演劇ニカケル人々

119号表紙

MNEWSvol.119では、三重県文化会館が取り組む特徴的な演劇事業を特集しました。このコーナーでは、「演劇ニカケル人々」と題して、演劇で国際交流に取り組む第七劇場の俳優で「罪と罰」に出演された小菅紘史さんと伊吹卓光さんにお話を伺いました。また、Mニュース紙面版に載せきれなかった佐直由佳子さん、蔡亘晏さんのインタビューの続きもお楽しみください!


第七劇場(日本)

Shakespeare’s Wild Sisters Group(台湾)

 

小菅紘史 第七劇場

小菅紘史

台湾公演の反応はいかがでしたか?津での公演と観客の反応に違いはありましたか?

それぞれに反応の違いはあると思います。台湾公演では字幕はあるものの、日本語での上演なので、意味が伝わりにくい分、音感と視覚的に効果の高い演技に努めました。津公演ではお客様のほとんどが日本人なので、日本語の伝達に意識を置きました。その効果の程は定かではありませんが、舞台上から見聞きするかぎりでは、どちらのお客様もとても集中して観劇される方が多かったように思います。

今回の共同プロジェクトを通して感じたことや印象に残っている所は?
台湾は「近いようで遠い国」というのが今回のプロジェクトを通して感じたことです。すぐ隣であるにもかかわらず、台湾の言葉や食や文化について、私はほとんどのことを知りませんでした。観光ガイドだけでは見知ることのできない台湾の世界を、今回関わった現地の方々は教えてくれました。同時に、同じプロジェクトに関わった台湾のみんなもまた私たちから影響を受けていると思います。人と人との密な交感を可能にする、演劇ならではの交流だと思います。

今年の「1984」にも出演されますが、意気込みは?
前年に引き続き、同じメンバーが台湾チームにも参加しています。3年という時間は、演劇的な素養を持つ者として人が変わるには充分な時間だと思います。国を越えて、舞台を生業とする若手同士がお互いを高め合うにはいい機会であり、日本と台湾の今後の交流における礎として、何かを刻んでいければと思います。

 

伊吹卓光 第七劇場

伊吹

台湾公演の反応はいかがでしたか?津での公演と観客の反応に違いはありましたか?

正直、前回の「罪と罰」で演じたラスコーリニコフという役に手応えを感じられず、三重公演の最後の最後まで混乱していて、お客さんの反応の違いまで気が回りませんでした。ただ、台湾側の「地下室の手記」が日本と台湾で受け入れられ方が違ったのは感じました。やはり違う言語での上演になると、どうしても字幕の言葉を追うことに精一杯になるのは仕方がないことだと思います。ただ生身の人間が実際に目の前にいること、やっていることを感じてもらえたら俳優としては嬉しいです。

今回の共同プロジェクトを通して感じたことや印象に残っている所は?
僕は特に祖父が台湾人だったこともあり、元々、並々ならぬ愛着が台湾に対してありました。実際に向こうに滞在している間も温かい人たちとの交流でその愛着はますます深くなりました。そのなかでも、現地の人に何度か先住民と間違えられたのが印象的でした(笑)。「おまえはいつ山からおりてきたんだ?」と聞かれたときはなんか嬉しいようなこそばゆい気持ちになりました。

今年の「1984」にも出演されますが、意気込みは?
初めて「1984」を読んだきっかけは自分の生まれた年と一緒だったからという単純なものでした。今また読み返してみて、初めて読んだときと印象がまるっきり違いました。心に響く凄まじい爆発音で壁をぶち壊せたらいいなと思います。

 

佐直由佳子 第七劇場

佐直さん

1年目の公演、台湾制作「地下室の手記」で、唯一日本人俳優として参加され台湾に長期間滞在されましたが、実際に参加されて面白かったことや驚いたことは何ですか?

参加してみてわかったことそうですね、日本の稽古現場では、稽古着に着替えて稽古に参加、ということが多いのですが、台湾では私服で来てそのまま稽古に参加します。共演した現地女優さんたちはおしゃれで、ファッショナブルな現場でした。すんなりと受け入れてもらって、リラックスして臨めたので、驚いたことというのはそれほどないのですが、稽古を急に中止して、みんなでご飯を食べに行くことがあって、そのフレキシブルさが面白かったです。

昨年は中国語の台詞にも挑戦されましたが、どのように稽古されましたか?現地の俳優・スタッフとのコミュニケーションはどのようにとられましたか?
演出の王さんは中国語で指示を出されます。稽古では、日本への留学経験がある演出助手の琳さんがついてくれていて、王さんの指示の通訳をしてくれていました。プロデューサーの新田さんも通訳をしてくれましたし、困ることはありませんでした。琳さんや新田さんがいないときでも、現地俳優の皆さんが、英語やボディランゲージや知っている日本語(!)で、なんとか私に伝えようと大変協力的&好意的でありがたかったです。私自身は、大学のときに中国語を専攻していたので(真面目な学生ではなかったので、ほとんど身についていませんでしたが)、中国語の台詞に苦手意識はありませんでした。稽古や滞在中に言葉の壁を感じることは、予想以上にまったくなく、とてもいいメンバーに囲まれ、稽古が楽しかったです。

