第2回 農山漁村における男女共同参画について

1.はじめに

 前回は農山漁村の女性が果たしている役割の重要性と、それに対して方針決定の場への参画があまり進んでいない現状についてお話ししました。 

 では、どうすれば改善されていくのでしょうか? 

 昔からの慣習というものは、そう簡単に変わるものでありません。まず1人ひとりが問題意識を持つこと、そしてそれらの問題について誰もが自由に発言・行動できる環境づくりを進めなければなりません。 
 今回は、農山漁村における女性の方針決定の場への参画に向けて県や関係機関が行っている取組について、詳しくお話しします。

2.まずは推進役となる人づくりを

 どんなに県や市町村が女性の社会参画の必要性を訴えたとしても、農業者や漁業者の中でそれに対する自発的な取組がなければ効果はありません。地域内で問題を提起し、活動を引っ張っていけるリーダーの存在が重要となります。 
 そこで、県では農山漁村地域の活性化等に活発な活動を行い、かつ経営や生活の向上に意欲的に取り組んでいる女性を、「三重県農村女性アドバイザー」「三重県漁村女性アドバイザー」に認定し、男女共同参画を推進するリーダーとして支援しています。  
 農村女性アドバイザー制度は平成8年度に、漁村女性アドバイザー制度は平成12年度に発足し、現在それぞれ152名と9名が認定されています。いずれも地域の農村女性グループや農協・漁協女性部などの活動に熱心に取り組み、経営にも主体的に参画されている方々です。 
 女性アドバイザーには、男女共同参画についての講演会や研修会の講師として活躍いただいているほか、地産地消や食農教育などリーダーとして多方面で活動されています。また、農業委員を始めとする審議会等の委員として登用されている方も多く、市町村議員として活躍する農村女性アドバイザーも2名出てきています。自己啓発にも積極的な方が多く、頼もしい存在となっています。

3.農山漁村全体への浸透

 また、県では男女共同参画を農山漁村全体の流れとするため、農漁業者を対象とした研修会・イベントを開催し、意識啓発を図っています。 
 地域では、地域農業改良普及センターにおいて年数回の「地域参画セミナー」を開催しています。このセミナーは、農村女性アドバイザーが主体的に実施するセミナーとして、企画から実践までを支援し、農業者に対して、女性の方針決定の場への参画、経営や技術の能力向上、消費者との交流、起業など、その地域の課題に応じて開催しています。 
 県域では、毎年「農山漁村のつどい」を開催しています。農林漁業女性団体等の代表で構成される実行委員会によって企画し、男女共同参画を進めている活動事例を中心としたディスカッションや講演等を行い、農山漁村の女性が自分達の活動を再認識し、男性も共に社会参画について考える機会となっています。 
 また、これらの研修会等がきっかけとなり、地域や業種を超えた女性グループの交流も進んできています

4.行政・関係機関も制度の改善を

 県や市町村では、審議会等への女性の登用を進めています。農水産業関係でも取り組まれていますが、市町村によっては遅れているところもあり、女性アドバイザー等の人材を示して登用を働きかけています。 
 特に市町村農業委員会については、地域の農業振興を進めるための重要な組織であり、女性の方針決定の場への参画の代表的なものとして、県と農業女性団体、農村女性アドバイザーが女性農業委員の登用推進を一体的に取り組んできました。農業委員は公職選挙法に基づく選挙で選ばれますが、市町村議会の推薦により別に選任委員を4名(平成16年10月以前は5名)まで登用することができるため、まずはそこに女性を登用するよう働きかけてきました。その結果、市町村でも主体的な取り組みが進み、平成11年度に2市3名であったのが、平成15年度末では45市町村で80名と飛躍的に増加しました。しかし、伸びたとはいえ全体の5.4%に過ぎないのが現状です。また、残念ながら、市町村合併などの影響もあり女性の登用数は現在69名に減少していますが、今後も農業就業人口では半数を超える女性の意見を地域の農政に反映させるために推進を行っていきます。 
 一方、農協や漁協といった生産者組合でも取組が行われています。協同組合の運営方針は正組合員による総会または総代会で決まります。そこで女性も組合に出資し正組合員となる運動を行っています。また、組合の運営は理事会により行われますが、最近は経営管理委員制度を取り入れる農協も増え、理事・経営管理委員をあわせた女性農協役員は、平成16年度にようやく12人になりました。

三重県内の農業委員会及び農協・漁業における女性参画状況の推移
(女性/全体) 平成10年度末 平成15(漁協は14)年度末
農業委員 3人/1,461人 80人/1,476人
0.20% 5.40%
農協役員 3人/455人 6人/386人
0.70% 1.50%
農協正組合員 10,030人/119,841人 11,825人/117,790人
8.40% 11.40%
漁協役員(沿海地区) 1人/905人 0人/502人
0.10% 0%
漁協正組合員 1,482人/20,397人 1,625人/18,863人
7.30% 8.60%

 農山漁村での女性の方針決定の場への参画については、県や関係機関でも色々取組は行っているものの、これにより登用された女性はわずかでしかありません。しかし、そのわずかながら登用された女性がそれぞれの場で活躍しており、そのことでさらに登用が進み、農山漁村の全ての女性の評価にもつながっていくことと考えています。 
 女性が、性別にかかわらず個人として評価を受け、
 地域からの応援を受けて方針決定の場へ登用される。 
 そんな当たり前のことが、農山漁村ではやっと理解されはじめたところなのです。