第3回 今後の課題と私たちにできること

1.LGBTQの里親の現状

 第1回ではLGBTQと社会的養護の課題について書き、第2回では弊法人の課題への取り組みを紹介しました。本コラムでは、その後の状況や今後の展望について書きたいと思います。
 さて、第2回で取り上げた通り、2017年、大阪市で全国初の同性カップルの里親認定が実現しました。弊法人は20社以上の取材を受け、代表である私へのインタビュー記事が大きくネットニュースに掲載されました。
その結果、ネットやSNSでは、批判に加えて誹謗中傷に近いコメントがあふれてしまいました。批判の主なものは、「大人のエゴだ。里親制度は、子育てしたい大人のための制度ではなく、子どものための制度だ」「同性カップルの子どもがいじめられる」などのコメントです。「大人のエゴ」についてですが、里親研修に行くと「子どもがほしい」という夫婦の方々がたくさんいます。同性カップルに限られる話ではありません。里親希望の多くの大人たちは、「子どもがほしい」という気持ちから始まって、研修では社会的養護の意義や、そこで育つ子どもたちのことを学びます。施設や乳児院への訪問や実習もあり、そのプロセスで「子どもたちの制度だ」と学ぶわけです。また、「いじめられる」というのは、まったく実情を知らない意見です。同性カップルが親であるという理由のみでいじめられたという報告は、少なくとも私の知る限りではありません。また、イギリスのLGBTの里親と里子のインタビューをおさめた『Proud parents』という本には実際に里子がいじめられた話がありましたが、里子いわく「いじめを里親に話したらすぐに学校の先生に言ってくれて、学校からいじめた子たちに適切な指導があって解決した」という話で、里親や学校への信頼感が語られていました。そもそもいじめというのは、ターゲットの子が決まると、その子が他の子たちと違っている部分をからかわれるという構造で起きることも多いです。「めがね」「デブ」「ガリガリ」などと子どもが言われたとき「めがねを外せ」「痩せろ」「太れ」などと言うでしょうか。その構造を無視して「子どもがいじめられるから同性カップルの里親には反対」というのは屁理屈でしかないと思います。いじめの構造を断ち切りつつ、いじめが起こったときにどう再発防止をするかを考える社会であってほしいです。

同性カップルの里親と里子のさまざまなエピソードが紹介されている『Proud parents』冊子の画像
同性カップルの里親と里子のさまざまなエピソードが紹介された書籍『Proud parents』。

 その後、ネット上ではさまざまな批判や中傷は減ってきてはいますが消えることはありません。しかし、ネットでの想像上の「心配」をよそに、同性カップルの里親は増えています。自治体が大阪市の事例をきっかけに適切な対応をするようになったこと、厚生労働省からLGBTの里親申請も異性カップルと同等に扱うべきという通知が出たこと、自治体のパートナーシップ制度の浸透に合わせて里親希望の同性カップルが増えてきたことがその理由です。ある地域ではLGBTQの里親やその支援者中心に定期的にサロンを開催しています。通常の里親サロンだとLGBTQの人にとっては敷居が高いかもしれないという理由から開催しているそうですが、そこで語られることは「子どもが反抗期で」「子どもとだんだん距離が縮まってきた」などと、里親のご夫婦同士で語られることと何の変わりもないです。里親担当の児童相談所との信頼関係も築き、二人目、三人目のお子さんの委託も進んでいるとか。弊法人のミッションの一部は達成したのではないかと感じています。

 

2.児童養護施設調査のその後

 さて、「育てられる側」の課題のLGBTQ児童の児童養護施設調査です。2017年、先行のアンケート調査結果報告書が国会で取り上げられ、児童福祉法の一部を改正する法律案に対する付帯決議に「性的マイノリティ児童への適切な対応」について盛り込まれ、厚生労働省から、児童に対してのきめ細かな対応の実施について通知が出されました。また、2018年のヒアリング調査報告については多くのメディアに取り上げられ、「調査結果の内容が知りたい」と児童養護施設や乳児院から研修依頼が増えました。しかし、2020年、コロナ禍が始まると、施設が感染予防やクラスター対応などに追われてしまい、外部研修の中止が相次ぎ、研修依頼がゼロとなりました。調査報告書の発表後、全国の施設職員に課題や好事例を伝えようとした矢先のコロナ禍はとても残念な出来事であるとともに、未曽有の災害や疾病の流行などが起きると、マイノリティ児童の課題が後回しになるのだという現実が突きつけられたように感じました。
 その後、研修依頼は少しずつ戻ってきており、実際の事例をもとに施設職員を対象にワークを実施しています。団体設立当初とは違って、職員のLGBTQの知識は増え、偏見もなくなっています。ただ、実際に児童から相談されたときはまだまだ迷うこともあるとのことです。研修では、さまざまな事例や課題を取り上げて、職員たちが「どうすれば目の前の児童に寄り添ってあげられるか」を話し合っており、職員たちのそんな様子を頼もしく感じます。今後も研修を続け、ひとりひとりに寄り添うことのできる職員さんのサポートをできればと思っています。

3.「LGBTQと社会的養護」その他の課題

 「LGBTQと社会的養護」には、他の課題もあります。ヒアリング調査では、LGBTQ当事者の施設職員の声も拾いました。トランスジェンダーの職員が性別変更しようとしたところ、「子どもがパニックになる」と言われて退職に至ったケースもあれば、同じ状況でも施設から「どの性別で働くか」を確認してもらったうえで自分らしく働いているケースもありました。セクシュアリティが原因で、仕事が続けられない状況は非常に辛いことです。多様なセクシュアリティの子どもがいる現場なのだから、多様なセクシュアリティの大人がいて当たり前、という社会になってほしいです。

4.終わりに

  計3回にわたり、LGBTQと社会的養護がクロスする分野の課題と変遷について書きました。LGBTQの分野にも社会的養護の分野にもさまざまな課題がある中、それらが重なる課題の解決は困難なものが多かったです。それでも、団体設立時から、大きな進展がありました。LGBTQ当事者、社会的養護関係者、市民団体やNPOが声をあげ、政治家や自治体職員たちがその声を政策や法制度に反映していくプロセスの中で、LGBTQと社会的養護の課題が改善されてきたのだと思います。

 「LGBTQと社会的養護」の課題を知った方から「それでは私たちはどうすればいいでしょうか」という声をよく聴きます。私はいつも「知ることがまずは大きな一歩なので、関心を持ち続けてください」ということ、そして「可能であればどこかで話題にしてみてください」ということをお伝えしています。
 この連載を目にした方は、すでに大きな一歩を踏み出しているはずです!今後とも、「LGBTQと社会的養護」について、考え続けていただけると幸いです。