第2回 間接差別の禁止と妊娠・出産等 を理由とする不利益取扱いの禁止

1.間接差別の禁止

間接差別とは、

  1. 性別以外の事由を要件とする措置であって、
  2. 他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものを、
  3. 合理的理由がないときに講ずること

をいいます。

 均等法制定以降、明白な差別は減少してきた反面、例えば、事業主によっては女性を採用・登用しなくてすむよう、合理性がないにもかかわらず女性が満たしにくい条件を課すなど形を変えた差別への対応が課題となっています。改正法では、厚生労働省令で定める以下の3つの措置について、合理的な理由がない場合、間接差別として禁止することとしました。

  1. 労働者の募集または採用にあたって、労働者の身長、体重又は体力を要件とすること
  2. コース別雇用管理における総合職の労働者の募集又は採用にあたって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること
  3. 労働者の昇進にあたり、転勤の経験があることを要件とすること

合理的な理由がない場合として考えられる例

  1. 荷物を運搬する業務で、当該業務を行うために必要な筋力より強い筋力があることを要件とすること
  2. 広域にわたり展開する支店、支社等がなく、かつ、支店、支社等を広域にわたり展開する計画等も無い場合
  3. 特定支店での管理職になる場合、異なる視点での経験が特に必要と認められない場合において、当該支店の管理職に昇進する際、異なる支店の勤務経験を要件とすること

 なお、省令で定めるもの以外については、均等法違反ではありませんが、裁判において、間接差別として違法と判断される可能性があります。

2.妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止

 現行法では、女性労働者の妊娠・出産又は産前産後休業を取得したことを理由とする解雇を禁止しています。しかし、解雇のみならず、退職の強要や正社員からパートへの身分変更の強要など解雇以外の不利益取扱いの事案が増加している現状にあります。このため、改正法では、妊娠・出産・産前産後休業を取得したことを理由とする解雇の禁止に加え、厚生労働省令で定める事項を理由とする解雇その他不利益取扱いを禁止することとしました。

厚生労働省令で定める事項

イ、 妊娠したこと
ロ 、出産したこと
ハ 、均等法上の母性健康管理措置を求めたり受けたりしたこと
ニ、 坑内業務の就業制限、若しくは危険有害業務の就業制限の規定により業務に就くことができないこと、あるいは当該業務に従事しない旨の申出をしたり従事しなかったこと
ホ、 産前休業を請求したり、産後の就業制限の規定により就業できず、産前産後休業したこと
ヘ、 軽易業務への転換を請求したり転換したこと
ト、 変形労働時間制の場合、1週間又は1日について法定労働時間を超える時間について労働しないこと、時間外、休日について労働しないこと、深夜業をしないことを請求したり、これらの労働をしなかったこと
チ、 育児時間の請求をしたり、取得したこと
リ、 妊娠又は出産に起因する症状により労務の提供ができない、実際にできなかったこと又は労働能率が低下したこと

不利益取扱いとは…

イ、 解雇すること
ロ、 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
ハ、 予め契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
ニ、 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
ホ、 降格させること
ヘ、 就業環境を害すること
ト、 不利益な自宅待機を命ずること
チ、 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと
例:賞与等の算定にあたり、不就労期間や労働能率の低下を考慮の対象とする場合、同じ期間休業した疾病等や同程度の労働能率が低下した疾病等と比較して不利に取り扱うこと
リ、 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
ヌ、 不利益な配置の変更を行うこと
例:産前産後休業からの復帰にあたり、原職又は原職相当職につけないこと
ル、 派遣労働者として就業するものについて、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと
例:妊娠した派遣労働者が、派遣契約に定められた役務の提供ができると認められるにもかかわらず、派遣先が派遣元に対し派遣労働者の交替を求めること
 また、妊娠中・産後1年以内の解雇は、事業主が、妊娠等が理由でないことを証明しない限り無効となります。

第3回はセクシュアルハラスメント対策等についてみていきます。