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飯森範親(日本センチュリー交響楽団首席指揮者) インタビュー

おしえてマエストロ(「オーケストラ入門」114号)

Mニュース114号の特集「オーケストラ入門」では、マエストロ飯森に、オーケストラを初めて聴きに行く方にむけて、おすすめの聴き方や三重公演の聴きどころについてお話ししていただきました。 MNEWS Web Editionでは、誌面に掲載しきれなかったインタビュー全文を掲載します。

マエストロ

日本センチュリー交響楽団首席指揮者に就任して3年目となりました。この2年間を振り返ってどのようにオーケストラは変化していきましたか?

私が日本センチュリー交響楽団(以下「センチュリー響」という。)の首席指揮者に就任するにあたり、演奏する上での柱を2つ掲げました。

1つ目はセンチュリー響の通常の編成よりも少し小さい編成で、ハイドンを演奏すること。それを通してオーケストラの繊細なアンサンブル能力、弦楽器の音色感、管楽器の古典を通して得られるハーモニー(和声)の感覚を研ぎ澄ませていこうと。そして2つ目ですが、私はマーラーを長年演奏してきた経験をもとに、大きな編成の作品を取り上げる際にハイドンで得られた様々な感覚が活かされる曲を選ぶということ。この2つの柱で2年間様々な曲を取り上げてきましたが、ここ最近明らかにハイドンを演奏してきた効果が出てきていますね。先日、チャイコフスキーの「マンフレッド交響曲」を演奏した際にもすごくその効果を感じましたし、マーラーの交響曲第九番のときもそうですが、ものすごく複雑に色々なテーマ―が絡み合うのですが、リズム感やテンポ感のようなものが、ハイドンを通して研ぎ澄まされているので、素晴らしいうねりが作れるようになりました。この2年での本当に大きな成果かと思います。

次のステップはどういうイメージをお持ちでしょうか?

さらなる発展(笑)。発展というのは演奏のレベルだけではなくて、いろいろな意味での発展があると思っています。自主運営のオーケストラになり、私が首席指揮者に就任してこの2年でいろんなことが変化してきました。その変化に、いい意味で追いついていない点があるので、とにかくそれに追いつかせるということ。ただ、追いつかれてしまうとそこで足踏みが起こるので、追いついてくるのを見ながら、また次のステップを見つけていかなければいけませんが。私の中ではもう見つけているので、それを形にしていくことですね。

オーケストラは難しい!長い!ってイメージがありますが、飯森さんはどう思いますか?

オーケストラって難しいイメージが先行してどうしても食わず嫌いな人が多い。だからこそ、オーケストラの音を耳にしてもらえる機会をとにかく提供し続けていくしかないと思っています。前にのだめカンタービレが流行したときには凄くオーケストラを聴く人が増えたように。オーケストラの音が色々なところで耳にできる、テレビCMでもいいし、ラジオでもいいし、日常生活のいろんなところでオーケストラの音が流れてくる状態が増えて自然と耳に入る。そういった状況で、自分にとってきっかけになる曲にふっと出会えると思うんです。例えばマスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲を聴けば、凄く癒されると感じる人がいたり、ビゼーの「アルルの女第2組曲のファランドール」を聴くと元気がでるとかね。ちなみにうちの息子は「アルルの女の第1組曲のカリオン」を聴くと、なぜだかやたら元気になります。先日、チャイコフスキーの「マンフレッド交響曲」を演奏したときに聞きにきてくれた40代の方がいて。その方はクラシックが好きなんだけど、普段クラシックを聴かない20代の友達も連れてきてくれたんです。はじめてクラシックを聴く子にはマンフレッドどうなんだろうって思ったんですが、その友達の子がずっと泣きっぱなしで大変だったそうで。「どうしたの?」って聞いたら、とにかく感動したらしくって。この子のようにこういった瞬間があると、また行きたいなって思ってくれると思うんですよ。ただ、クラシックのコンサートって聴いた時にあまりに下手だと嫌になっちゃう時もあるんですよね(笑)

私も経験がありますね。(苦笑)

残念だけど、あるね。だからこそ、自分たちは一所懸命演奏しているんです。ただ、さっきの子のように、偶然聴いた曲に衝撃がはしってクラシックを聴くようになる人もいるから。人によってその曲は違うけど、本当にひょんなことで扉を開く瞬間があって、その扉をくぐれば意外と面白かったっていう。そういう意味では今回の三重のプログラムは本当に聴きやすいプログラムなんです。

初めて生のオーケストラを聴く人に、飯森さんおススメの聴き方はありますか?

