第1回 改正均等法のポイント等

「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進に関する法律」が施行され、本年は22年目に当たります。平成9年に「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「均等法」という。)に改正されてからも10年近く経過しています。 

 この20年間で企業の雇用管理の見直しは進展し、雇用の場における均等確保の必要性は、社会一般に広く定着しつつありますが、近年においてその改善のテンポは全体的に緩やかなものとなっています。また、差別事案は複雑化の傾向にあり、妊娠・出産等を理由とする解雇や解雇以外の不利益取扱い事案、セクシュアルハラスメント、母性健康管理措置の相談も近年増加しています。さらには、雇用形態の多様化の中で近年増加している非正規雇用者からの相談も増加傾向にあります。         

 このような現状に加え、現行均等法は、当初から「法のあるべき姿」とされていた男女双方に対する差別を禁止する法律ではないこと、平成9年改正に際して間接差別などの問題について国会において決議がなされていること、男女均等取扱いの状況について国際的な場で指摘がなされていることなど、従前からの課題を総合的に考慮し、法的整備を図ることとしたものです。           

 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び、労働基準法の一部を改正する法律(平成18年法律第82号。以下「改正法」という。)について、平成18年6月15日に成立、平成18年6月21日に公布され、省令・指針についても平成18年10月11日に公布、告示されました。平成19年4月1日から施行されます。       
 主な改正点は次のとおりです。

男女雇用機会均等法

  1. 性差別禁止の範囲の拡大

    男女双方に対する差別の禁止
    差別的取扱いを禁止する雇用ステージの追加・明確化
    間接差別の禁止

  2. 妊娠等を理由とする不利益取扱いの禁止

    妊娠・出産・産休取得その他省令で定める理由による解雇その他不利益取扱いの禁止
    妊娠中・産後1年以内の解雇の無効

  3. セクシュアルハラスメント対策

    男性に対するセクシュアルハラスメントも対象
    セクシュアルハラスメント対策として雇用管理上の措置を義務化

  4. ポジティブ・アクションの効果的推進方策

    国が事業主に対して行う援助の内容を追加

  5. 男女雇用機会均等の実効性の確保

    調停及び企業名公表制度の対象範囲の拡大

労働基準法

  1. 女性の坑内労働の規制緩和

    女性の坑内労働禁止について、妊産婦及び作業員を除き解禁

ではこの改正内容について、これから3回にわたって概要をみていきましょう。

  1. 男女双方に対する差別の禁止

     現行法は、「女性に対する差別」を禁止していましたが、改正法では男女双方に対する差別を禁止することとしました。また、これに伴い、紛争解決の手続きについても、新たに男性が対象となります。

  2. 差別禁止の対象の明確化・追加

     現行法では、募集・採用、配置・昇進・教育訓練、福利厚生、定年・解雇について差別的取扱いを禁止していますが、これらの雇用ステージ以外での差別事案が顕在化していることから、改正法では、次の事項について差別禁止の対象を明確化・追加することとしました。具体的には指針で示しています。

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  • 配置に係る業務の配分及び権限の付与

    例:営業で、男性には外勤業務に従事させることとするが、女性には内勤業務のみとすること

  • 降格

    例:女性のみ婚姻または子を有していることを理由として降格の対象とすること

  • 職種の変更・雇用形態の変更

    例:一般職から総合職への職種の変更の基準を満たす労働者の中から男女のいずれかを優先して職種の変更の対象とすることや、女性のみ婚姻又は子を有していることを理由に有期契約労働者から正社員への雇用形態の変更の対象から排除すること

  • 退職の勧奨

    例:女性にのみ経営合理化のための早期退職優遇制度の利用を働きかけること

  • 労働契約の更新

    例:経営の合理化に際し、既婚女性のみ労働契約の更新をしないこと

第2回は間接差別の禁止からみていきます。