第1回 不妊原因の約半分は男性にあり!?
目次
- 日本は実は不妊大国!?
- 不妊原因の48%は男性にあり!?
- 男性の精子の基礎知識
- 子どもを授かるために男性が日常生活で気をつけるべき7ヶ条
1.日本は実は不妊大国!?
日本では「少子化」が一つの社会的問題として扱われますが、別に「産みたい人がいない」わけではありません。実は子どもを授かりたくても授かれない、つまり「不妊症」で悩む人は多くいます。不妊症の方は「高度生殖医療」と呼ばれる体外受精などを活用しますが、日本は世界で最もこの「体外受精」が行われている国であることを、皆さんは知っていたでしょうか?
国立社会保障・人口問題研究所が平成27年に実施した「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」という調査があります。ここでは以下のような数字が発表されました。
- 不妊の心配をしたことがある夫婦の割合:35%
- 不妊検査や治療を受けたことがある夫婦の割合:18.2%
つまりは、3組に1組の夫婦は子どもがなかなかできずに心配したことがあり、5.5組に1組は不妊検査や不妊治療の経験があるということです。
また、日本産婦人科学会が公表しているデータでは、2016年には年間約45万件もの体外受精の治療が行われており、これは世界で最も多い件数となっています。そして、平成が始まった1989年に「体外受精」によって生まれた子どもは449人でしたが、2016年には5.4万人を超えました。

2.不妊原因の48%は男性にあり!?
さて、日本が世界一の不妊大国であることはご説明しましたが、なかなか妊娠しない背景として「やはり、女性の結婚・出産が遅くなっているもんなぁ」なんて「女性側のカラダの問題」と思った方もいるのではないでしょうか?今回はそんなあなたに「それは違いますよ」という話をしたいと思います。
確かに、不妊症が増えている原因の一つに「晩婚化・晩産化」は挙げられます。妊娠には女性のカラダの仕組みとして「適齢期」は存在しますし、先に挙げた「晩婚化・晩産化」は子どもを授かりにくくなる原因の一つではあります。しかし、不妊原因は女性だけに存在しているというのは大間違いです。
実は「不妊治療に取り組む夫婦のうち48%は男性側に原因がある」というデータをWHOが発表しています。

「男性側の原因」とは何か。それは多くの場合は「精子」に問題があります。
3.男性の精子の健康とは
男性の精子の問題とはどのようなものを指すのでしょうか?精子の健康状態を測るためには「精液検査」を行います。精液検査でチェックする検査項目は以下のようなものです。(実際にはその他の項目も存在します)

そして、上記のような項目の結果から、「男性不妊」と呼ばれる以下のような症状に当てはまるかどうかを判断します。軽度の場合は私生活改善による精子所見の回復を目指し、重度の場合は泌尿器科や男性不妊外来で詳しく検査をして治療に進みます。

4.子どもを授かるために男性が日常生活で気をつけるべき7ヶ条
不妊原因の約半分が男性にあるということですから、皆さんの想像以上に多くの男性が上記のような症状で悩んでいるということです。となると、精子の健康に関して日常生活で何を意識して過ごせば健康でいられるのか、ということが気になりますよね。
最後に男性が日常生活で気をつけるべき「精子の健康のための7ヶ条」をご説明したいと思います。
1.禁煙
たばこは精子の健康にとって良く無いと言われています。過去に様々な研究が行われていますが、たばこによる血流の悪化や酸化ストレスによるDNA損傷など、結果として喫煙は精子の全ての項目に悪影響を与えるとされています。妊活を意識し始めたら、禁煙にチャレンジしていただいた方が良いでしょう。
2.長風呂やサウナを控える
実は、精子が作られる精巣は「熱に弱い」という特徴があり、精子を作る機能つまり「造精機能」は熱によって低下します。長風呂やサウナが好きな男性は多いですが、妊活期間中だけでも控えましょう。
3.ブリーフやボクサーパンツではなくトランクスを着用する
先ほどの「熱に弱い」と同じ理由ですが、ブリーフやボクサーパンツは肌に密着するため熱がこもりやすくなります。トランクスの方が通気性が良いので妊活中の「精子の健康」にとってはトランクスをお勧めします。また、同様の理由で肌にピタッと密着するようなズボンを履くのもあまり良くありません。
4.膝の上でパソコン操作をしないようにする
お仕事で出張がある方なんかは新幹線の席で、膝の上にPCをおいて作業をすることはありませんか?実はあの行為も股間部に熱が伝わります。とにかく、温めてはいけません。
5.長時間に及ぶ自転車通勤は控える
長時間の自転車は、サドルによって股間部が圧迫されるため血流が悪くなる可能性があるため、精子の健康にとっては良くないと言われています。
6.飲み薬のタイプの育毛剤を控える
フィナステリドという薬剤は注意です。プロペシアはもともと前立腺肥大症の薬として開発され現在は男性型脱毛症用薬として広く使われています。これは前立腺を抑制するため、前立腺で作られる精液も減少すると言われています。
7.禁欲しない
実は、禁欲は良くありません。妊活に取り組む際に、夫婦の営みの前は禁欲した方がいいと考えている方もいますが、実は禁欲は精子の健康に悪影響を与えます。これは、精巣内にある古い精子からは「活性酸素」というものが産生され、それによって精子や精子を作る細胞がダメージを受け、結果として精子を作る力が低下していくからです。また、精子の先についているDNAが断片化(二重らせん構造が引きちぎれること)し、精子の質の低下をもたらしてしまいます。
以上が、「精子の健康のための7ヶ条」です。
まとめ
- 日本は不妊大国である
- 不妊原因の約半分は男性にある
- 精子の健康には様々な症状がある
- 7ヶ条をしっかり守って、健康な精子を目指しましょう
第2回では、「男性に知っておくべき妊活のリアル」をお伝えします。夫婦で進める妊活、実は男性が知らないことがたくさんあります。詳しく解説していきますので、次回もどうぞご一読ください。