第2回 男女共同参画統計について 連載第2回

 第1回では、男女共同参画統計の定義や意義、国内外の動向についてお話ししました。今回は、男女共同参画統計とはどのようなものかについて、「第3次男女共同参画基本計画」を通して、もう少し詳しく見ていきます。

1.「第3次男女共同参画基本計画」(以下、第3次計画)と男女共同参画統計

 平成22年12月に閣議決定された第3次計画では、本計画を実効性あるアクション・プランとするために、各重点分野において「成果目標」と「参考指標」を示していることは、第1回でも触れました。
 「成果目標」とは、「それぞれの重点分野において掲げる具体的施策を総合的に実施することによって、政府全体で達成を目指す水準」、また「参考指標」とは、「各重点分野に関連して、男女共同参画社会の形成の状況を把握する上で重要な各種指標」とされています。
 これら「成果目標」および「参考指標」は、すべて「社会生活基本調査」(総務省)、「雇用均等基本調査」(厚生労働省)等、政府が実施している統計・調査を原典としています。「成果目標」を含む第3次計画は、「成果目標の原典」「参考指標」「参考指標の原典」とともに、内閣府男女共同参画局のウェブサイトよりダウンロードできますのでご覧ください。
 これらの数値はすべて、第1回で述べた定義のとおり「男女共同参画統計データ」といえます。
 
 では、全15分野にわたり82項目の現状数値と期限を定めた目標数値を掲げた「成果目標」について、いくつか例を挙げて具体的に見てみましょう。
 まず、性別統計データに基づくものがあります。たとえば「第3分野 男性、子どもにとっての男女共同参画」等において、「男性の育児休業取得率」は、現状1.72%(平成21年)から13%(平成32年)という成果目標が示されています。育児休業取得率を性別に算出することで、同年(平成21年)の女性の育児休業取得率85.6%と比較して格差の問題を明らかにすることができ、男性の育児休業取得率を上げる必要性が見えてきたものです。

 もう1つ例を挙げると、「第14分野 地域、防災・環境その他の分野における男女共同参画の推進」の成果目標の1つである「自治会長に占める女性の割合」については、現状4.1%(平成22年)から平成27年までに10%を目指すことになっています。これも、自治会長の数を性別によって比較することによって、問題が明らかになったものです。これらのように、男女共同参画統計の多くは、統計データを性別によって示したものです。統計を男女別に見ることで、その差から、それぞれの置かれている現状や課題が見えてくるのです。
 
 男女共同参画統計は、性別統計データに基づくものに限りません。人の集団に関する統計に限らず、男女共同参画にかかわる課題を解決する上で必要となるデータ、たとえば企業や組織、制度等に関する数値も、重要な男女共同参画統計データです。第3次計画の成果目標では、「次世代認定マーク(くるみん)取得企業数」「短時間勤務を選択できる事業所の割合」「3歳未満児のうち、保育サービスを提供している割合」「家族経営協定の締結数」「地域自立支援協議会を設置している市町村数」「市町村における配偶者暴力相談支援センターの数」等がこれにあたります。

内閣府男女共同参画局のウェブサイト外部リンク

2.世論調査・意識調査による男女共同参画の実態把握

 ところで、1で例に挙げたような客観的事実に関する統計データに対して、主観的意識(意見、知識、関心、評価、態度等)に関するものに、世論調査や意識調査として実施される調査があります。内閣府では『男女共同参画社会に関する世論調査』や『男女のライフスタイルに関する意識調査』等、多くの調査が実施されています。また、男女共同参画に関する市民の意識調査を独自に実施している自治体も多くあります。
 第3次計画の成果目標では、男女共同参画に関する用語の周知度についての数値が、『男女共同参画社会に関する世論調査』を原典としています。具体的には、「男女共同参画社会」の周知度を現状64.6%(平成21年)から100%(平成27年)、「女子差別撤廃条約」を現状35.1%(平成21年)から50%以上(平成27年)、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」を現状37.0%(平成21年)から50%以上(平成27年)へ上げることを掲げています。
 
 第3次計画は、男女共同参画社会基本法施行後10年間の反省を踏まえたものですが、世論調査・意識調査による男女共同参画統計では、施策の進捗について男女がどのように評価しているかの傾向を知ることができます。図1は、基本法の5つの基本理念に関する取り組みの進捗状況についての評価を質問したものです。5つの基本理念のいずれについても、男性の方が女性より「前進した」もしくは「どちらかといえば前進した」と回答した人の割合が高くなっています。女性の方が施策の進捗を低く評価しており、男女共同参画社会を実感していないことがうかがえます。

図1:「性別男女共同参画社会基本法の理念の実現状況についての評価(2009年)」

図、性別男女共同参画社会基本法の理念の実現状況についての評価

 世論調査・意識調査による男女共同参画統計データには、このような施策の周知度や進捗に関する評価のほか、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」といった性別に基づく固定的な役割分担についての考え方や、働き方、結婚、出産等にかかわる多様化するライフスタイルに対する意識等、さまざまなものがあります。これらを性別や年齢層別に捉えたり、経年変化や他国との比較を行って調査対象者の意識や態度等の傾向を知ることによって、統計データを課題解決に向けた有用な手がかりとして活用することができます(世論調査・意識調査を含めた男女共同参画に関する内閣府調査の結果は、内閣府のウェブサイトからダウンロードできます。

内閣府男女共同参画局のウェブサイト外部リンク

3.あらゆる分野にわたる男女共同参画統計の必要性

 先に述べたように、第3次計画の成果目標は、全15分野すべてにわたり設定されています。男女共同参画社会の形成に向けて、男女共同参画をあらゆる施策に反映させることが重要であるため、具体的な数値目標をすべての分野に設置しているのです。また、これら各分野の成果目標を達成するためにも、男女共同参画に関する社会の実態を客観的に把握する男女共同参画統計の充実が必要になります。
 
 今回の参画ゼミが発信される頃、国立女性教育会館から『男女共同参画統計データブック2012』(ぎょうせい)が、第3回の参画ゼミが発信される頃には三重県から『統計でみる三重の男女共同参画』データブックが発行されます。さまざまな分野における男女共同参画にかかわる現状や課題を把握し、それぞれの立場から男女共同参画の推進について学び、行動するための基礎資料として、ぜひご活用いただきたいと思っています。
(文責: 国立女性教育会館客員研究員  飯島 絵理)