第2回 わたしのからだはわたしのもの

 1994年9月、エジプトのカイロで開催された「国際人口開発会議」では、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)が焦点となり、日本でも1996年「優生保護法」が「母体保護法」と改正されました。

 しかし、中絶には夫や、相手の男性の同意が必要とされ、女性の「自己決定権」が女性のものである状態にはなっていません。

 わたし以外の他者の価値観や社会通念に苦しみ、法律に規制され、医療に決定されてきました。

 でも、これらは、永遠に変えられないものでもなく、私たちが次の世代に何を残し、何を変えるのか自分自身に問いながら選択することはできます。

 あなたの人生の決定権は本来あなたのものなのです。

リプロダクティブ・ヘルスサービス

  • 幼児期・思春期・更年期・老年期を含む全生涯にわたる、肉体的・健康的健康を享受する権利
  • 家族計画のためのカウンセリング
  • 情報・教育・出産前後のケア
  • 適切な不妊治療
  • 中絶・性感染症・治療と結果の管理
  • 国際的人権
  • 全てのカップル及び個人が、自由にかつ責任を持って、子どもの数、産む間隔、時期を決め、そうするための情報と手段を得る基本的権利、および最高水準の性と生殖に関する健康を達成する権利
  • 差別・強制・暴力を受けることなく生殖に関する決定を行う権利

 「わたしの身体、性的人権」を取り戻すために

  国際的な女性運動の拡がりのなか、女性の人権「性的人権」の主張が可能になりました。だけど、なぜ?現在もこれほどまでに、性的自己決定ができないのか?今でも主張しにくいのはなぜなのかを考え、これからに向かって、私たちは何を必要としているのか、安心して安全な暮らしを次の世代に残すために、この日本で暮らすあなた自身のこととして、考えてみませんか。

性的人権

  • 自分のからだ・性器を自己管理する権利
  • 性的平等が保障される権利
  • 自らのセクシュアリティを保全し選択する権利
  • 自己の性行動を選択し決定する権利
  • 性に関する健康の水準を保証される権利
  • 性に関する情報・教育を保証される権利

 私たち女性は、年齢や生活が異なっていても、みんな同じように自分のからだや性にまつわる不安や悩み、社会の中での生きにくさを「女性であるがために」経験しています。それらのことについて率直に語り合い、相談できる場がウィメンズセンター大阪です。女たちがお互いの知識や経験を持ち寄って、自分たちで解決できる力をつけていくことをめざしています。

 上の文章は30年以上、現在も、ウィメンズセンター大阪の「ごあんない」に掲げてきた文章の一部です。自分が生きてきた年数付き合ってきた私の身体。「私のからだはわたしのもの」このあたりまえに思える言葉が実感できなかったわたしでした。しかし、ウィメンズセンター大阪に訪れた女性たちもまた、おなじように感じていることもわかりました。

強要、強制されるセックスが普通なの?

妊娠を望んでいるのか、いないのか考える自由はないの?

不妊治療は誰が望んでいるのか、治療は当然の責務なのか。

避妊は誰の都合でするのか。

出産の方法は誰が決めるのか。

子宮摘出手術の説明は誰のためにするの?

性や身体への違和感は口にしてはいけないの?

性的被害にあった私の身体は汚れている。

私の考えや感じたこと、行動を抑えつけられるのは女性なら仕方のないこと?

友人と話していて子どものころの父親からの行為が性虐待だとわかった。

養父が夜、私の部屋に入ってこないように、眠らないで朝を待った。

 

 一人ひとりの声から発せられる悩みや不安、女性の身体に起きている現実は、その人の生きてきた証、生き抜いてきた証です。

 それなのになぜ、自分の身体と性を自分自身のものではないように感じるのでしょうか?

 

 抑圧してきた体験を言葉にしようとしたとき、口の奥の喉が絞られ、言葉は出ずに、吐き気が襲います。言葉にすることを阻むように咳がでます。

 苦しい体験を飲み込み続けると、胸とお腹に塊ができて、ドンドン大きくなり、固くなります。そうなると簡単には私の中から出ていってくれません。かきむしりたくなります。皮膚から血がにじんでも消えることはありません。

 30年女性の話を聴きながら、身体の感覚も表現してもらい、身体とともに生きていることをともに実感してきました。あなたの身体が喜ぶことはどんな時?あなたが楽になる香りは?どんな触れ合いが好き?ひとつひとつ確認しながら、身体感覚を取り戻す作業をよりそいながらすすめます。

 ゆっくりと、自分のリズムで、何が嫌だと感じ、どうしたいのかを取り戻すのです。