第2回 LGBTQと社会的養護 育てる側と育てられる側

1.「LGBTQも里親に」 シアトルの視察

 さて、第1回で記したとおり、2013年、有志とともにLGBTQと社会的養護を考える団体「レインボーフォスターケア」を設立しました。アメリカの統計(※第1回)には、衝撃を受けたものの、現状をこの目で確かめたいと思いました。そこで、設立後すぐに、社会的養護の勉強会で知り合ったソーシャルワーカーを頼り、シアトルを訪問しました。その中で特に印象に残った訪問先を紹介します。

 まずは、里親・養親支援NPO「Families Like Ours」です。直訳すると「私たちのような家族」。代表のデイビッドさんはゲイカップルとして里親をしています。里親になった当時、ゲイカップルの里親は非常に珍しかったため、児童相談所が里親希望のLGBTQからの相談を受けると、デイビッドさんに相談を回すようになったそうです。その相談の多さに、「LGBTQで里親と養子縁組に興味のある人たちを支援するグループ」が必要だと感じて設立に至ったとのことです。当時の日本では、同性カップルの里親はいなかったので、私は「日本では、支援グループなんて未来の話だな」と感じたことを思い出します。「里親のセクシュアリティなんて養育に関係ない」と言い切るデイビッドさんですが、その一方で、「『ゲイの強み』を生かせる例もある」と話してくれました。両親間のDVを見て育った少年が、女性に対する暴力的な言動が止まらず、女性の里親家庭への委託が困難となったため、ゲイカップルに委託された事例です。ゲイカップルの里親が、女性との適切な関わり方を丁寧に教えていったことで、更生につながったとのことでした。デイビッドさんの「彼らの努力によるものですが、同性カップルの利点を生かせることもある、という例ですね」との言葉に、「男女カップルと変わらないが、利点が生きる場面もある」ということを学びました。

 次にレズビアンカップルの里親家庭を訪問しました。デゲールさんとリサさんという女性カップルが里親をしていて、10代の女の子が一緒に暮らしていました。彼女たちはすでに多くの里子を養育し、地域の複数の里親家庭をまとめる「ハブホーム」の役割も担っていました。私が驚いたのは、彼女たちが多くの里子を育ててきたことだけでなく、地域で強い信頼を得ている存在だったことです。日本では、里親であることを周囲に隠す家庭も少なくありませんが、シアトルではほとんどの里親がそのことをオープンにしている事実にも驚きました。彼女たちは里親として地域住民に信頼される中で次第に特別視されなくなったとか。「日本もいつかこんな日が来れば」と願い、「LGBTQも里親に」の思いを強くしました。

デゲールさんとリサさんの家の冷蔵庫の写真
デゲールさんとリサさんの家の冷蔵庫には多くの里子たちの写真が貼られていた。

2.初のゲイカップル里親が誕生

 シアトルから戻り、日本での活動を本格化させました。日本では、法律上は同性カップルも里親になることが可能ですが、里親会の会長からは「会ったことがない」と言われる状況でした。実際に、里親制度について問い合わせをしたカップルが断られたという体験談も寄せられていました。
 この状況を打開するためには、政治家による自治体運用への議会質問や、自治体が里親制度のホームページ上で「同性カップルも里親になれる」と明記することが必要でした。しかし、多くの政治家や自治体職員は、「同性同士で子育てができるわけがない」「父性と母性がそろっていない」といった旧態依然としたジェンダー観にとらわれており、話が通じにくい状況でした。第1回で記したとおり、日本の社会的養護は、児童養護施設への委託率が非常に高い状態にあります。「男女カップルでなければならない」などの理由で同性カップルの子育てを否定する人たちは、施設での集団養育についてはどう考えているのだろうか――そんな疑問を覚えました。また、離婚後に同性同士で子育てをしている人や、精子提供を受けて子育てをしているレズビアンカップルの存在が十分に知られておらず、「同性カップルでも子育てはできる」という現実を伝えていく必要性を強く感じました。
 そのような否定的な対応が多い中、全国初の「LGBT支援宣言」を出した大阪市淀川区の榊正文区長と面会し、LGBTQの人材が十分に生かされていない現状や、社会的養護における里親家庭の重要性について意見交換を行いました。この面会をきっかけに、2017年、大阪市で全国初となる同性カップルの里親認定が実現しました。

3.児童養護施設調査について

 同性カップルの里親認定に向けた活動と並行して、「育てられる側」に関する取組も行いました。2016年から2年間、全国の児童養護施設を対象に、LGBTQの児童に関する調査を実施しました。
 ヒアリング結果の中で、最も衝撃的だったのは、トランスジェンダーの児童について、複数の施設が委託を断り、その結果、その児童が家庭に戻ることになった事例です。施設のハード面での受け入れに限界があるとしても、ソフト面で何らかの対応を検討することなく、「厄介者」のように扱われている現状に、強いショックを受けました。この事例では、里親家庭への委託も行われていませんでした。
 一方で、トランスジェンダーの児童に対し、本人の希望する服装を尊重し、学校との調整を丁寧に行っている施設もありました。その施設では、児童が大人になった後も連絡を取り合い続けており、「実家」のような役割を果たしながら、本人の人生を支えていました。目の前の児童に真摯に寄り添う施設ほど、本人との長い関係が築かれていることがわかりました。
 調査を通じて、想像を超えるほど多様なセクシュアリティをもつ子どもたちが、社会的養護のもとで暮らしている現実が明らかになりました。そして、「多様な子どもたちがいるのなら、多様な大人が社会的養護に参画すべきだ」という思いを、あらためて強くしました。
 次のコラムでは、LGBTQの里親の現状や、児童養護施設調査後の変化、そして私たちにできることについて書いていきたいと思います。