第1回 「男女共同参画社会はNGOが拓く」

1.ナイロビで確信したこと

 皆さん、こんにちは。私は、2012年3月2日、「フレンテみえ」でお話をさせていただき、女性も男性も三重の頭脳・トップリーダーの方々が、熱心に男女共同参画社会の形成に力をあわせておられることに感動いたしました。女性たちのエネルギッシュなこと、男女のハーモニィがすばらしいことに共感を覚え、三重の豊かな伝統文化のうえにジェンダー平等社会が構築される可能性を確信いたしました。

 私のジェンダー問題への取り組みの原点は、1985年、ナイロビで開催された第3回世界女性会議NGOフォーラムにあります。あのギラギラと太陽の照りつける真夏のナイロビ大学のキャンパスには、世界中から2万人もの人々が集い、国連女性の10年を総括し、2000年への展望を語り合っていました。その肌の色も、ことばも、着ているものも違う女性たちを繋いでいたのは、「Solidarity・連帯感」でした。私は、これに陶酔し、このエネルギーで世界を変えることができると思いました。

 ブトロス・ブトロス=ガーリ国連事務総長は、「国連女性の10年は、国連そのものを、各国政府が政策や協議事項を設定する機構から、政策や方針が草の根レベルからNGOによって生み出される機構へと根本的に変化させることに貢献した。NGOは、差別や貧困や抑圧に苦しんでいる女性たちの声に国連の注意を向けさせた」(国際女性の地位協会訳『国際連合と女性の地位向上 1945~1996』1996年、35-36頁)と述べました。

2.国際女性の地位協会のこと

 私は、女性差別撤廃条約の研究者です。研究をはじめて、まず気づいたのは、女性たちの権利を保障しているこの条約は、女性たち自身が使えるようにならなければ何にもならないということでした。ナイロビのNGOフォーラムでは、アメリカのコロンビア大学とミネソタ大学が共催で、その名も「女性差別撤廃条約」というワークショップが毎日開催されていました。そこには、スタート間もない国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)の委員や各国の政府代表が入れ替わりやってきて、NGOや研究者と熱心に議論をしていました。こうして情報交換が行われ、その情報が各国の状況を変える確かな手がかりになるのだと知りました。

 翌年アメリカへ行くと、ナイロビでワークショップをなさったコロンビア大学(当時。今はトロント大学)のレベッカ・クックさんやミネソタ大学(当時。その後、女性の地位委員会アメリカ代表などを歴任)のアルボンヌ・フレーザーさんは、ポスト・ナイロビの行動として「国際女性の権利監視協会(IWRAW)」をつくって、CEDAWのサポートをはじめていました。

 CEDAW委員とNGOを招いてレセプションをしたり、女性差別撤廃条約に関するシンポジウムを開催したり、CEDAWで審議される国の現状に関するNGOレポートを作成して委員に知らせたりしていました。世界中にニュースレターを配布し、「Women’s Rights are Human Rights.(女性の権利は人権である)」という大きなうねりをつくったのもIWRAWでした。

 IWRAWに刺激された私は、1987年、アメリカから帰国すると、女性差別撤廃条約の研究・普及団体をつくりました。それが「国際女性の地位協会」です。今年、25周年を迎えています。1998年には、国連経済社会理事会の協議資格を取得し、国連へのアプローチが可能になりました。シンポジウムの開催、CEDAWの傍聴、研究書の出版、年報『国際女性』の発行、出前講座の実施など研究活動と普及活動を続けてまいりました。北京での第4回世界女性会議やニューヨークでの国連女性2000年会議では、ワークショップもしました。国際女性の地位協会は、日本における女性差別撤廃条約の普及にいささかの貢献してきたと自負しています。

3.日本女性差別撤廃条約NGOネットワークのこと

会場の様子

 これは、2009年7月22日、ニューヨーク国連本部第1会議場で撮影したものです。この日、「日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク(JNNC)」のメンバー84人が、CEDAWでの日本政府レポート審議の傍聴に行き、自分たちの問題を直接CEDAW委員にアピールしました。条約上の権利を侵害されている女性たちが、自分たちの問題を解決するために取り組んでいるのですから、その発言には説得力があり、CEDAW委員を動かしました。

 そのJNNCは、2002年12月に結成されました。女性差別撤廃条約に関心のあるNGO・50団体のネットワークです。現在も毎月例会をして、CEDAWから日本への総括所見の実施をモニターしています。CEDAWへのアプローチとともに、国内でも国会の院内集会、政党へのアプローチ、省庁交渉などをやっています。つい昨日(2012年5月16日)も、進まない民法改正や女性差別撤廃条約選択議定書批准の要請のために、民主党男女共同参画調査会・法務部門合同会議に出かけたところです。2012年8月、国立女性教育会館のワークショップにも参加します。三重の皆さんともお会いしましょう。

 私は、「男女共同参画社会はNGOが拓く」と確信しています。