佐直さんから見たShakespeare’s Wild Sisters Groupはどのような劇団ですか?第七劇場との違いは?
Shakespeare’s Wild Sisters Groupには違う演出家さんもいらっしゃるのですが、私が知っている王さんの作品に限って言いますね。王さんの作品は、出演した「地下室の手記」の他に、現地で「リチャード三世」、日本で「Zodiac(ゾディアック)」を観ました。共通して、おもしろいと思うものはなんでも取り入れるような自由度の高い作品だと思います。王さんは割と遊び心を大事にしている気がしますし、対して鳴海さんは美学を大事にしている気がします。もちろん、王さんの作品に出てくる美学や、鳴海さんの作品に出てくる遊び心も好きだし、どちらも魅力的だと思います。

台湾公演の反応はいかがでしたか?津での公演と観客の反応に違いはありましたか?
私が出演した「地下室の手記」では、中国語がわかる人にはおもしろいジョークや、コメディタッチのシーンもあったので、台湾公演ではそういったところで多くの笑いが起きていました。クスっとなるようなシーンでも、日本の観客の皆さんは上品で控えめな笑いが多いので、台湾チームのメンバーは最初は少し不安になったところもあったようですが、文化の違いを説明したら日本の観客も楽しんでくれていることがわかって安心していました。どちらの公演でもとても温かい拍手をいただけて、嬉しかったです。

今回の共同プロジェクトを通して感じたことや印象に残っている所は?
台湾での稽古中は、琳さんの家に滞在させてもらっていましたが、その間、琳さんと同居中のご友人が、私がしゃべる中国語のセリフの発音練習に付き合ってくれるなど、稽古の外でも国際交流が続いていました。
台湾では公演初日の本番の直前に、公演の成功を祈って、俳優スタッフ関係者一同が劇場に集まり、儀式を行う慣習があります。こういった文化の違いなども、一緒にやっていく中で、知り、受け入れ、そして自分の中にも馴染んで行く感覚があります。
国際交流に限りませんが、お互いのことを知るとますます相手を身近に感じて好きになりますし、一緒にご飯を食べたり寝泊まりしたりする時間も含め、交流する時間をたくさん持てたことはとても恵まれているなと感じました。

今年の「1984」にも出演されますが、意気込みは?
どんな作品になるのか、私自身とても楽しみにしています!台湾チームの俳優たちも本当に魅力的なメンバーばかりですし、面白くならないわけがない!と思ってます。いつもとは少し違う第七劇場が観られる滅多にないチャンスなので、ぜひ多くのお客様にも観ていただきたいです!

 

蔡亘晏(Hana TSAI) Shakespeare’s Wild Sisters Group

サイハナさん

昨年は稽古のため、三重に滞在したHanaさん。第七劇場の本拠地、津市美里町で過ごした生活はいかがでしたか?
台湾は小さい島で、生活のペースは東京のようにとっても早い。だから、毎回三重に来るたびに、自分の中にあるプレッシャーが解放されるようで、身も心もとっても心地よかったです。第七劇場のみんなは、とても友好的で一つの大家族のよう。稽古が終わったら、みんなでスーパーに買い物に行って、ご飯を作ったり、一緒に好きな本や映画をシェアしたり、ふざけあったり笑いが絶えない毎日で、本当にホスピタリティーを感じました。

コミュニケーションはどうやって?
日本での2回目の稽古は、通訳を同行せずに一人で来日しましたが、その時は下手な英語でコミュニケーションをとっていました。いつもグーグル翻訳が私のパートナーでした(笑)。でも通じない時は、ボディランゲージ。演劇が大好きなみんなは、理解力も想像力もとっても豊富。だから、コミュニケーションはそれほど困難ではなかったです。長期滞在を通して、日本の役者と一緒にいる時間もふえて、自然とお互いにお互いの言葉を覚えてワイワイとおしゃべりをしたり。お寿司を食べたときは、私は自然と「おいしそうー」って言葉が出てきました(笑)。

滞在中に日本の文化に触れる機会はありましたか?
滞在中に印象に残っていることといえば、ちょうど私が滞在していた時にお祭り(津まつり)を見に行きました。「よさこい」を初めて見て、各チームの生命力に満ちた演出、日本という場所で創られる創意や表現に心が震え、見ているうちに自然に涙があふれてきました。これは本当に忘れられない経験になりました。また、滞在中には三重県文化会館で上演された演劇も鑑賞しました。(KUDAN Project「くだんの件」)言葉はわからないけれど、役者の声や身体表現がすごく面白くて大声で笑ってしまいました。

台湾公演と津公演で観客の反応に違いはありましたか?
日本のお客さんは上演時間より前にやってきて、静かに座ってパンフレットを読んでいますよね。台湾のお客様は遅れてくるのは当たり前。そこはもっとよくなればよいなって思います(笑)。でも観客の反応は日本人は比較的に保守的、台湾人は笑ったり、感情を遠慮せずに出したりしますね。舞台で演技していてもその感じは伝わってきて二国の異なった風景を舞台から感じていました。面白いですよね。

今年の「1984」にも出演されますが、意気込みは?
今年は2年目です。昨年は日本と台湾の劇団に1人ずつもう一方の役者が加わる形でしたが、今年は台湾と日本の役者が1つのお芝居の中に出演します。言葉はどうなるの?2つの異なった文化がまじりあうことで、どんな火花が生まれるのか。興奮と期待でいっぱいです。

三重で静かに流れる時間を感じ、軽やかに呼吸をし、台湾にはない乾燥した冬の空気を感じ、第七劇場のみんなと一緒に作品を完成させるために力を注ぎ一歩一歩、歩んだ時間、そこでの生活を経験できたことは、本当に幸せな日々でした。

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