第2回 改正育児・介護休業法について(その2)

 前回は、改正育児・介護休業法のうち「子育て期間中の働き方の見直し」に関する改正点をみてきました。
 今回は、改正法のもう一つのねらいである「父親も子育てができる働き方の実現」について、その背景や具体的な内容についてみていきましょう。

1.育児・介護休業法の改正のポイント

「父親も子育てができる働き方の実現」

 父親の育児参加の現状はどうでしょう。
 現在、勤労者世帯の半数以上が共働き世帯であり、男性も子育て等を担うことは、女性のキャリア形成支援だけでなく、男性のワーク・ライフ・バランス実現の観点からも重要です。
 育児休業制度や育児のための短時間勤務制度の利用意向をみると、3割を超える男性が「利用したい」としています。利用したい理由は『育児休業』では「子どもが小さいうちは育児が大変だから」、『短時間勤務制度』では「勤務時間が短縮できる分、子どもと一緒にいられる時間が増えるから」とする割合が最も高く、男性も積極的に育児に参加したい気持ちがあることがうかがわれます。
 しかしながら、育児休業制度を始めとする各種両立支援制度は、男女とも利用可能なものにもかかわらず、実際の男性の育児休業取得率は1.72%(2009年)と非常に低い水準にあります。
 子どものいる夫婦において、休日の夫の家事・育児時間が長ければ長いほど、第2子以降の出生割合が高くなっており、父親の育児参加は少子化解消の切り札の1つと言っても過言ではないでしょう。

図表1

そこで、今回の改正育児・介護休業法では、父親の育児休業取得を促進するため、以下の措置を新たに設けました。

1.パパ・ママ育休プラス

 父母がともに育児休業する場合、今まで「1歳に達するまで」とされていた子の年令が「1歳2ヶ月に達するまで」に延長されました。ただし、労働者1人あたりの休業可能期間は最長1年間で変更はありません。
 これにより、例えば、母親が産後休業に引き続き子が1歳になるまで育児休業を取得し、父親が1歳以降1歳2ヶ月まで休業するなど、父母で交替して休業することや、母親が出産後1歳まで、父親が母親に数ヶ月遅れて1歳2ヶ月まで休業するなど、父母で同時に休業することが可能となりました。

パパママ育休プラス

2.出産後8週間以内の休業取得の特例

 改正前は、育児休業は原則として1人の子について1回限りであり、休業を取得して一旦復職すると再度の休業はできないこととなっていました。 
 改正後は、子の出生後8週間以内に父親(産休を取得していない親)が育児休業を取得しかつ復職した場合には、その休業を取得回数にカウントしないことになりました。
 これにより、例えば、母親の産休期間中に父親が育児休業して復職し、その後また、母親が職場復帰する時期に再度休業するなど、同一の子について再度育児休業を取得することなども可能となりました。

3.専業主婦(夫)除外規定の廃止

 改正前は、労使協定を締結することにより、配偶者が専業主婦などで育児に専念できる場合、その労働者を育児休業の対象から除外することができました。
 改正後は、配偶者の状態にかかわらず、全ての労働者が育児休業を取得できることになりました。

その他

上記以外にもいくつかの改正点があります。具体的には以下の通りです。

1.介護のための短期の休暇制度の創設

 要介護状態にある家族の通院の付き添い等に対応するため、対象家族1人につき年5日、2人以上の場合は年10日の介護休暇制度が創設されました。

2.法の実効性の確保

 育児・介護休業法に規定されている労働者の権利を保障するため、育児・介護休業法に規定された各種制度の申出、取得等を理由とした不利益取扱いの禁止が明記されました。
 さらに、育児休業の取得等、育児・介護休業法に規定されている労働者の権利に関し、労使間で紛争が生じた場合、労働局長による紛争解決援助や調停委員による調停制度を利用して、紛争の解決を図ることができるようになりました。

施行日

 改正法は原則として、平成22年6月30日から施行されていますが、企業全体の労働者数が100人以下の場合、以下の制度について平成24年6月30日までの間、適用が猶予されています。

  1. 育児のための短時間勤務制度の義務化
  2. 育児のための所定外労働の制限
  3. 介護休暇

(1、2の内容については第1回をご覧ください)

 次回はいよいよ最終回ですので、仕事と育児・介護との両立支援に関する企業の取組、三重県の現状や、さらには今後に向けた望まれる働き方等について、総括的な説明をしていきたいと思います。

用語解説

  • 介護休暇の「要介護状態」とは、介護休業における要介護状態と同様、負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を要する状態をいいます。
  • 介護休暇の「対象家族」とは、介護休業における対象家族と同様、配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)、父母、子及び配偶者の父母並びに労働者が同居しかつ扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫をいいます。
  • 調停委員による調停とは、学識経験者などの専門家で構成される「両立支援調停会議」が紛争の当事者等から事情を聴いて、紛争解決に向けた「調停案」を作成し、受諾勧告を行うものです。三重労働局においては弁護士等3名の専門家を委嘱しています。

 三重労働局雇用均等室では、「三重の男性育児休業事例集」を作成しています。これは、県内の事業所において実際に育児休業を取得した男性の事例を集めたもので、各事業所の取組状況の紹介とともに、育児休業を取得した男性ご本人の生の声や直属の上司、人事担当者の声をとりまとめたものです。
 この事例集を通して、男性の育児休業取得の取組は、もはやよその会社の出来事ではなく、身近なところで実際に始まっているのだと気付いていただければと思います。
 事例集は三重労働局のホームページでもご覧いただけるほか、ご希望の方には配付もしておりますので、雇用均等室(059-226-2318)までお問い合わせください。