第2回 ネットワーク構築やメンター、ロールモデルの必要性

 メンターやロールモデルの意味をご存知だろうか。メンターとは、「知識や経験が豊かでアドバイスしてくれたり、チャンスを提供してくれる人、自発性を引きだしてくれる人」で自分(メンティ)と1:1の関係がある。一方、ロールモデルは、「人生を刺激し、行動や考え方の目標とする人」で自分とロールモデルに具体的な関係は存在しない。第2回は、女性のメンターやロールモデルの存在、女性のネットワーク構築は女性がいきいきと働き続けるための強みになるか検討したい。

1.メンター、ロールモデルの必要性

 2003年女性と仕事研究所調査結果(対象:企業の女性社員367人)によれば、6割以上の女性が社内にロールモデルがいないと回答している。そして、自社への満足度が低い女性の63.6%が「社内にロールモデルはいない」と回答している。10年後はどうなったのか。2013年11月公益社団法人経済同友会調査結果(対象:企業N=200)によれば、女性の登用・活用促進の重要課題1位が、女性のロールモデルが少ない(51.0%)と回答している。つまり、10年たっても社内のロールモデルが増えていないのである。ロールモデルの必要性は、データで理解できた。それでは、ロールモデルを増やすにはどうしたらいいか。第1回で報告したように、日本の女性管理職者数は極めて少ないが、現在の女性リーダーたちがメンターとなり、次世代の女性リーダーを育成することが必要である。それはなぜか。女性は、結婚、出産のライフイベントがある。多様な働き方を理解し部下をマネジメントする、女性としての視点が必要である。現在活躍している女性リーダーは、男性メンターから男性社会のルールについてアドバイスをしてもらったり、チャンスを提供してもらった人も多い。女性の視点、男性の視点を兼ね備えた優秀なメンターとして次世代女性リーダー育成にぜひ貢献していただきたい。参考までに「メンター度チェックシート」を掲載する。

メンター度チェック表

 現在の女性リーダーは次世代女性リーダー育成を通して、自分自身がロールモデルとして成長することもできる。しかし、女性の社員が少ない会社で社内のロールモデルをすぐに増やすことは難しい。そこで、社外の女性のネットワーク構築が必要になる。企業にとって、社内にロールモデルが少ないことが女性活躍推進の重要課題であれば、多様な社外のロールモデルの話を聞く機会を多数提供することが具体策となる。

2.働く女性同士が交流をするメリット

 2008年4月8日発表男女共同参画推進本部決定「女性の参画加速プログラム」1.女性の参画促進のための基盤基礎(2)女性の人材育成、能力開発・発揮(エンパワーメント)に明記してあるが、女性のネットワーク化は国策でもある。それでは、働く女性同士が交流をするメリットは何であろうか。2014年12月に日本生産性本部が発表した調査結果によれば、2014年度の企業の新入社員を対象に実施したアンケートで「管理職になりたくない」と答えた女性新入社員が72・8%に上った。男性新入社員で「管理職になりたくない」としたのは34・5%だった。女性新入社員が管理職になりたくない理由は、「自由な時間を持ちたい」が38・9%だった。国策の「女性活躍推進」で働く女性が注目される一方、管理職で活躍している女性とそこそこ働いてそこそこ給料がもらえればいいという女性の二極化が進んでいる。無意識のうち管理職として孤立感を深める女性や管理職は長時間労働で自由な時間がないと思いこんでいる女性がいる。いずれも無意識のバイアス(偏り)である。女性のネットワーク構築は、働く女性が集まり悩みや解決策を共有することで、自発的にいきいきと働き続けるための気づきを得ることがメリットである。また、ネットワークの中で自然とメンター、メンティの成立、ロールモデルの発見があるだろう。横浜市は、働く女性のキャリアアップやネットワーク形成をお手伝いする「横浜女性ネットワーク会議」を2011年度から毎年開催している。フレンテみえでも2014年度から女性リーダー研修、交流会等を通して女性のネットワーク構築を推進している。今後、三重県の企業で働く女性ネットワークからの女性活躍に関する提言を期待したい。

3.働く女性リーダーが孤立してしまうことを防ぐために 

 働く女性のネットワーク構築が女性リーダーの孤立化を防ぐのにメリットがあることは先に述べたとおりである。社外の女性リーダーネットワーク化はNPO法人J-winを始め多数構築されてきたが、それでは社内のネットワークは構築されているのだろうか。

 女性活躍・ダイバーシティは経営戦略であると宣言している企業が増えてきた。しかし、経営戦略であれば、数値目標をたてコミットするのが当然である。そして定期的にチェックをする。数値目標が達成されていなければ、なぜ達成できなかったのかを分析し、行動する。まずは、社内の女性リーダーを集め女性のネットワークを構築し、女性活躍の問題点を探り、数値目標を立てることに着手することが必要だ。女性リーダーが集まることで悩みを共有できる。組織の中で点として存在している女性たちは、なかなか男性のネットワークに入ることができない。「なんだ、孤独なのは私だけじゃなかった」と気づき、女性同士でつながることができる。

 社内ネットワーク化の好事例として、経済産業省「ダイバーシティと女性活躍の推進~グロ-バル化時代の人材戦略~」報告書平成24年2月(企業活力とダイバーシティ推進に関する研究会)から帝人株式会社の取組事例を紹介したい。
 「(帝人株式会社は)経営トップの強い危機感により女性活躍推進の取り組みを開始し、2000年以降新卒総合職採用における女性比率3割を公表し取り組んでいる。2003年から女性幹部育成強化プログラムWINDを3ヵ年実施し、女性幹部育成を進めている。WIND参加メンバーへのフォローアッププログラムも実施し、そこで得られたネットワークは社内で少数派である女性管理職やその候補者たちにとって、キャリア発達を促進・向上させる支援機能としてだけでなく、社会や組織における個々の立場、役割についての理解を向上させる心理・社会的機能を備えた貴重な存在となっている。」

4.まとめ

 国策である「2020年までに、あらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度」になることを目指すためには、国も企業も女性がいきいきと働き続けられるよう支援することである。具体的な支援策の一部として、「女性のネットワーク構築と積極的に参加を促進すること」や「多様なメンター、ロールモデルを知る機会を増やすこと」が必要である。