第2回 第2次基本計画のポイント(1) 「社会的性別」(ジェンダー)の視点、 政策・方針決定過程への女性の参画の拡大
前回は、第2次基本計画の基本的考え方やポイントの概略などをご説明しました。
今回は、第2次基本計画のポイントのうち、「社会的性別」(ジェンダー)の視点と、政策・方針決定過程への女性の参画の拡大についてご説明します。
1.「社会的性別」(ジェンダー)の視点について
男女共同参画の実現の大きな障害の一つは、人々の意識の中に長い時間をかけて形作られた、性別に基づく固定的な役割分担です。このような意識は時代と共に変わりつつあるものの、未だ根強く残っています。
「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という意識について世論調査の結果を見ると、昭和54年調査では賛成の割合が7割を超えていましたが、平成16年調査で初めて反対(48.6%)が賛成(45.2%)を上回りました。しかし、性別ごとに見ると、女性は反対(53.8%)が賛成(41.3%)を上回っているのに対し、男性は賛成(49.8%)が反対(43.3%)をまだ上回っています。
このため、「社会的性別」(ジェンダー)の視点に立って、ジェンダーの平等を追求するための取組を進める必要があります。
第2次基本計画においては、ジェンダーについて、様々なご意見を踏まえ、「社会的性別」(ジェンダー)という表現を用い、明確な定義を注として明示した上で使用しています。
人間には生まれついての生物学的な性別(セックス)があります。一方、社会通念や慣習の中には、社会によって作り上げられた「男性像」「女性像」があり、このような男性、女性の別を「社会的性別」(ジェンダー)と言います。「社会的性別」(ジェンダー)は、それ自体に良い、悪いの価値を含むものではありません。このような意味での「ジェンダー」は、主要な国際機関や多くの国際的文書において広く使用されています。
次に「「社会的性別」(ジェンダー)」の視点でとらえられる対象には、性差別、性別による固定的役割分担及び偏見等、男女共同参画社会の形成を阻害すると考えられるものがあります。例えば、「男性は管理職、女性は補助職」、「女子は理工系への進学は不向き」、「お茶くみは女性の仕事」といったものです。
その一方で、対象の中には、男女の服装の違いや、ひな人形、こいのぼりなど、男女共同参画社会の形成を阻害しないと考えられるものもあり、このようなものまで見直しを行おうとするものではありません。また、社会制度・慣行の見直しを行う際には、社会的な合意を得ながら進める必要があります。
また、「社会的性別」(ジェンダー)という男女共同参画にとって重要な概念を使っていくためには、不適切な使い方をやめていかなければなりません。このため第2次基本計画では、不適切な例について、注で以下のような記述を置きました。
- 「ジェンダー・フリー」という用語を使用して、性差を否定したり、男らしさ、女らしさや男女の区別をなくして人間の中性化を目指すこと、また、家族やひな祭り等の伝統文化を否定することは、国民が求める男女共同参画社会とは異なる。
- 公共の施設におけるトイレの男女別色表示を同色にすることは、男女共同参画の趣旨から導き出されるものではない。
このような誤ったジェンダー概念の使い方は排し、男女共同参画社会の形成を進めるために、「「社会的性別」(ジェンダー)の視点」を広めていきたいと考えておりますので、ご理解いただきたいと思います。
第2次基本計画の具体的施策としては、男女共同参画の理念や「社会的性別」(ジェンダー)の視点の定義について、誤解の解消に努め、また、恣意的運用・解釈が行われないよう、わかりやすい広報・啓発活動を進めることが記載されています。また、男女共同参画に関する認識を深め、社会的性別の視点を定着させ、職場・家庭・地域における様々な慣習・慣行の見直しを進めること等を目的として、広報・啓発活動を展開することとしています。
具体的には、地方公共団体の職員や地方議会議員等を対象に、猪口大臣が自ら全国各地を往訪して、「大臣による男女共同参画研修会」を開催しました。この研修会は、平成18年1月から5月にかけて全国10か所で開催し、各会場では活発な質疑が交わされました。
2.政策・方針決定過程への女性の参画の拡大
我が国の政策・方針決定過程への女性の参画の拡大は、諸外国に比べて進んでいません。例えば、ジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)は、2005年において80か国中43位となっています。
(ジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)とは、国連開発計画(UNDP)が毎年公表している指数です。女性が政治及び経済活動に参加し、意思決定に参加できるかどうかを測るものです。具体的には、1.国会議員に占める女性割合、2.専門職・技術職に占める女性割合、3.管理職に占める女性割合、4.男女の推定所得を用いて算出しています。)
政治の分野においては、昨年9月の衆議院選挙において、過去最高の43人が当選し、現在は45人(9.4%)となっています。しかし、これを国際社会で比較すると、125位(列国議会連盟(IPU)ホームページより試算)と極めて低いものであることがわかります。また、参議院でも34人(14.0%)に過ぎません。
今後、男女共同参画社会を実現するためには、政策・方針決定過程への女性の参画の拡大について、より一層の取組が必要です。第2次基本計画においては、特に重点的に取り組む事項の一つとして、2020年までに、社会のあらゆる分野において指導的地位にある女性の占める割合が少なくとも30%程度になることを期待し、国、地方公共団体、企業など各分野における積極的改善措置(ポジティブ・アクション)などの取組を促進することとしています。
国においては、これに率先して取り組むため、国家公務員Ⅰ種試験の事務系の試験区分採用者に占める女性の割合について、平成22年度頃までに30%を目指すこととしています。また、国の審議会等委員への女性の参画の拡大について、平成17年度末までの目標である30%を達成したことを受け、平成32年までに、男女いずれか一方の委員の数が、委員総数の10分の4未満とならない状態を達成する等の新たな目標を設定したところです。
今後、様々な分野で政策・方針決定過程への女性の参画が進むよう、着実に取り組んでまいりますので、一層のご理解とご協力をお願いいたします。
(男女共同参画基本計画(第2次)の全文、概要などは、内閣府男女共同参画局ホームページでご覧いただけます。)