第3回 みんなが生きやすい社会へ!

豊かな日本が幸せじゃない?

日本は安全で豊かな国だ。内戦で国が混沌としている状況でもなければ、飢餓やかんばつで多くの子どもが飢えに苦しむ状況でもない。そんなの常識だろ、と多くの人が思うかもしれない。
では、その豊かな国、日本は幸せな国だと感じている人はどの程度いるだろう。
国連の「幸せな国ランキング」では、1位がデンマーク、2位以下はノルウェー、スイスと続く。アメリカは17位。アジアの中では、シンガポールがトップで30位、タイや韓国、台湾に続き日本は43位である[1]。
名目GDPでは世界3位[2][3]と豊かなはずの日本が、決して幸せな国上位とならないのはどうしてだろうか。

子どもの貧困率が示すもの

子どもの相対的貧困率は2009年に15.7%、7人に1人以上。子どもがいる現役世帯の中で、大人1人の世帯では50.8%と半数を超える[4]。

貧困率15.7%はOECD30か国中12番目に高く(貧困で)、50.8%は最も高い(貧困だ)。

この原因の一つには、日本では欧米諸国と比較して税や社会保障による再分配効果が小さいことが考えられる[5]。要するに、所得などで一旦ついた格差が、税や社会保障によってなかなか是正されないということだ。

だからこそ、親たちはみんな子どもをいわゆる「いい(賃金が高く安定した)就職先」に入れようと必死になるのだろう。だけど、それで本当にみんな幸せになれるのだろうか?そして、一度安定した生活を手に入れれば一生それは保証されるのだろうか?


壁は思ったよりも低い

 貧困と聞いて「自分には関係ないよ」と思った方も多いかと思う。仕事もまずまず順調だし、家庭も細かいトラブルはあるとはいえ概ね何とかなっている。まあ、すぐには自分には関係ないと。

本当だろうか。

3年以内にリストラにあう可能性は。

会社が買収もしくは移転により職場を失うリスクは。

妻(夫)から突然離婚を言い渡されひとり親になる可能性は。

親の介護が急に必要になり、子育てと介護を同時に行うことは。

“全てない”と言いきれる人はどのくらいいるのだろうか。

ちなみに、

1年間の離職者数は673万人(H24)[6]。

離婚件数は23万件で結婚件数の3割以上(H25)[7]。

介護が必要な人は574万人(H25)[8]。

職場を失うこと、ひとり親になること、そして介護を担う可能性はそれほど低くない。今は自分とは関係のない壁の向こう側の世界と思っているかもしれないが、その壁は以外と低い。いや、壁そのものがないのかもしれない。


困っているひとも多い

 世の中には目に見えない障がいを抱えている人も多くいる[9][10]。「困っているひと」が沢山いる[11]。そして、誰もがいつ、その困っている側にまわるかも分からない。
難病と認定されている、特定疾患医療受給者証の交付件数は81万653件(H24年度)[12]。
障がい者数は741万人(身体366.3万人、知的54.7万人、精神320.1万人)で国民のおよそ6%[13]。
1000人に6人は難病で、100人に6人は障がいを持つ。そして、7人に1人の子どもが貧困である。
これが現実だ。
難病も障がいも、その人に責任があるわけではない。ある確率で誰かが背負っている。子どもの貧困もその子個人の問題ではない。どれも社会全体で解決していくべき課題だ。

みんなが生きやすい社会へ!

 子どもたちが将来困らないようにと一生懸命塾に通わせ、高校・大学と進ませ、安定した就職先(あればだが)に入れることがゴールだろうか?
正社員として就職しても3年で3割以上がやめてしまうし[14]、勤め続けたとしても組織内でうまくやっていけず精神的な病になる可能性もある。
今は子どもや孫のサポートが充分出来ているかもしれないが、今後もサポートし続けられるとは限らない。ひ孫やその子どもとなれば尚更で、自分の手は全く届かない状況になる。

想像してみて欲しい。
もし、子どもや孫が障がいを持ったり、難病をかかえたり、病気やケガで困ったり、トラブルで学校や会社、社会に居場所を失ったとき、どういう世の中であって欲しいかを。
すべては「自己責任」という名のもとに、自分の力のみで解決すべき、という社会が望ましいだろうか?

どういう世の中がいいですか?

自分の力で解決できることは自分で解決する方がいいのは当然だ。でも、中には自分だけではどうにも出来ないこともある。

だからこそ、子どもや孫が障がいを持ったり、難病を抱えたり、社会的な弱者になって本当に困った時に「誰かに助けを求められる」方がいいと思う。

もし、万が一、声を上げられない人がいたら、そういう人たちにも救いの手が差し伸べられるような「あたたかい」「溜めのある」社会がいいと思う。

困っているひとをサポートできる社会が「真に豊かな社会」だと思う。

 

あなたはどういう社会がいいと思いますか? 

どういう世の中を目指しますか?

[1]http://www.huffingtonpost.jp/2013/09/13/world-happiness-report-happiest-countries_n_3917991.html

[2] http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpd.html

[3] http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpdpc.html

[4] http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h25honpen/b1_03_03.html

[5] http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je09/09b03020.html

[6] http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/13-2/kekka.html

[7] http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei13/dl/gaiyou.pdf

[8] http://www.wam.go.jp/wamappl/00youkaigo.nsf/vAllArea/201308?Open

[9] http://watashinofukushi.com

[10] http://synodos.jp/komatterus

[11] http://www.poplarbeech.com/sp_pickup/komatteruhito/

[12] http://www.nanbyou.or.jp/entry/1356#p09

[13] http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h25hakusho/gaiyou/h1_01.html

[14] http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/12.html