第1回 そもそも女性ホルモンとは?

 ホルモンは体内に100種類以上もあり、それらは非常に微量で、私たちの体のいろいろな機能がきちんと働くように作用しています。女性ホルモンはそのうちのひとつで、女性らしい容姿を作り、妊娠や出産など女性特有の機能を整える作用を担っており、女性にとって無くてはならないホルモンです。
 女性ホルモンは主に卵巣で作られ、その量は一生にわずかスプーン一杯程度にしかなりませんが、女性の体に大きな影響を与えます。また、一生を通じて同じ量が出続けるのではなく、成長とともに増え、20歳代後半をピークに減少していきます(図1)。
 そして「女性ホルモン」と一言で言ってきましたが、実は女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2つのホルモンがあり、それぞれ異なる役割を持っています。この2つのホルモンが約28日の周期で増減を繰り返すことで月経が起こります。この後エストロゲンとプロゲステロンについて詳しくお話ししていきましょう。

性ホルモンの年齢変化(図1)

性ホルモンの年齢変化

 エストロゲンには妊娠の準備をする役割があります。具体的には卵巣内の卵胞(卵子を入れている袋)を成熟させ、排卵(卵子が卵巣から飛び出すこと)や受精、妊娠に備えます。受精が起こるとエストロゲンは子宮に作用して、受精卵が着床しやすいように子宮内膜※1をフワフワに厚くしていきます。こういった様々な働きで女性は妊娠することができます。また、血の巡りを良くして肌に潤いと弾力をあたえることにより、「若返りホルモン」といわれています。ほかにも骨密度を維持する働きや、自律神経のバランスを整え、気持ちを安定させるなどうれしい作用があります。
※1 子宮内膜とはホルモンの影響で子宮の内側で厚くなる膜で、妊娠しなかった場合月経ではがれ血液と共に排出されます。
  
 プロゲステロンは妊娠の成立や維持に不可欠なホルモンといわれています。排卵直後から受精に備えて妊娠しやすい状態を作り、エストロゲンで厚くなった子宮内膜※1を維持し流産をふせぎます。一方で皮脂量を増加させ、大人のニキビの原因となったり、メラニン色素を産生する細胞を刺激し、シミや肝斑を増やしたりします。さらには精神的な部分にも影響をおよぼし、イライラしたり、ふさぎ込んだりといった感情の起伏が激しくなる原因にもなり「ぶすホルモン」といわれるゆえんでもあります。

月経周期における女性ホルモンの変動と基礎体温(図2)

月経周期における女性ホルモンの変動と基礎体温

 一般的に28日周期で月経周期は繰り返されます。一回の周期は「月経期」「卵胞期」
「排卵期」「黄体期」の4つに分かれ(図2)、この周期に連動して基礎体温(身体を動かす前の最も安静時の体温)も変動します。月経終了から排卵前までを卵胞期(基礎体温は低温)といい、この時期は主にエストロゲンの分泌が多く、その後エストロゲンの分泌が減少しプロゲステロンの分泌が増加しはじめると排卵がおきます。その後もプロゲステロンの分泌は続き(基礎体温は高温)黄体期となります。黄体期は10日間から14日間ほど続き、その後妊娠していない場合は2つのホルモンは急速に減少し月経をむかえ基礎体温も低下します。もし妊娠が成立した場合にはプロゲステロンの分泌が続き基礎体温の高温期が続きます。みなさん、女性ホルモンの役割を少しは理解していただけたでしょうか?
 ところで、昔の女性と現代の女性とでは女性ホルモンが体に及ぼす影響にかなり差がみられます。現代では結婚年齢が高くなり、一生の出産回数も減り、中には結婚しても妊娠を希望しない女性もいらっしゃいます。早婚、多産であった戦前の女性が一生のうちに経験する推定月経回数はおおむね50回程度といわれていますが、現代の女性では450回にもなります。月経回数が多いということはエストロゲンにさらされる機会が増えるということです。それによりどんな影響が出てくるのでしょうか?
 次回は女性ホルモンの功罪についてお話ししましょう。

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