第2回 少女たちに必要な心の拠り所とは

 居場所のない女の子たちは、息苦しい場所から逃げたい一心で家を出てきてしまうこともあるんだということを第1回目でお話させてもらいました。

 神奈川県座間市で9人の遺体が見つかった事件がありました。皆さんの記憶にも新しいと思います。この事件はTwitterに自殺願望のある女の子たちの書き込み、弱っている気持ちにつけ込まれて、狙われて誘い出されてしまいました。とても悲しい事件です。容疑者が言っているように「実際に死にたいと思っている人はいなかった。身の上話を聞いてから隙をついた。話し相手が欲しいのだと感じた」と、供述しているようです。私はその通りだと思っています。

 Twitterで「今夜泊めてくれませんか」と、少女たちが画面につぶやくと、その書き込みを読んだ男性からたくさんの連絡がくるサイトがあるのを知っていますか?「神待ちサイト」などと呼ばれています。今でも検索するといくつか出てきますので過去のものではないようです。神待ちサイトとは「家出少女たちがサポートしてくれる男性を待ち望んでいる」と、返事する側に都合良く解釈されています。手を差し伸べているかのようなニュアンスですが、違います。実際は下心ある男性が困っている少女の弱みに付け込んでいるだけなのです。「泊まらせるんだからカラダと引き換えね」と、性行為をすることが暗黙のルールとなっていると女の子からは聞いてます。

警視庁資料

 少女たちは学費や生活費のために「今すぐにできる」や「高収入」などのキーワードでバイトを探すとJKビジネスと言われる、女子高生をコンセプトにした性風俗の仕事がたくさん出てきます。裏ではオプションといって過激な性的サービスが行われていて、性被害などを受けても相談出来ずに泣き寝入りする少女たちもいます。性暴力は性別を問わず起こりますが、女性の被害者が圧倒的多数です。人身売買の対象となったり、暴力に遭うなど、“女性”であることがリスクになっているとも言えます。

 SNSや夜の街で知り合う人たちは、彼女たちが居場所がなくて、寂しさを抱えていることを知りながら、優しい言葉で誘います。彼女たちに誘いの危険性や夜の世界の真実を知らせる人はいません。それ故に見ず知らずの人の家に泊まったり、気軽で割のいいバイトと思い込んで、JKビジネスの世界に踏み込んでしまうことも多いのです。
 こんなひどくつらい目にあうかもしれないのになぜ公的な支援に頼れないのか、ということが問題点なのです。

 相談につながらないのはなぜでしょうか。一緒に考えてみてほしいです。私たちは女の子たちに毎回、聞いてます。こんな言葉が出てきました。

  • 相談窓口を知らない。
  • 被害にあっているという自覚がない。
  • 大切にされた経験が無いために人間不信。信頼できる大人との繋がりがない。
  • 「嫌だ」と断ることができない自分が悪い、自分に価値はない、どうなってもいいと自暴自棄になってしまう。
  • 親を悪者にしたくない、家族に迷惑を掛けたくない。自分だけが我慢すればいい。

 このように女の子たちは孤独だし、自己肯定感が低いため、自分なんかどうなってもいいという心理状態に置かれています。相談に行かないのではなく、『行けない』のです。

問題の背景要因

 BONDプロジェクトの役割は「動く相談窓口」だと思っているので、私たちから出会いを求めて、相談に行けない彼女たちと一緒に考えて、動くというアウトリーチ活動をしています。
 SNSやJKビジネスで知り合った人たちに嫌なことを求められても、その人たちに必要とされていると感じてしまうことで、自己肯定感の乏しい彼女たちの心の拠り所や居場所になってしまうこともあり、なかなか抜け出しにくい状況になっています。被害に遭う前に、犯罪に巻き込まれる前に、彼女たちを守るためにも私たち大人が動かなければいけません。
手を差し伸べ、立ち止まり、少女たちと一緒に考えながら信頼関係を作っていける大人が必要なのです。

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