第2回 10年間の男女共同参画推進の基本的枠組みづくりの歩み

 男女共同参画社会基本法の制定により、男女共同参画の推進体制や基本的枠組みなどの基盤は整備されてきましたが、基本法が目指している社会の実現の状況はまだ不十分であり、取り組むべき多くの課題があるといえます。今回は、基本法が施行されてから10年間に男女共同参画推進の基本的枠組みづくり(推進体制や制度の整備など)はどのように進展してきたのかを振り返り、次回(最終回)に男女共同参画社会実現の現状と課題を整理したいと思います。

1.推進体制の整備

(1)国の推進体制の強化
 基本法以降、国の男女共同参画の推進体制も強化されました。国の推進体制としては、①政府全体で施策を推進する「男女共同参画推進本部」(総理大臣が本部長、全閣僚で構成)、②重要事項についての審議や施策の実施状況の監視等を行う「男女共同参画会議」(内閣官房長官が議長、その他の12名の閣僚及び12名の有識者により構成)、③様々な分野の関係者・団体が連携して男女共同参画の推進を図る「男女共同参画推進連携会議」(有識者及び様々な分野の団体から推薦された者により構成)、④これらの事務局である「内閣府男女共同参画局」があります。このうち②と④は基本法制定以降創設されたものです。特に男女共同参画会議は、基本法により設置され、内閣に置かれる重要政策会議の1つに位置づけられています。男女共同参画会議は、それまでの男女共同参画審議会の機能に比べ、1)男女共同参画施策の実施に関する監視 2)政府の施策が男女共同参画社会形成に及ぼす影響の調査、3)必要なときは総理大臣・関係大臣に意見を述べることができる等の機能強化がなされています。同会議は、平成13年発足以降16の意見決定をはじめとする多くの審議の成果を出しており、基本計画の策定や推進にも大きな役割を果たしています。また、男女共同参画局は、平成13年の省庁再編の時に従来の総理府男女共同参画室が内閣府の局となったもので、男女共同参画施策に関する総合調整機能を担っています。

 また、施策の総合的・計画的推進のために, 基本法に基づき、国は男女共同参画基本計画を策定しています。平成12年12月に初めての基本計画が策定され、17年12月には第2次の基本計画が策定されました。第2次基本計画では、政策・方針決定過程における女性の参画について「2020年に社会のあらゆる分野において指導的地位に占める女性の割合が少なくとも30%になることを期待」という数値目標を掲げるなど、12の重点分野での2020年までの基本的方向と2010年までの具体的施策を盛り込んでいます。基本計画に基づく施策の推進状況については、平成20年3月には、男女共同参画会議による中間的なフォローアップが行われ、今後特に取組が求められる事項についての意見決定が行われました。これに基づき、女性の参画をさらに戦略的に進めるため、平成20年4月に、男女共同参画推進本部により「女性の参画加速プログラム」が策定されました。また、平成21年3月には、基本計画の見直しに向けた基本的考え方について総理大臣から男女共同参画会議に諮問が行われ、平成22年末の第3次基本計画策定を目指した検討が開始されているところです。

(2)地方公共団体における推進体制の整備
 また、地方公共団体における取組は重要であり、国の施策や地域の特性を踏まえながら、地方公共団体の施策の推進が図られています。都道府県においては、基本計画を策定することが義務付けられ、市町村も、基本計画の策定に努力すべきこととされています。市区町村の計画策定率は、平成11年度の15.6%から平成20年度の57.1%(市区では88.5%、町村では31.9%)へと増加しました。また、基本法には特段の規定はないものの、地方公共団体においても男女共同参画の推進のための法的支柱として条例の制定が望まれるところです。都道府県では、現在1県を除き条例が制定されていますが、10年前にはほとんど条例がなかった市区町村レベルでは、平成20年度で条例制定率は21.9%(市区40%、町村7.5%)であり、特に町村での策定はまだこれからという状況です。
 また、男女共同参画の第一線の推進機関として、フレンテみえのような男女共同参画センター・女性センターの役割は重要です。これらの施設を設置する地方公共団体も少しずつ増加し、平成20年度現在で全国で333となっています。都道府県の設置率は平成11年度で63.8%だったのが20年度には95.7%、市町村は平成13年度の5.6%が20年度は14.5%となっています。

2.制度の整備

 男女共同参画に関連する様々な法令・制度の整備もこの10年間に進んでいます。特に、雇用機会均等、仕事と家庭生活等の両立支援、女性に対する暴力の防止などの分野で法令や指針等の整備が進められてきました。

