第1回 恋愛でもDVがあるらしい?!

 みなさん、恋愛関係にある恋人間にもDVがあるって知っていますか?それを「デートDV」といいまして、実は調査では付き合っているカップルの 1~2割にDVがあるとわかっています。でも、携帯電話による束縛や監視、言葉による暴力なども入れると3~5割にもみられるといわれています。


  殴ったり大声で怖がらせて言うことを聞かせるというDVもありますが、殴らずに相手を精神的に支配して、いうことを聞かせて、結局は恋人の自由を奪うとい うDVもあります。例えば、よく見られるのが、「二人の間のルール」を作って相手を束縛し、それを守らなかったら責めて徐々に精神的に有利になり、相手を 完全支配するということがあります。


 実際にあった事例ですが、「待ち合わせには絶対に遅れないこと、常に連絡を取れるようにし て おくこと、彼との約束を何よりも優先すること、どこで誰と何をしているかを前もって知らせておくこと、他の男の人とは仲良くしないこと、携帯電話の中に男 性の連絡先は入れておかないこと、誰からの電話/メールかを聞かれたらすぐに答えること、メールを見せること、彼の言動に反論しないこと、性的欲求を断る ときは必ず彼が納得する理由を言うこと」といった約束を作っていたカップルがありました。


 この約束の中身自体がおかしいのですが、付き合えば束縛は当然、愛しているからほかの人と仲良くしないように嫉妬して独占するのは当然と思って、こうしたルールを作っているカップルは少なくないのです。


  しかしこうした約束を守らねばならない関係は、対等で健康的な関係といえるでしょうか?というのも、待ち合わせに遅れないようにするのは一般的にはいいこ となのですが、もし遅れても事情があるだろうし、そんなに怒らずに少し謝ればすむ話です。でも自己中心的な加害者タイプの人は、自分が待たされることに激 怒します。俺(私)を待たせるなんて許せないと怒り、グダグダ説教します。その結果、立場が弱い方(弱者)は、自分が悪いんだと思ったり、相手が怖い、嫌 われたらいやだと思って、相手のいいなりになっていくのです。力関係が変化し、被害者の方は常に相手の顔色をうかがい、相手に怒られないようにするのが行 動基準となります。実際、上記の例の人の場合、電車の中や、急に友達と出会って喫茶店に入り、彼からの電話に気がつかなかったときには、何度も何度も電話 が鳴り、後で理由を説明しても聞き入れてもらえずしかられていました。


 そうなると、被害者の人には、恋人との関係で安心感がな く なってきます。自分への自信もなくなっていきます。彼を第一にしないといけないので友人が減っていき、男友達もいなくなり、生活が彼中心になっていきま す。そこでは自由が減っていきます。本当なら勉強したり、クラブ活動したり、友達と交流したり、一人でいろいろ始めたり、バイトしたりして成長していくの ですが、DV的な関係になると彼第一になり、彼の言いなりの生活になっていきます。彼に呼ばれたらすぐ飛んでいくし、彼の機嫌を損ねないよう逆らわないで 従順になります。スケジュールはできるだけあけておいて、彼に合わせられるようにします。そんな生活をしていると、彼女の成
長が邪魔されていくことになります。


 まとめますと、殴られていなくても、生活上で安心感が減ったり、自信や自由が減ったり、成長が邪魔されるようなことがあると、それは健康的な関係ではないという意味で、DV関係だというのです。


  皆さんの周りにもこんな関係はありませんか?別の事例ですが、こうした束縛関係を、恋愛だからそんなもんだと思っていた人が、ついに殴られるまでに悪化し てしまったケースもあります。束縛を最初は受け入れていたのですが、徐々にバイトの仲間との関係まで邪魔されてそれを言わないでいたら、ある日、席を外し た時、彼(加害者)が彼女(被害者)の携帯をかってにチェックして、バイト先の異性とメールしているのを知って、彼女の顔を何回も殴ったのです。公の場で 彼女のことを大声でののしり、携帯を持っていきました。彼女は怖くなって連絡を取らないでいたのですが、彼はその後、数日間にわたって彼女の家の前に来て 何時間も彼女を待ち伏せしました。いわゆるストーカー状態になったのです。彼女の友人に、彼女がいかにひどい女性かと嘘を言って根も葉もないうわさを流 し、彼女と縁を切るようにいったり、電話で彼女の命を脅すようなことを何回も留守電に入れたりしました。そして彼は周りの人に「自分こそが被害者だ」と 言って回っていました。


  こんな風に、愛する人を思うあまりにDVやストーカーをしてしまう人がいるのですが、それは愛情が強いからではなく、愛していればそういうことをしてもい いという間違った考えを持っているからなのです。恋愛すれば、恋人である自分が相手を所有してもいい、束縛してもいい、嫉妬して異性関係を禁止してもい い、相手が言うことをきかなければ怒ってもいい、恋人とは秘密はなしでプライバシーもなくて当然、何もかも知る権利がある、いったん付き合ったら離れない 権利がある、自分の許可なしに別れるなんて許せないなどと思っているのです。それは、昔からの考えをテレビやマンガや歌の歌詞で学んでしまったために、知 らない間に恋愛ってそんなもんだと思ってしまったということです。 でもそれはDVを許す考えなのです。そうではない恋愛もあるのだと知ってほしいと思います。健康的な関係では、相手を一人の人間として尊重します。信じて いるからこそ、相手を束縛する必要もありません。いつ、誰と行動するかを決める自由を相手に認めます。相手の成長を望むから友人関係を邪魔しないし、異性 の友人がいることにも怒らず禁止しません。相手が何か新しいことを始めようと思っても応援します。相手がそうした活動でいろいろなことを学び、素敵な人に なっていくということを喜びます。相手をバカにして、お前にできるわけないなどと足を引っ張りません。自分は自分でいいんだ、という自信が持てるようにほ めたり、愛したり、応援します。大きな声を出して威嚇せず、相手に安心する気持ちを与えます。


 当然、「なんでも自分の許可なし に は、してはいけない」とは言いませんし、待ち伏せしたり勝手に迎えに行くような監視行動もしません。部屋の掃除や料理することを当然のようにやらせない し、怒りでモノにあたるところを相手に見せたりしません。別れるなら死んでやるなどと脅しもしません。


 普通の友人にはできないけ れど、恋愛関係だからいろいろなことが許されるだろうというのは間違った考えです。愛しているからこそ、相手を信じて相手の自由を尊重してほしいと思いま す。束縛が愛情だなんて間違った考えです。デートDVについて学んで、見抜く力をつけ、対処方法を学び、被害者にも加害者にもならないようにしてほしいと 思います。友達がそんな関係になっていたら、ぜひ相談にのってあげてください。間違っても「愛されている証拠だからDV的なことも我慢するように」などと いわないでください。


 次回はデートDVについてよくある質問に答える形で、デートDVの理解を深めていきたいと思います。質問があれば聞いてくださいね。