もし、インターネットなどを使える方はコンサートにいく前にぜひさわりだけでもいいから聴いてもらいたい。そして、もし可能だったらその曲がどういういきさつで作られたかをリサーチしてもらえるとなお、曲への興味も深くなる。例えば歌舞伎だと、「義経千本桜」くらい有名な演目は別だけれど、やっぱり初めて観劇するのは難しいですよね。オペラも一緒。なんでもそうだと思うんですけど、やっぱり演奏会を聴くときも漠然と受け身で演奏を聴くよりも、作曲家や曲のいきさつなどを少し知るだけで曲の印象が変わったり、受け入れやすくなると思う。それが難しければ当日のプログラムに書いてある曲目解説を開演前に読むだけで聴こえ方は変わりますよ。

三重公演も6回目(飯森さんで3回目)となりました。三重のお客様やホールの印象を教えていただけますか?

三重のお客様は温かいと思います。そして、温かいのと同時に、曲に凄くのめり込んでくれているという印象を背中に感じます。そして、とても良い響きのホールなので、お客様が羨ましいですね。

今回の三重公演超名曲!プログラム。印象や聴きどころを教えてください。

1曲目の作曲家シューベルトは、ベートーヴェンを凄く尊敬していた人物です。だから今回シューベルトとベートーヴェンを一緒に演奏させていただくことは、音楽史を知る上でも、お客様にとっても師匠と弟子のような関係だったことを、知ってもらえる良いチャンスだと思っています。彼は非常に不運な作曲家で、31歳の若さで亡くなってしまうんですが、実はシューベルトが作曲した交響曲って、彼が生きているうちはどれも演奏されていないんです。今回演奏する交響曲第7番も「未完成」のまま。だけど、皆さんもご存知の通り彼は生涯に何百曲という歌曲を書いていることもあり、交響曲の旋律はすべて歌なんですよ。この未完成交響曲は、報われない好青年の凄く悲痛な叫びをこの曲中で表現しているんだなっていうことを、お客様に伝えられる演奏がしたいなって思いますよね。

2曲目のベートーヴェンの交響曲第五番「運命」はご存知のとおり、耳がほぼ聞こえないような状況で書かれた作品です。ちょうど同じ時期に交響曲第6番「田園」を書いていますが、私は「運命」は“人間交響曲”で「田園」は“自然交響曲”だと思っています。今回演奏する「運命」はベートーヴェンが人として、作曲家としてどうなのか?ということを自問自答している曲なんです。耳が聞こえなくなった人間が生きていけるのか。作曲家なんて続けていけるのか。そんな悩みに打ち勝ってやっていくことができるんじゃないかっていう確信を最後は得ているわけですよね。第1楽章の曲の冒頭「ン・ジャ・ジャ・ジャ・ジャーン」は皆さん知っているけれど、大事なのはそこから後であって、彼が苦しみの中で、最後にはそれに打ち勝って絶対生きていこうって確信を得ている第4楽章のエンディングが凄く重要なんです。その部分をぜひ感じて欲しいですね。

そして最後「展覧会の絵」はハルトマンという人の絵にインスピレーションを受けて書かれた作品です。今回演奏するのは元々はムソルグスキーがピアノ曲として書いたものを、ラヴェルがオーケストラ版にアレンジしたものです。この曲はタイトルの通り、ルーブル美術館やエルミタージュ美術館のような豪華な美術館を歩いているようなイメージで聴いて欲しいと思います。特に2人の作曲家の時代とは違い、サクソフォンが編成に入ったり、打楽器が凄く多くなるので、そのダイナミックスも楽しんでいただけるのではないでしょうか。

最後に三重県のお客様に一言お願いします

飯森さん

私が三重に伺うのは3回目となりました。今回、三重県の文化会館で演奏させていただくのはオーケストラの響きや魅力、卓越した表現力が詰まったプログラムです。特に「展覧会の絵」では各楽器にソロがいっぱいありますので、センチュリー響のメンバーが奏でる卓越した音楽表現を楽しみにしていただけたら嬉しいです。オーケストラを初めて聴く方にも決して退屈させないコンサートなると思っています。ぜひ期待してご来場ください。

日本センチュリー交響楽団三重特別演奏会について

飯森範親 Norichika Iimori (Conductor)

桐朋学園大学指揮科卒業。国内外のオーケストラを数多く指揮し、山形交響楽団音楽監督、東京交響楽団正指揮者、いずみシンフォニエッタ大阪常任指揮者、ドイツ・ヴュルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者として活躍。 2014年シーズンから日本センチュリー交響楽団首席指揮者に就任。
2006年度 芸術選奨文部科学大臣新人賞。

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