Mゲキセレクション劇団こふく劇場第15回公演「ただいま」作・演出:永山智行
宮崎を拠点に活動する劇団こふく劇場。2015年劇団25周年記念公演で巡演され、大絶賛された作品が再演!!
穏やかに日常を暮らす、その普通の人々のかけがえないホームドラマ
姉の夫はひとり暮らし。そんな義兄のすすめで、30歳を前に独り身のあさ子はお見合いをすることになった……
豆腐職人の男、文具店に勤める女、主婦、仕事を探す女、そんな市井の人々の、かけがえない日々の物語。
2018年8月29日宮崎公演感想ピックアップ
一杯のビールを大切に味わいたい、「ただいま」と心をこめて言いたい、そんな気持ちになりました。
俵万智(歌人)
基本情報
開催期間
2018年9月15日(土曜日)~16日(日曜日)
チケット
イベントは終了しました
主催者
文化会館
2015年、宮崎県都城市に拠点を置く劇団こふく劇場は25周年を迎えました。折しも戦後70年の年。
決して安穏と25年を過ごしてきたわけではありませんが、この25年の間に、何が失われ、何が生まれたのか、わたしたちは、ほんとうにしあわせになったのか、九州の片隅でそんなことを考えながら生まれたのがこの作品「ただいま」です。
おかげさまで作品は各地で好評を得、公益社団法人日本劇団協議会発行の機関誌「join」の、「私が選ぶベストワン2015」ではライターの大堀久美子に、作品部門で「ただいま」を、団体部門で「こふく劇場」をそれぞれ2015年のベストワンとして挙げていただきました。
―――あれから3年。けれど、「地方」に暮らすわたしたちにとって、3年前の問いは、さらに切実なものとして、ここにあります。だからわたしたちはまた旅をすることにしました。
25年の集大成としてつくったこの作品は、わたしたちの日常に中にある「自然」や、たくましい生活人たち、そして日々続いていく「暮らし」、そんなものを題材にしながら、こふく劇場がこれまでに出会ったきた、様々な身体や言葉を参照し、「地に足をつけ生きること」を問いながら生まれました。
これからはじまる新しい旅でも、それぞれの土地で暮らす生活する者たちと、この作品を共有することができればと願っています。
出演
あべゆう
かみもと千春
濵砂崇浩
大迫紗佑里
(以上、劇団こふく劇場)
中村幸(劇団ヒロシ軍)
プロフィール
劇団こふく劇場
1990年4月、永山智行らを中心に宮崎県都城市で結成。1996年にこまばアゴラ劇場の大世紀末演劇展に『北へ帰る』で参加以降、活動の範囲を全国へと広げる。一方で1999年からは宮崎県内の二つの町(門川町・三股町)の文化会館のフランチャイズカンパニーとしての活動もはじめ、ワークショップ、小学校巡回公演、町民参加作品の創作など、教育・普及活動の一端を担ってきた。
長年のそれらの活動の積み重ねを経て、2012年より、三股町・三股町教育委員会との共催で、町民が書いた戯曲を町民出演者と九州で活躍する演出家を結び付け上演する「みまた演劇フェスティバル『まちドラ!』」を開始。より地域に根差し地域住民との深い関わりなくしては成し得ない事業を続けるとともに、劇団の作品を全国で上演する活動を積極的に行っている。
また、2007年からは障害者も一俳優として参加する作品づくり(みやざき◎まあるい劇場)をはじめ、質の高さ、活動の社会的な広がり、その両面から高く評価されている。
永山智行
1967年宮崎県都城市生。劇作家・演出家。劇団こふく劇場代表。2001年『so bad year』でAAF戯曲賞受賞。2006年~2016年、宮崎県立芸術劇場の演劇ディレクターを務め、九州の俳優を集めてのプロデュース公演「演劇・時空の旅シリーズ」の企画・演出などを手がけた。劇作家としては、神里雄大(岡崎藝術座)、三浦基(地点)、中島諒人(鳥の劇場)らの演出家への作品提供などを担当してきた。
紹介映像
2015年初演舞台写真(歌入り)
2015年三重公演感想紹介
柴幸男(劇作家・演出家・ままごと主宰)
――たまげた。こふく劇場の『ただいま』を見て僕は心底、幸福にたまげてしまった。というわけで、たまげた理由をここに列挙します。まず戯曲に練りこまれたポエジー。作品を貫通する暖かで冷静な目線。ストイックで優しい演出。絶妙な音響、照明。斬新で趣ある舞台美術。宮崎弁の心地よさ。こふく劇場が過ごしてきた時間。まだまだ日本には新しくて懐かしいものがあるという希望。でも、なんだかんだ言って、一番強く思うのは、とにかく俳優の顔がよかったなぁってことです。
鳴海康平(津あけぼの座芸術監督・第七劇場演出家)
――ある日、何かが消えてしまって、それと一緒に自分の一部も失われてしまったような体験。こふく劇場「ただいま」ではこの体験のいくつかが編まれている。そういう誰にでも大なり小なり経験ある体験があたたかく丁寧に描かれている。作品の登場人物と同様に、この喪失感は多くの場合、自分ではどうしようもない、もしくは理解しようがない原因だったりするのに、ふとした瞬間に自分にはどうにかできたかもしれないという錯覚に陥り、ほどなくしてやはり自分の一部と一緒にそれは永遠に失われてしまったのだという結論を出すことになる。そして永遠に失われてしまった空白を片手に抱えて日々を暮らしていく方法をどうにかこうにか身につけたころ、いつの間にかもう片方の手には、失われた空白と同じくらいの重さの失いたくないと願う何かを抱えていることに気がつく。そのとき、ひとが何か言葉にするとしたら何が言えるのだろう。それはきっと祈りにも似た「ただいま」という言葉がふさわしいと、この作品が教えてくれた気がする。
中井美穂(フリーアナウンサー)
劇団こふく劇場は、昨年25周年を迎えた宮崎にある劇団で、宮崎県立芸術劇場演劇ディレクターも務める永山智行さんが作・演出を担当。「25年目のホームドラマ」と銘打たれていますが演出もとてもユニーク。セットも非常にシンプルにでもよく計算されて作られています。役者たちはまるで音楽の二重唱や三重唱のようにト書きを読み、太鼓も鐘、楽器も演奏したりする。美しい呼吸からうたわれ読まれるセリフは現代口語で宮崎弁。動きはお能のようで、時に仏像のボーズみたいに見える。亡くなった人たちが普通に時空を超えて登場し、そのさかいめで語り合う姿に心をぎゅっとつかまれました。人の声の持つやさしさ、暖かさに救われました。自分の今いる場所は昔からずっと繋がっていたのだと感じましたし、そんな中いまは失ってしまった人の存在は完全に忘れられないしかけがえのないもの。私の後ろかとなりにいるかもしれないなら、一緒に淡々と丁寧に地に足をつけて生きていくことが一番なのかなと思わされる。日本の山里にいるかのような気持ちになり、静かなのに確かな強いこころが観客に届けられました。九州まで行っても観て観たいし、あとをひくお芝居でした。東京に来る機会はまだまだ少ないのでぜひ足を運んで頂きたいです。
(「悲劇喜劇」2016年3月号より)
詳細情報
イベントに関するお問い合わせ先
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