第1回 職場における男女共同参画について

1.はじめに

 働く女性を取り巻く状況は近年大きく変化を遂げています。サービス経済化、女性の高学歴化とともに、女性の職場進出が進み国際的な男女平等を目指す動きの中で、女性の就業についても法的整備や施策の充実が図られてきました。それらを背景に女性雇用者は増加し、勤続年数の伸長、職域拡大、男女の別なく意欲や能力に応じて処遇する企業も増加し、女性の就業に対する社会の意識も変化してきています。    
 しかしながら、厳しい雇用情勢の中で妊娠・出産を理由とする解雇や身分変更の男女差別的な取扱いを行ったり、管理職の女性割合は増加しつつあるも依然低い等男女労働者間の事実上の格差が見られるところです。
また、急速な少子化の進行の中で仕事と家庭との両立の推進が重要ですが、職場優先の意識や男女の固定的な性別役割分担意識等が解消され男女とも育児休業等の制度を活用しやすい環境の整備が望まれる等課題があります。そこで、各種資料により現状を把握し今後どのような取組が望まれるかを探ります。

2.男女の均等な機会と待遇の確保

(1)募集・採用関係

 平成11年に改正均等法が施行され、募集・採用について男女に均等な機会付与が義務づけられるとともに、労働基準法の女性保護規定の見直しにより女性の就業制限が緩和されました。これらのことにより、法違反となる男女別募集や男女別条件を付した募集等が概ね解消された一方、求人表記上では男女不問としながらも応募の受付段階で女性のみ、男性のみとするケース、面接時に女性のみに特定の質問を行う等のケースも見受けられます。 
 また、平成15年度女性雇用管理基本調査によれば、新規学卒者又は中途採用者を採用した企業の状況を見ると四年生大学卒の事務・営業系及び中途採用者では「いずれの職種・コースとも男女とも採用」が最も高く、45.4%、53.0%であり、前回(平成12年度)に比べ高卒技術系を除く全ての採用区分で男女とも採用した企業割合が上昇しています。一方、女性のみ採用した企業割合が高い短大・高専卒及び高卒の事務・営業系はいずれも前回調査に比べ低下し、男性のみ採用した企業割合が高い技術系においても、四年生大学卒及び短大・高専卒の採用区分についても前回調査と比較し減少しています。

(2)配置・昇進関係

 配置の状況を見ると、女性を配置していない職種、部門があるとした企業割合や、職務区分は徐々に改善され、特に女性が配置されることの少なかった営業職について女性の配置が進みつつあります。また、平成11年4月から労働基準法上の女性の深夜業に係る規制が解消され、その前後で女性の深夜業従事者の増減を見ると交代制勤務者で深夜労働のある者がいる事業所において増加が目立っています。 
管理職登用の状況について、平成15年度女性雇用管理基本調査では役職別において管理職に占める女性の割合は、部長相当職は1.8%(平成12年度1.6%)課長相当職は3.0%(同2.6%)係長相当職は8.2%(同7.7%)といずれも平成12年度と比べ上昇しました。役職別に女性管理職を有する企業割合を見ると、部長相当職は6.7%(平成12年度7.4%)、課長相当職は20.2%(同19.0%)、係長相当職32.0%(同31.2%)となっています。では、性別について公正な社会(男女共同参画社会)をつくるには?次回はそれを考えることにしたい。

役職別管理職に占める女性の割合の推移

役職別管理職に占める女性の割合の推移
資料出所:厚生労働省「平成15年度女性雇用管理基本調査」

(財)社会経済生産性本部「新入社員の意識調査」によれば、役職登用に対する女性の意識は、新入社員が社長、重役、部長、課長とどのポストまで昇進したいかを尋ねたところ、特に社長、部長まで昇進したいとする割合が高まってきています。

どのポストまで昇進したいか

どのポストまで昇進したいか
出資料出所:(財)社会経済生産性本部「働くことの意識」

 また、(財)21世紀職業財団が女性管理職等を対象に実施した「管理職のキャリア形成についてのアンケート」では、優れた職務能力をつけるのに最も重要な要因は「仕事上の経験」であり、女性管理職は男性管理職に比べ仕事上の 経験を通して信頼感を得ることの重要性を学んだとする者の割合が高く、自分を成長させた仕事としては配置転換や上司の退職等によって割り当てられる「新しい仕事」「マネジメントの仕事経験」「プロジェクトへの参加」などが挙げられており、これらの経験により視野が拡大し交渉力等が身につくとしています。女性管理職の悩みで男性と異なるのは「仕事と生活の両立」及び「昇進・昇格、将来のキャリア」の問題が多いことです。
女性雇用管理基本調査によれば、産業別に女性管理職比率とポジティブ・アクション(固定的な性別による役割分担意識や過去の経緯から、男女労働者の間に生じている差があるとき、それを解消しようと企業が行う自主的かつ積極的な取組)の取組企業比率を見てみると、係長についてはポジティブ・アクションに取り組んでいる企業ほど女性係長比率が高いとしています。

女性管理職比率とポジティブ・アクション取組状況

女性管理職比率とポジティブ・アクション取組状況
資料出所:厚生労働省「女性雇用管理基本調査」(平成12年)