第1回 「ポジティブ・アクションの考え方と日本における女性活躍の現状」

1.ポジティブ・アクションとは

 全国平均19.0%、三重県4.1%(※1) 。
 ―――― これが、「ポジティブ・アクション」という言葉を知っている方の割合です。

 全国的にもまだ“認知されている”とはいえませんが、残念ながら、三重県は全国と比較しても認知度が低いようです。

 「ポジティブ・アクション」とは、男女雇用機会均等法第8条に基づき、「事業主が、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずること」と定義されます。言い換えれば、「個々の企業において、固定的な男女の役割分担意識や過去の経緯から、

  • 営業職に女性はほとんど配置されていない
  • 課長以上の管理職は男性が大半を占めている

等の男女労働者間の格差が生じている状況を解消して、女性の能力発揮を図るために、個々の企業が進める自主的かつ積極的な取組」となります。


(※1)三重県生活・文化部男女共同参画・NPO室「男女共同参画に関する県民意識と生活基礎調査 時系列分析結果報告書」(平成21年12月)、p.206-207


2.具体的にはどのようなことをするのか

 「ポジティブ・アクション」の取組には、主に(1)推進体制の整備、(2)女性の採用拡大、(3)女性の職域拡大、(4)女性管理職の登用拡大、(5)勤続年数の伸長(WLB制度の充実)、(6)職場環境・風土の改善、(7)人事評価制度の整備、(8)能力開発(人材育成)の8つの柱があります。

 また、(a)女性のみを対象とするまたは女性を有利に取り扱う取組と(b)男女両方を対象とする取組の2種類があります。(2)~(4)など女性のみを対象にした取組は、男女間に生じている事実上の格差が解消されるまでの間、暫定的に行われるものです。一方で、(5)~(7)の例として想定される、育児・介護休業制度の充実、個人の能力・職務等に応じた公正な人事制度の導入、男女間の固定的な役割分担意識解消のための研修などは、男女両方を対象に行われるものであり、取組を支える施策として継続的な実施が求められるものです。

図表:ポジティブ・アクションの主な取組と関係性

図ポジティブ・アクションの主な取組と関係性

(資料)各種資料より筆者作成

3.本当に女性は活躍していないのか

 以前より女性の社会進出が進んでいる、すでに格差はないという印象を持っている方も少なくないかもしれません。

 しかし、内閣府「平成24年版男女共同参画白書」によれば、日本の年齢階級別労働力率は未だに「M字カーブ(※2)」を描いており、女性の就業希望者(※3)は25~49歳を中心に342万人と推計されるなど、依然として結婚・出産・育児等により離職する女性が多く、30歳代、40歳代を中心に女性労働力が活かされていないのが実態です。

 さらに、総務省「労働力調査(平成22年)」によれば、女性雇用者の53.8%が非正規雇用者です。男性も若年層を中心に非正規雇用者の割合が拡大していますが、それでも男性の8割以上は正規雇用者ですので、男女で比較すると依然として大きな差があります。

 また、女性管理職比率も、欧米諸国では3~4割であるのに対して、部長相当職で5%前後、課長相当職で6%前後にしか過ぎません。従業員規模別でみると、いずれの役職でも、中小企業の方が大企業よりも女性管理職比率が高い傾向がみられますが、それでも欧米諸国と比較すると見劣りします。さらに、内閣府男女共同参画局が平成24年7月に公表した「全国女性の参画マップ(※4)」によれば、三重県の女性管理職比率は47都道府県で32番目と全国平均を下回っています。

 このように、女性の活躍が進んだ、男女格差がないとはいえないのが我が国の現実です。


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(※2)女性が結婚・出産・育児を機に一旦仕事を中断することで、
    20~30代にかけて一度労働力率が落ち込むことを指す。
(※3)現在就職・求職活動をしていないが就業を希望する人
(※4)内閣府HPに掲載

内閣府HP女性の活躍状況の「見える化」外部リンク

図表:役職別管理職に占める女性割合の推移

役職別管理職に占める女性割合の推移

(注)岩手県、宮城県、福島県除く。
(資料)厚生労働省「平成23年度雇用均等基本調査」


 ここでは、主に全国的なデータから女性の働く現状を整理しました。三重県の男女共同参画に関係するデータは、「統計でみる三重の男女共同参画データブック」(三重県男女共同参画センター「フレンテみえ」発行)に取りまとめられていますので参考にしてください。

 次回は、企業における取組状況と経営的な視点からみた取組の意義・効果を見ていきます。