第2回 万協製薬を成功に導いた経営戦略とは?

2014年の万協製薬は男女共同参画関係のコンテストにおいて、数多くの賞をいただいた。まず、2014年5月31日に平成25年度子育て同盟応援企業優秀賞をいただいた。これは子育て支援に熱心な育メン県知事でつくるネットワークでの第2位の表彰だ。
また、11月19日に平成26年度「子どもと家族・若者応援団表彰」内閣総理大臣表彰を受賞した。その内容とは、子ども・若者を育成支援する活動及び子育てと子育てを担う家族を支援する活動に取り組み顕著な功績のあった企業を顕彰する賞で、民間企業としては、日本で唯一の内閣総理大臣表彰の受賞企業となった。これは、会社内における子育ての取り組みや地域貢献が評価されたものだ。
また、11月23日には三重県の第1回「ファザー・オブ・ザ・イヤーinみえ」“イクボスさん、いらっしゃい!”部門賞をいただいた。イクボス賞とは、子育て応援を推進する組織内において、その推進にただならぬ功績をした上司に贈られる賞である。
今年はこれに加えて経済産業省からは、「がんばる中小企業・小規模事業者300社」と「おもてなし経営企業選」という二つの賞をいただいた。
おまけに12月には、三重県の「みえの防災大賞」も受賞することになった。
これまで、万協製薬はさまざまな賞を受賞してきたが、こんなに、多くの賞をもらった年は他になくまさしく「受賞ラッシュ」の年である。

なぜ、万協製薬が数々の賞を受賞できたのだろうか?このことについて考えてみよう。私は、物事を考えるときにその理由をしっかりと考えることが重要であると思う。世界的に有名な自動車企業であるトヨタが推奨しているのは、「5なぜ?」である。物事の理由を5段階にまで掘り下げて考えようという思考方法だ。

では、このことを「万協製薬の数多くの受賞の理由」というテーマで考えてみよう。
まず、受賞の理由は、
1.簡単にいえば、コンテストに応募したからである。
というと弊社が賞をとることに躍起になっていると思われがちだが、決してそうではない。それぞれの方面から、「ぜひ応募してください。」との声があるのだ。弊社はそれに沿って、コンテストに出ているわけである。では、なぜ各方面からの推薦があるのだろうか?
その理由は、
2.「万協製薬が、良い会社」だからである。
良い会社は安心して推薦をすることができるからだ。では、なぜ万協製薬が良い会社であるのか?というと、その理由は、
3.前回紹介したさまざまな子育てや社員の福利厚生制度の充実のせいである。
では、なぜ万協製薬はそんなに社員の福利厚生が充実しているのだろう?その理由は、
4.万協製薬が「田舎にある製薬会社」だからである。
では田舎にある製薬会社はなぜ、福利厚生を充実しなければいけないのだろう?その理由は、
5.製薬会社は多種多様の豊富で高度な人材を必要とする産業であるからだ。
製薬には開発、品質管理、製造といずれの分野においても特定の専門職能を有する社員が必要だ。そういった社員は、いずれも高学歴な人材である。残念ながら私の会社のある地域ですべてのそういった人材を雇用することは難しい。そこで弊社は社員の福利厚生を充実させることで、全国から有能な人材を集めることに成功している。おまけに、それぞれの賞が全国に万協製薬はよい会社だと宣伝してくれるわけだから、ますます効果倍増である。
男女共同参画のための活動は、良い人材を集めることに一番良い方法なのだ。つまり、この活動は、実は会社に利益をもたらし、成功させる戦略でもあるのだ。

しかし、一足飛びに弊社がここまで来たわけではない。2003年当時、弊社では男女共同参画を「ウーマンリブ運動」と勘違いしていた。それを変えたのは三重県が始めた企業が受賞対象の「男女がいきいきと働いている企業表彰」であった。私は当時、会社と社員が力を合わせて同じ方向を向くにはどうしたらいいか?と悩んでいたのだ。

そこで、フレンテみえの鈴山雅子元所長からさまざまなレクチャーを受けた。フレンテみえの活動にも参加をした。そのことが弊社に多くの示唆をもたらした。
当時、私の妻は3人の子供を育てながら一日も休まずに仕事をしていた。そしてよく泣いていた。私はその様子を見て「育児ノイローゼ」だと決めつけていた。そのことを鈴山先生に話したら、ものすごく叱られた。「経営者の家族への無理解が、社員の家族をも不幸にするのだ!」と。私はそれを聞いて本当に妻にすまないと詫びた。


私達夫婦は、自分たちのように育児で母親が犠牲になることはしたくない。そんな社員にしたくないと決めた。このことが、現在の活動の原点である。
鈴山先生は2014年にお亡くなりになったが、先生の遺志は、万協製薬に今も息づいている。
妻は、2014年に町会議員となり子育てと会社経営の3足のわらじを履くスーパーウーマンとなった。今では私はこう言っている。
「もっとも、身近でできる社会貢献は、会社で働いている人を幸せにすることだ!」と。

万協製薬株式会社の表彰状の画像