第1回 誰もが平等な社会 ジェンダー平等を目指して
1.UN Womenについて
ジェンダー平等は、基本的な人権であるだけでなく、その実現は社会と経済に大きな影響を与えます。女性をエンパワーメントすることは経済発展を促進し、生産性と成長に拍車をかけます。しかし、ジェンダーの不平等は社会のあらゆるところに深く根付いています。女性はディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)へのアクセスが十分でなく、性別による職域分離とジェンダーに基づく賃金格差に直面しています。また、基礎教育や保健医療へのアクセスを拒否される傾向にあります。世界のいたるところで、女性は暴力と差別を受けています。さらに、女性は政治的および経済的意思決定のプロセスに十分に参画できていません。
国連は長年、ジェンダー平等を世界的に促進するための活動において、資金調達や、国連活動の全体的な統括が十分でないなど、深刻な課題に直面していました。このような背景から、2010年7月の国連総会決議により、UN Women(United Nations Entity for Gender Equality and the Empowerment of Women、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関)が設立されました。これにより、国連加盟国はジェンダー平等と女性のエンパワーメントに関する組織の目標達成へ向けて歴史的な一歩を踏み出しました。
UN Womenは、持続可能な開発目標(SDGs)のビジョンを女性と女児にとって現実のものとするために世界全域で活動し、以下の5つの活動領域に優先的な取り組みを行って、あらゆる分野における女性の平等な参画を支援します。
- 女性のリーダーシップの向上と参画の増加
- 女性に対する暴力の撤廃
- 平和と安全保障のあらゆる局面における女性の関与
- 女性の経済的エンパワーメントの推進
- 国家の開発計画と予算におけるジェンダー平等の反映
2.HeForSheとは
HeForSheは、UN Womenによる、ジェンダー平等のための連帯運動です。世界中のすべての人がジェンダー平等の実現のために参加し、変革の主体となれるよう、体系的なアプローチとそのためのプラットフォームを提供しています。2014年9月20日に潘基文国連事務総長(当時)とエマ・ワトソンUN Women親善大使により発表されて以来、各国首脳やCEO、世界的な有名人、そしてあらゆる階層の人々を含む世界中のたくさんの賛同者がHeForSheに署名しました。2018年11月現在、世界で196万人以上の署名がされ、日本では7千人以上が署名しています。
HeForSheは個人の賛同者たちによる変革を促す一方でIMPACT 10x10x10 (インパクト・テン・バイ・テン・バイ・テン)というプログラムを立ち上げました。これは各国首脳10名、世界的企業のCEO10名、そして大学学長10名をインパクト・チャンピオンとして選び、トップからジェンダー平等に向けて変革を促すことを目指して2015年に立ち上げられたプログラムです。これら10の政府、企業、大学の指導者は、高い倫理感、公的なサービスの卓越性、世界規模の活動、変革推進のために自らの影響力を行使する意志などが評価されて選出されています。インパクト・チャンピオンは、国政・企業・大学レベルにおいて、ジェンダー平等を各組織の優先課題とし、大胆かつ革新的な3つのコミットメントを策定し、組織の内外で真の変革に取り組んでいます。
日本からは安倍晋三内閣総理大臣と名古屋大学の松尾清一総長がインパクト・チャンピオンとして選出されました。以下がインパクト・チャンピオンとしてそれぞれが取り組んでいる3つの核となる課題です。
[安倍晋三内閣総理大臣]
- UN Womenとのパートナーシップの強化
- 日本における女性のリーダーシップと雇用機会の拡大
- 海外の紛争下における女性のエンパワーメントと性暴力の撤廃
[名古屋大学]
- 名古屋発!男女共同参画推進のためのセンター(拠点)を創設します
- 2020年までに女性リーダー(女性管理職)20%への増加をめざします
- 男女共同参画推進のための産学官連携を推進します
ジェンダー平等への取り組みは、かつては女性だけによる女性のための取り組みとして認識されていました。しかし、近年、ジェンダー平等は女性の問題というだけでなく、人権の問題として捉えられ始めています。私たちの力強い声が届けば、世界を変えることができます。変革の時は今です。ジェンダー平等な世界をつくるために団結し、共に行動しましょう。HeForSheはジェンダー平等についてただ議論するだけではありません。支持者が団結し、言葉を広め、実践的な行動によって世界を変えるよう動員することで、ジェンダー平等を実現するのです。
【参考情報】