第2回 イクボスが社会を変える!

イクボスって何ですか?

「イクボス」という言葉を聞いたことがあるだろうか?イクメンなら知ってるけど。。。
育(イク)児をするボスでしょ? それとも育(イク)休をとるボスかな?
イクボスとは「社会を育てるボス」のこと。
もっというと、「職場で共に働く部下・スタッフのWLB(ワークライフバランス)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果も出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる経営者や管理職」のこと。
というのが「イクボスプロジェクト」での定義であり、できたてほやほやの言葉なのだ[1]。
なーんだ、それじゃあ知らない訳だ。まあ、そうかもしれない。
だが、このイクボスプロジェクトは単なるNPO法人の活動に留まらず、自治体や政府からの注目度も高い。その証拠に、プロジェクトのキックオフミーティングには、文京区長の成澤氏がゲストとして来られているし、内閣府の森大臣(少子化対策、男女共同参画担当)からのメッセージも届いている[2]。
そして、既にこの言葉はWebの辞書にも載っているのだ[3]。

今、なぜイクボスなのか?

では、なぜ今イクボスを広めようとしているのだろうか?

育児や家事に積極的に関わりたいという男性は年々増えており、育児休暇を取得したい男性は3割以上[4](調査によると6割強[5])にも関わらず、実際の取得率は1.89%(2012年度、厚労省)というのが現状だ。

この原因を突き詰めて考えていくと、そこには旧態依然とした古い考え方が横たわっていることに気がつく[6]。

それは、仕事において「残業して当たり前」とか、「長時間労働も厭(いと)わず働いた人の評価がいまだに高い」といったものや、「育児は女性がやるもの=育児休暇は女性がとるもの」という管理職や経営者(マネージメント層)を中心とした意識だ。

長時間労働がもたらすもの

そのようなマネージメント層の下で働く男性は、やはり自分の地位やキャリアを築くために長時間労働をすることになり、子育て世代の30代男性の5人に1人が週60時間以上の長時間労働をしていることにつながっているのだ[7]。
そのような長時間労働で本当に実績があがっているのだろうか?
日本の時間あたりの労働生産性はOECD34か国中20位[8]と決して高くない。
OECD諸国で就業1時間当たりの労働生産性が高かったのは、ノルウェー、ルクセンブルク、アイルランド、米国の順であり、これらの国は、国民1人当たりのGDPもそれぞれ2位、1位、7位、4位と上位を占めている。

要するに、長く働いてもアウトプット(結果)は出ないのだ。

では、労働生産性をあげ、業績を上げるためにはどうすればいいのだろうか?

時間制約のあるメンバーをどう有効活用するか?

右肩上がりの高度経済成長が終わり、終身雇用制が崩壊している現在では、一人の収入で一家を運営していくという「大黒柱」をベースとしたシステムは機能しにくい。

そこでは、共働きにより夫婦二人で家事・育児全般を運営していく「ツートップ」のシステムの方が上手く機能することになり、会社や社会もそのシステムに適合するよう制度や仕組みをアップデート(更新)する必要がある。

夫婦二人で家事・育児をするということは、女性だけでなく男性も子どもの急な病気や学校行事で突発的に休むことを前提とする必要がある。
更に、これから団塊世代の高齢化に伴う「大介護時代」を迎える日本では、育児真っただ中の社員が介護も背負う「ダブル制約」社員が増える可能性が十分ある。

職場の理解が社員のモチベーションを上げる

そのようなメンバーをまとめ、企業としての実績を上げるためには、上司であるマネージメント層が育児や介護に制約のある社員のモチベーションをキープ(保持)し続けることが必要だ。

子ども(親)の病気で保育園(老人ホーム)から呼び出しがかかった部下に対して、

「早くいってやれ、後は任せろ」

と言えるのか、それとも嫌味の一つでも言って社員を嫌な気持ちにさせるのかは雲泥の差である。

当然、前者の社員は上司や会社に感謝し、それに報いるためにも今まで以上に仕事にもコミットメントし、パフォーマンス(成果)も上がるだろうし、後者の社員のモチベーションが下がるのは間違いない。

どちらが社員にとっても会社にとっても、もちろんその上司にとってもハッピーな結果が生まれるかは一目瞭然である。これからのマネージメント層はビジネスパートナーである社員の家族も、会社も、自分もハッピーになれるようにイクボスを目指して欲しい。

イクボスが社会を変える

あなたはダメボスになっていませんか? ダメボスとはイクボスの反対であり、自分のことだけを考え部下やパートナーたちのための意識がなく行動がとれないボスのことだ[9]。
是非、[9]の記事にもあるイクボス度/ダメボス度チェックも試して欲しい。
そして、現在イクボスの方は周りにイクボスを増やして欲しいし、これからマネージメント層になる方はイクボスを目指して欲しい。
イクボスを増やすためには、人事評価制度の改革も重要だ。
人事部門の方には、部下のWLB(ワークライフバランス)に考慮しつつ成果を上げているイクボスの評価が高くなり、これからイクボスを目指す若い社員のモチベーションが上がるような人事評価制度を構築して欲しい。
そして、周りにイクボスが増えてきた頃、社会は少しずつ変わっていくことになるだろう。それが会社にとっても、社会にとっても、もちろん自分たちの子どもたちにとってもいい社会だと思う。
みなさんも、そういう社会を目指しませんか!

[1]http://ando-papa.seesaa.net/article/391497439.html
[2]http://ando-papa.seesaa.net/article/391414500.html 
[3]http://www.weblio.jp/content/イクボス
[4]http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/08.pdf
[5]http://www.lifenet-seimei.co.jp/newsrelease/2013/4940.html#anchor1
[6]http://www.nli-research.co.jp/report/letter/2012/letter120521.pdf
[7]http://www.huffingtonpost.jp/2013/06/25/white_paper_measures_for_declining_birthrate_n_3499744.html
[8]http://www.jpc-net.jp/annual_trend/annual_trend2013_3.pdf
[9]http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=2102&page=4