第1回 すべての女性が輝く令和の社会へ ~女性活躍・男女共同参画の推進に向けて~

1.はじめに

 女性は、我が国の人口の約51%、有権者の約52%を占めています。政治、経済、社会などあらゆる分野において、政策・方針決定過程に男女が共に参画し、女性の活躍が進むことは、すべての人が生きがいを感じられる、個性と多様性を尊重する社会を実現するために極めて重要です。また、我が国の経済社会の持続的発展にも資するものです。
 本稿では、我が国における女性活躍・男女共同参画の現状・課題とともに、最近の男女共同参画行政について御紹介します。

2.女性活躍・男女共同参画の現状と課題

2021年3月に世界経済フォーラムが公表した最新の「ジェンダー・ギャップ指数(GGI)」は、日本は156か国中120位と、先進国の中でも極めて低い水準にあります。特に、経済分野と政治分野のスコアが低調です。

 経済分野では、近年、女性活躍推進法や働き方改革関連法など、女性活躍を推進するための法律・制度が整備されてきました。その結果、女性就業者数や上場企業の女性役員数が増加し、民間企業の各役職段階に占める女性の割合が着実に上昇するなど、一定の進捗は見られています。しかしながら、女性役員割合は諸外国と比べて低くなっており、管理職に占める女性割合も、主な先進国では概ね30%以上となっていることに比べて低い水準となっています。

 また、政治分野では、2018年に、男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指すことを規定した「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が制定され、2021年6月に一部改正されました。政治分野における男女共同参画の推進は、政治に的確に民意を反映させる観点から極めて重要です。内閣府では、同法の趣旨に沿って、候補者に占める女性の割合が高まるよう、「第5次男女共同参画基本計画」に基づき、政党に対し、衆議院議員及び参議院議員の候補者に占める女性の割合を2025年までに35%とすることを努力目標として念頭に置きながら、自主的な取組の実施を要請しています。しかしながら、我が国は、有権者の約52%が女性であるにもかかわらず、衆議院議員に占める女性の割合が9.7%、参議院議員に占める女性の割合が23.1%となっており、国際的に見ても、他のG7の国々の国会議員に占める女性割合が3割前後となっていることに比べて、低い水準にあります。

このように、各国がスピード感を持ってジェンダー平等に取り組んでいる中で、日本の取組は非常に遅れており、女性の登用・採用を含めた政策・方針決定過程への女性の参画拡大が急務となっています。
 我が国における男女共同参画社会の実現に向けた取組の進展が未だ十分でない要因としては、経済分野及び政治分野における取組が遅れていることに加え、社会全体において固定的な性別役割分担意識や無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が存在していることが考えられます。
 例えば、「令和元年男女共同参画社会に関する世論調査」によれば、社会全体における男女の地位の平等感について、「男性の方が優遇されている」と回答した者の割合は74.1%である一方、「平等」と回答した者の割合は21.2%にとどまっています。

 男女共同参画の推進に係る他の全ての取組の基盤として、また、様々な取組の実効性を高めていく観点から、子供をはじめ様々な世代で固定的な性別役割分担意識等を植え付けず、また、押し付けない取組、そして、男女双方の意識を変えて行く取組が極めて重要であり、あわせて、社会全体の機運を醸成していくことが欠かせません。

 加えて、長引く新型コロナウイルス感染症の拡大は、特に女性の就業や生活に、様々な形で深刻な影響を与えています。
 例えば、非正規雇用労働者を中心に、全国に緊急事態宣言が発出された2020年4月の女性の雇用者数は対前月比で男性の約2倍減少し、今も雇用者数はコロナ前の水準に戻っていません。また、2020年度のDV相談件数は2019年度の約1.6倍となり、2021年度の相談件数も毎月約1万5千件程度で推移しています。2020年後半から大幅に増加していた女性の自殺者数は、2021年夏以降、前年比では減少しているものの、依然として高水準で推移しています。
 コロナの感染拡大の影響が女性に強く表れていることは、平時の男女共同参画の取組の遅れを示すものです。このため、目下の政策の推進に当たっては、コロナ対策において女性に最大限配慮するとともに、構造的な問題にも取り組む必要があります。

3.政府における取組

(1) 第5次男女共同参画基本計画

 こうした課題認識を踏まえ、政府は、2020年12月、男女共同参画社会基本法に基づき、「第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~」(以下「5次計画」という。)を閣議決定しました。

 5次計画の主なポイントは、以下の4点です。

  1. あらゆる分野の女性の参画拡大、特に政治分野における参画拡大の重要性について盛り込んだこと。
  2. 女性活躍の大前提として、女性に対する暴力の根絶など支援を必要とする女性等を「誰一人取り残さない」男女共同参画社会の実現を図ることを盛り込んだこと。
  3. 男女共同参画の裾野を広げ、地域における取組の推進の重要性について、5次計画で初めて正面から取り上げたこと。
  4. 新型コロナウイルス感染症拡大は女性により大きな影響を与えており、こうした視点も盛り込んだこと。

 加えて、5次計画の策定過程において、パブリックコメントで約5,600件、オンラインで2回開催した公聴会で約550件の御意見をいただき、これらの御意見を可能な限り反映するように努めました。

