第3回 女性が働きやすい環境はみんなが働きやすい 多様性を受け入れる

 ダイバーシティ経営とは、多様な人材を活かし、その能力を最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営のことである。そして、女性活躍推進はダイバーシティ経営の試金石=イントロダクションであると経済産業省が提言している。経済産業省は、「ダイバーシティ経営によって企業価値向上を果たした企業」を表彰する「ダイバーシティ経営企業100選」(経済産業大臣表彰)を平成24年度から実施している。平成26年度は3月18日に発表があり、52社(大企業28社、中小企業24社)が選定された。

 なお、女性と仕事研究所は、女性が活躍し、働きがいのある大阪の中小企業を表彰する「ハッピーキャリア企業表彰」を平成22年度から実施している。そして、ハッピーキャリア企業賞を過去に受賞された、有限会社奥進システムと川村義肢株式会社が平成26年度ダイバーシティ経営企業100選に選定された。

経済産業省ダイバーシティ経営企業100選へのリンク(外部リンク)外部リンク

今後も、優れたダイバーシティ経営を推進している関西の中小企業を応援していきたい。

1. ダイバーシティ経営による成功事例

 平成26年11月14日にWLBメッセ実行委員会は、「関西から女性活躍のMovementを!」を理念とした女性活躍推進セミナーを大阪市立大学文化交流センター・ホールにて開催した。セミナーの中で経済産業省経済産業政策局経済社会政策室係長 関万里氏が発表されたダイバーシティ経営企業100選から4社の好事例を引用紹介する。(女性と仕事研究所3月7日発行「女性と仕事ジャーナル23号」に掲載)


●日産自動車㈱の場合

男性が好むと思われている車でさえ女性が購入の決定権を持っている割合が高いということが調査の結果わかり、女性中心の商品開発を進めた。子育て経験のある女性の意見で、子どもをチャイルドシートに乗せたり、下ろしたりしやすいように、85度に開く後部座席ドアを採用したところ、ガソリン登録車8か月連続売上1位を達成したという成果があがった。

●㈱メトロールの場合

東京都立川市にある中小企業。海外販売をソーシャルネットワークサービスFacebookを通して行ったところ、海外ダイレクト販売が1.4倍に拡大した。女性の新卒社員の提案により、Facebookの運用を開始した。各国のエンジニアに呼びかけて、自社の器具を使用している写真を掲載してもらったことで、海外エンジニアとのネットワーク化につながり、Facebookでの販売が拡大した。

●SCSK ㈱の場合

IT 関連企業SCSK は、長時間労働削減に取り組むため、部署ごとに目標を立て達成度合いによりボーナスを増やすという取り組みをしたところ、4割も残業が削減でき、2年で1.5倍労働生産性が向上した。

●サイボウズ㈱の場合

IT 関連企業サイボウズでは、長時間労働のため離職率が高かったが、ウルトラワークという時間も場所も制約のない柔軟な勤務体系を認めたところ、離職率が28%から4%に低下した。


なお、三重県でも平成14年度から「男女がいきいきと働いている企業」を表彰しており、次のWebサイトに好事例を紹介している。

三重県「男女がいきいきと働いている企業」事例へのリンク(外部リンク)外部リンク

2. なぜ女性活躍推進が必要なのか

 先に述べたように女性活躍推進はダイバーシティ経営の試金石=イントロダクションである。そして、なぜ、女性活躍推進・ダイバーシティ経営が必要なのだろうか。

 1点目は日本経済の活性化のためである。日本では、30代の女性が働く比率が20代や40代と比べて低くなり、折れ線グラフにすると「M」を描く、いわゆるM字カーブが解消されていない。このカーブが残っているのは先進国では日本と韓国だけである。男女共同参画会議基本問題・影響調査専門調査会報告書(平成24年2月)によれば、342万人の女性の潜在労働力(就業希望者)の就労により、雇用者報酬総額が7兆円程度(GDPの約1.5%)増加すると言われている。つまり、働きたい女性が働くことによって「家庭の収入が増える」「消費が増える」「企業の利益が増える」「国の税収が増える」ことで日本経済の活性化につながるのである。しかし、女性が働くためには働きやすい環境を整備することが必要である。産休・育休・職場復帰支援、長時間労働の削減、在宅勤務、保育園の増設、男性の育児参画等である。また、女性が働きやすい環境は、ダイバーシティ経営企業100選等の好事例のようにだれもが働きがいのある企業で利益を出している企業が多い。

 2点目は、組織として最大限の成果を出すためである。男性、女性、障がい者、外国人それぞれの異なる視点・能力を活かし、弱みを補完しあうことによって、組織としてヒット商品を生んだり、短い時間で業務を行うなどイノベーション(革新)を起こすためである。

3.最後に

 女性活躍・ダイバーシティ経営のメリットについては経済産業省から発表された下図を参考にしていただき、多くの企業がダイバーシティ経営に取り組むきっかけになれば幸いである。そして女性が当たり前に働き続ける企業が増えることを期待している。その1つの指標が、202030(にぃまるにぃまるさんまる、2020年までにあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度に)である。

企業経営におけるダイバーシティのメリット
出典:経済産業省
 

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