取材ボランティアレポート「不思議な確率の世界」(みえアカデミックセミナー2020)
毎年、夏になると、書類でパンパンに膨らんだファイルを小脇にかかえた大人たちでごったがえす受付の風景が、今年はすっかり様変わり。ソーシャルディスタンスを保つため、定員を減らして始まった「みえアカデミックセミナー2020」も、残すところ二日となった8月25日。颯爽と登壇した先生は、数学の先生。
えーっ?数学?もう何十年もやってないような・・・大丈夫かな・・・?
「確率論が専門です」と自己紹介して始まった講義は、まず、簡単な計算から。
「みなさん、さいころを振って1の目が出る確率を計算してみましょう」
うん、それは簡単だ。さいころの目は1〜6まで6個だから、1/6でしょ?
あれ?でも割り切れないよね?小数点で表すと、0.1666666666・・・・・?
「では、次の問題です。コインを投げて、表が出たら100円手に入れることができ、裏が出たら100円失うというゲームで、手に入るお金の平均値は?」
むむむ・・・ちょっと難しいぞ。先生が何やら計算式をホワイトボードに書き始めた。
表が出る確率は0.5。裏が出る確率も0.5。
だから、平均値は、
100円×0.5+(-100円)×0.5=50円-50円=0円
なるほど!つまり、当たるも八卦当たらぬも八卦。五分五分ってことね!
だけど、実際、この賭けをやっている時の人間の心理を考えてみると、
ずーーーーっと負けが続くと、「もう、そろそろ運が向いてくるんじゃないか?そろそろ、敗けを脱出して勝ちに転じるんじゃないか?」などという期待がわいてきて、ゲームをやめる踏ん切りがつかない。
そういう現象も、「ランダムウォーク」という、自然科学、ギャンブル、投資などさまざまな確率現象をシンプルに分析する手法で説明がつくそうだ。
わたしたちの身の回りで、ゲームや賭けだけでなく、保険料をどうやって決める?という時にも、確率論が使われている。
コインの表か裏か?みたいな決断を迫られた時、私たちは直感に頼るわけだけど、直感と確率は案外ずれていることが多い。コインを投げる回数が少なければ、確率からずれた結果になることもあるけれど、「大数の法則」といって、コインを投げる回数をどんどん増やしていくと、結果がかぎりなく確率に近づくんだそうだ。だから、大量に契約を結ぶ保険で、保険会社が損をしないという。
「21世紀は確率の時代です。これから勉強をしようという若い人たちには、ぜひ、確率論を勉強するようにすすめてください!」
先生はそう力強く言って講義を終わった。
これからはAI=人工知能の時代。そこでものを言うのが、「確率論」。
あなたも、21世紀の未来にむかって、確率論を勉強してみませんか?
(取材ボランティア:海住さつき)
取材した催し
みえアカデミックセミナー2020「不思議な確率の世界」
日時:2020年8月25日(火曜日)13時30分
講師:鳥羽商船高等専門学校 一般教育課 准教授 田中秀幸