第1回 「イクメン」から「イキメン」へ

イクメンはもう古い!?

 イクメンという言葉が流行ったのは、厚生労働省が2010年に「イクメンプロジェクト」[1]を立ち上げたのがきっかけで、その年の流行語大賞トップテンにもなった。ちなみにその年の年間大賞は「ゲゲゲの~」である。記憶に新しい方もいると思う。

 「子育てを楽しみ、自分自身も成長する男のこと」をコンセプトにはじまり、一定の成果をあげてきた取り組みだが、まだまだ世の中は「にわかイクメン*1」や「いいとこ取り育児*2」の男性も多く、同性や異性からも良く思われないことも少なくないようだ。

  夫は自分なりに色々と家事、育児をやっているつもりでいても、妻からの期待とかみあわないことも多く[2]、「もうちょっとやってよ!」と思っている妻と 「オレ、けっこう頑張っているよな。でも、評価低いよな〜!」と思っている夫との溝がなかなか埋まらない現状もある(笑)。

消えていくイクメン?

 イクメンという言葉が流行ったのは、ひとことでいうと「めずらしいから」である。

 育児・家事をする妻は「イクウィメン」とも「カジジョ」とも言われず、夫だけが「イクメン」、「カジダン」と持ち上げられたのは、ただ単に数が少なく希少価値があったからだ。

 みんながやるようになり、それが普通になれば消えていく運命なのだ。

家事/育児は参加するもの? 

 夫の側にも言い分はあるかもしれないが、ちょっと冷静に考えてみて欲しい。家族の一員である父親が家事や育児を分担するのは「めずらしいこと」や「褒められること」だろうか?答えは「NO」だ。

  「オレは働いている」とか「誰のおかげで飯が食えると思ってるんだ!」といくら叫んでみても、仕事と家事を合わせた労働時間は女性の方が多く(厚労省統計 [3])、男性の家事・育児時間は「OECD諸国中最低ランク[4]」なのだ。そして、ご飯を食べられるのは間違いなく作ってくれる人がいるお陰(冗談で なく)だ。
 

 そして、家事・育児を全てアウトソース(外部に依頼)するためには、1,000万円以上かかるという調査結果も出ており[5]、男性だからとか、父親だからとかいうのは家事・育児を免除される理由にならないのだ。

 だからこそ、「チームの一員としての役割を担って欲しい!」

  生活に必要な金銭を稼ぐだけでなく(これはこれで十分大変なのは承知の上で)、家族みんなで協力して家事や育児を行えば、チームワークも良くなるし、家の 中での存在感も上がる。もし、今まで自分の家(ホーム)にいてもアウェー感が強かったのなら、待遇改善されること請け合いだ(^o^)/。

 そして、今までワントップで家事・育児に奔走していた妻の負担は軽減され、ツートップを一緒にこなすことでコミュニケーションも改善する。家事や育児をシェア(分担)した結果、家族からの「いいね!」がもらえるのだ。

イキメンのすすめ

 今後、パパやプレパパに是非オススメしたいのは地域での活動を積極的にしていく「イキメン」としての生き方だ[6]。

 イキメンとは地域で活躍するイクメンのことを言うことが多いが、イクメンに限らず地域に居場所があり、地域での活動を楽しんでいる男性のことだと思ってもらえばいいと思う。

 地域の活動は実際やってみると分かるのだが、やればやるほど奥深い。子どもの同級生に限らず地域の子どもたちの顔と名前が一致しだすし、パパ友だけでなくママ友も増える。

 更に年配の知り合いも多くなり、その結果色々な所に知り合いが出来る。色々な年代の知り合いが地域に増えるメリットは計り知れない。だが、もともと地元で生まれ育ったわけでもなく、周りの住民との関係が築かれていない中で、どうやって地域に入っていけばいいのだろう?

子どもは地域参画へのパスポート 

 そこで、父親には心強い味方がいる。そう、子どもたちだ!

 自分だけで地域のイベントやお祭り、行事に顔を出すのはハードルが高いが、子どもを連れて、その付き添いとして参加するのなら出やすいはずだ。

 一度といわず二度、三度行事に顔を出していると、自然と子どもの友達、そのパパやママをはじめとして、地域の色々な人たちと知り合いになれるチャンスが広まる。子どもは地域参画への「パスポート」なのだ。

 そうして、父親がパパ友やママ友、地域の色々な人たちとつながることが出来ると、子どもも親以外の色々な大人たちとコミュニケーションをとる機会に恵まれる。

多様な関係性が子どもを育み、大人を孤立から救う! 

 子どもにとって親、祖父母、先生などの特定の大人以外との関わりは、いわゆる「縦」の関係や同級生などの「横」の関係に加えて「斜め」の関係が増えることになり、子どもに多様な関係性を体験させることができる。

 父親自身にとっても、家族や会社に加えて地域という「第三の足場」ができ、そこで得られた会社の枠を超えた友人は、「子どもたちを育てる」という共通の目的を持ち、同じ目線で語り合うことが出来るかけがえのないものとなる。

 少し先の話と思われるかもしれないが、60歳や65歳で定年を迎える男性にとって、リタイア後の20年を孤立しないで豊かに生きていいけるかどうかは、家族との関係に加えて、地域にどれだけ足場が育っているかに関わっていると思うのだ。

新しい「ホーム」を手に入れよう! 

 地域へのイベントに参加したいけれど、なかなか敷居が高いと思っているあなたも、ぜひ子どもと一緒に地域の行事に参加してみることをお勧めする。


 そこには新しい出会いや、友人が出来る可能性が眠るアナザーワールドが広がっているのだ。そして地域に足場が出来たら、自分の子どもだけでなく「地域の子どもたち」にも目を向けて欲しい。


 地域があなたの新しいホームとなり、新たな居場所の一つに加われば、あなたの人生(ライフ)は今よりもっと充実したものとなるだろう。そのための扉を子どもと一緒にあけてみることを心から応援している。


*1ちょっと家事・育児しただけで自分がやったことを自慢、アピールするイクメン 
*2子どもの機嫌のいいときや他人の前でのみ、美味しい所だけやる育児

[1]http://ikumenproject.jp/index.html
[2]http://family.shogakukan.co.jp/news/2011/09/000171.html
[3]http://www.stat.go.jp/data/shakai/topics/topi30.htm
[4]http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140307/k10015809061000.html
[5]http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN31723120080511
[6]http://www.nhk.or.jp/shutoken/ohayo/report/20121003.html