます。それがどうしてなのか、今日この浪曲塾に参加させていただいてよく理解できた気がします。

楽楽浪曲塾

まず、浪曲は七五調でできていて調子が良いということがあるのです。私が覚えている上記の浪曲の出だし部分も、よく数えてみると七と五の音のつながりでできています。これに節をつけて三味線を伴奏として歌うのです。歌う声に裏声は使わないと春野恵子さんは言われましたが、低い声、中くらいの声、とても高い声まで、すべて自分の表の声で歌いきるというのですから、たいへんな修行がいったことと思います。そういえば、昔ひしゃげた声で浪曲をうなっているのを聞いた覚えがありますが、そうした独特の声になる程まで激しい練習を積んだということでしょうか。

浪曲には、節をつけて歌う部分のほかに、「啖呵(たんか)」といわれる、一人で登場人物のセリフを言う部分があります。この「節」と「啖呵」が交互にうまく配されていて、聴衆はどんどんと浪曲の世界の中に引き込まれていってしまいます。

楽楽浪曲塾

浪曲は、一人一節と言われるように、伝統に増して創造が重んじられ、先人と違った語り口や演出が期待される世界なのだということでした。絶えず自己研鑽を重ね、自分独自の芸風をこしらえあげていかなければならないということは、とても大変なことである反面、ゾクゾクするほど楽しいことでもあるのかもしれません。三味線の方と二人三脚でどん欲に新しいものを求めて努力研鑽を重ねていかれる素晴らしい人生の在り方をそこに見させていただいた気がします。 

今日は真山隼人さんと春野恵子さんの浪曲を聞かせていただきました。高低自在に変化する「節」と「三味線」と「啖呵」が聴衆の心を鷲掴みにし、知らないうちに私は物語の中へと引き込まれていきました。そして山場になると多くの人が涙を流していたようです。私も例外ではありません。浪曲の在り方全てが、人の心を揺さぶって来るのです。久しぶりに聞いた浪曲でしたが、こんなに素晴らしい芸能が日本にはあったのだと再認識することが出来ました。会場で買い求めたCDをかけて今も余韻に浸っています。これからも大いにご活躍され、何年か後にはまた更に新しい名調子を開花されていかれることを期待しています。

(取材ボランティア:興味津々子)

取材したイベント

楽楽浪曲塾〜浪曲の世界へようこそ〜

日程 2018年5月4日(金曜祝日)
会場 三重県文化会館 小ホール
講師 前田憲司さん
出演 浪曲師 春野恵子さん 曲師 一風亭初月さん
   浪曲師 真山隼人さん 曲師 沢村さくらさん

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