1.雇用機会均等
 平成18年には、男女雇用機会均等法改正が行われ、男女双方に対する差別、間接差別、妊娠・出産等を理由とする解雇その他の不利益取り扱いが禁止されました。また、女性雇用者の半分以上がパートタイム労働者などの非正規雇用者となっており、正規・非正規雇用者には大きな処遇格差があるところであり、平成19年には「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(いわゆるパートタイム労働法)」が改正され、パートタイム労働者と正社員との均衡処遇、正社員への転換の促進などが図られています。

2.仕事と家庭生活等との両立支援
 育児・介護休業法については、平成13年に対象となる子の年齢の引き上げ等の改正が行われました。さらに、平成21年にはさらに短時間勤務制度の導入の義務付けなど子育て期間中の働き方の見直し、父親の育児休業の取得促進、短期の介護休暇制度の創設などを内容とする法改正が成立し、制度の充実が進められています。
 また、子育て支援環境整備も男女共同参画の推進に大きな役割を果たします。平成15年には「次世代育成支援対策推進法」が制定され、301人以上の労働者を雇用する事業主に両立支援等のための行動計画の策定を義務付け、就業の場の意識・環境の改善を促しました。同法は、平成20年に改正され、行動計画を策定する事業主を101人以上雇用の事業主に拡大することや行動計画の公表を義務づけること等の強化が行われました。
 子育てとの両立に限らず、さらに幅広い観点から、あらゆる人のための仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を官民挙げて進めるため、平成19年末には、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と行動指針が、政府、地方公共団体、経済界・労働界の代表も参加して、策定されました。

3.女性に対する暴力の防止
 女性に対する暴力の根絶に向けた法律の制定や強化は、様々な角度からこの10年間進められてきています。
 まず、平成12年には、ストーカー行為に対する規制と被害者に対する援助を定めたストーカー規制法が制定されました。
 また、配偶者暴力については、平成13年に議員立法により、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(配偶者暴力防止法)が制定され、保護命令制度、配偶者暴力相談支援センターなどの制度整備が行われました。この法律は、平成16年、平成19年の2度の改正により、拡充強化されています。平成16年の改正では、配偶者暴力の定義の拡大、保護命令制度の拡充、国による基本方針や都道府県による基本計画の策定の義務化などの法の強化が図られました。平成19年の改正では、生命・身体に対する脅迫行為、親族・支援者の保護、電話・メール等の禁止などにも保護命令制度の適用が広げるとともに、市町村の役割を強化して市町村が計画策定や配偶者暴力相談支援センター設置に努めるべきことが規定されました。
 人身取引については、平成16年に人身取引対策に関する関係省庁連絡会議を設置して「人身取引対策行動計画」を策定し、人身売買罪の創設等の刑法改正も行われました。
 また、強姦については、平成16年の刑法改正により、強姦罪の法定刑の引き上げ、集団強姦罪の創設などの対応の強化が行われました。

3.女性の参画促進のための数値目標の設定

 基本法は、積極的改善措置も含む施策の推進を図るべきこととしており、このような積極的な改善措置の一つとして、国は女性の参画についての様々な数値目標を掲げ、その達成に努めています。特に我が国では、政策・方針決定過程、指導的な立場における女性の参画はまだ不十分であり、政治・行政・経済などになかなか多様な視点や人材が生かされていないという状況があり、その積極的な改善が求められています。
 10年前は、女性の参画についての数値目標は国の審議会委員に関するものしかありませんでしたが、現在では女性割合について様々な数値目標が設定されるようになってきました。前述の「2020年にあらゆる分野で指導的地位に占める女性の割合30%」という目標は、平成15年の男女共同参画推進本部決定「女性のチャレンジ支援策について」に明記され、その後第2次基本計画にも盛り込まれました。また、科学技術分野における女性の参画は先進国で最も低いレベルにとどまっているため、第2次の男女共同参画基本計画及び第3期科学技術基本計画(平成18年3月策定)において「自然科学系全体の女性研究者の採用割合を25%に」という目標が掲げられ、女性研究者支援や女子学生の理系選択支援など取り組みが進められています。そのほか、政府の審議会委員(平成32年度までに4割、平成22年度までに33.3%)、国家公務員の採用(平成22年度に事務系I種で30%)や、管理職登用(平成27年度までに本省課室長相当職以上で5%)等の数値目標を掲げ、その達成に努めています。