 5次計画では、3つの政策領域の下に重点的に取り組む11の個別分野及びこれらの取組を総合的かつ計画的に推進するための「推進体制の整備・強化」で構成され、それぞれ具体的な取組を定めています。また、民間企業の雇用者の各役職段階に占める女性の割合、都道府県職員の各役職段階に占める女性の割合、初等中等教育機関の教頭以上に占める女性の割合など、女性の登用・採用に関する58の成果目標を含む、全89の成果目標を設定しています。

第5次男女共同参画基本計画の詳細はこちら外部リンク

  

(2) 女性活躍・男女共同参画の重点方針2021

 政府は、5次計画を着実に、スピード感を持って実行するため、2021年6月、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2021」(2021年6月16日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部決定)(以下「重点方針2021」という。)を策定しました。
重点方針2021では、5次計画に掲げられた具体的な取組については着実に実施することとした上で、5次計画に盛り込まれた取組の更なる具体化や新たな取組など、2021年度及び2022年度に政府全体として重点的に取り組むべき事項を定めています。

 具体的な内容は、以下のとおりです。

  1. コロナ対策の中心に女性を
    コロナの拡大は、特に女性の就業から生活面に深刻な影響を及ぼしており、コロナの拡大の性別による影響やニーズの違いを踏まえて政策課題を把握し、必要な政策を実施する必要があることから、まず1つ目の柱を「コロナ対策の中心に女性を」として、
    ・女性デジタル人材の育成、
    ・厳しい状況にあるひとり親に対する職業訓練に関する取組、
    ・「生理の貧困」への支援
    等を盛り込んでいます。
  2. 女性の登用目標達成に向けて
    ~「第5次男女共同参画基本計画」の着実な実行~
     政策・方針決定過程への女性の参画拡大は、社会に多様性と活力をもたらし、あらゆる人が暮らしやすい社会の実現のために極めて重要です。あらゆる分野において、5次計画の目標達成に向け、強力に取組を進めるため、
    ・政治分野における男女共同参画の推進、
    ・行政分野では、国・地方公共団体等における女性の登用・採用拡大、
    ・経済分野では、①2022年4月から、女性活躍推進法における一般事業主行動計画の策定及び情報公表義務の対象が、常用労働者101人以上の企業に拡大されることを踏まえ、中小企業への相談対応や計画策定へのアドバイス等を実施すること、②公共調達の活用による女性の活躍促進、
    ・地域分野では、農業委員や農協役員等への女性登用、
    ・教育分野では、校長や教育委員等への女性登用
    等を盛り込んでいます。
  3. 女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現
     女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会は、女性活躍・男女共同参画の大前提であるという認識の下、
    ・性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにおける相談員の処遇改善などの体制強化、
    ・性犯罪・性暴力の加害者にも被害者にもならないための、「生命(いのち)の安全教育」の2023年度全国展開、
    ・フェムテックの推進や、緊急避妊薬を処方箋なしに薬局で適切に利用できるようすることの検討など、女性の健康に関する取組
    ・2021年度に、無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)の解消を図るため、実態を把握するための調査を実施すること
    等を盛り込んでいます。

 5次計画、さらに重点方針2021に基づき、女性が直面している具体的な課題を一つ一つ解決し、「すべての女性が輝く令和の社会」の実現に向けた取組を推進していきます。

女性活躍・男女共同参画の重点方針2021の詳細はこちら外部リンク

「令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」はこちら外部リンク

(3)計画実行・監視専門調査会における議論

 2021年9月以降、男女共同参画会議の下に設置されている「計画実行・監視専門調査会」(以下「専門調査会」という。)において、5次計画の実行状況の監視を行うとともに、2022年5、6月を目途とする「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022」(女性版骨太の方針)(以下「重点方針2022」という。)の策定に向けた議論を行っています。
 重点方針2022の策定に向け、2021年11月29日に開催された第65回「男女共同参画会議」において、野田聖子男女共同参画担当大臣から、①女性の経済的な自立、②女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現、③男性の家庭・地域社会における活躍、④女性の登用目標達成(第5次男女共同参画基本計画の着実な実行)の4つの柱が示されました。また、締めくくりに岸田文雄内閣総理大臣から、引き続き議論を深め、実効性ある具体策を取りまとめるよう、関係閣僚に対して指示がありました。
 総理からの指示を踏まえ、各府省において検討を進めるとともに、専門調査会において、男女間賃金格差やクオータ制、女性の視点も踏まえた税制・社会保障制度など、様々な課題について議論を深めていきます。
 専門調査会はオンラインシステム(Zoomウェビナー)により開催されており、男女共同参画局のHPから事前に御登録いただければ、全国どこからでも、どなたでも傍聴が可能となっています。御興味のある方は、是非御登録ください。

計画実行・監視専門調査会の詳細はこちら外部リンク

第65回男女共同参画会議の詳細はこちら外部リンク

4.おわりに

 男女共同参画は、日本政府の重要かつ確固たる方針であるとともに、国際社会で共有されている規範です。
 政府としては、国際的な取組とも協調しつつ、また、男女共同参画会議及び専門調査会での御意見もしっかりと聞きながら、本稿で取り上げた5次計画や重点方針2021に基づき、政府一丸となって取組を進めていきます。