シリーズ文学「樋口一葉『たけくらべ』の世界 ~失われゆく子どもたちの時間~」の事業報告

開催日
2025年9月27日(土曜日)
開催場所
三重県男女共同参画センター 多目的ホール (三重県総合文化センター内)
開催時刻
13時30分から15時30分まで
出演
講師:河原徳子さん(日本文学研究家)、演奏:生田隆明さん(和太鼓奏者)
参加人数
145名
参加費
無料

講座ボランティア企画「シリーズ文学」は、2003年の「瀬戸内寂聴文学へのいざない」からスタートした、20年以上愛されている当センターの人気講座です。当日の運営・司会なども講座ボランティアスタッフの皆さんが携わっています。約1年ぶりの開催となった今回は、24年という短い生涯を駆け抜けた樋口一葉の代表作「たけくらべ」をテーマに、和太鼓演奏とのコラボでお楽しみいただきました。


樋口一葉の「たけくらべ」は、吉原界隈を舞台に子どもたちの世界が描かれた作品です。やがては遊女となる大黒屋の美登利と、僧侶となる龍華寺の信如の淡い恋心の交錯を中心に、子どもたちの時間の消滅していく様が展開されてゆきます。


講師の河原徳子さん
講師 河原徳子さん

第一部。まずは、樋口一葉(享年24歳)の短い生涯について、主に文学との関わりという視点から解説がありました。様々な先人、文学者たちの教えや影響のもと、生計を立てる手段のひとつとして小説家を志し、生活に苦しみながらも数々の作品を生み出した一葉。まだ女性が小説を書くことが珍しい時代のなか、悩みながら作品を発表し続けた一葉の功績を振り返りました。

そしていよいよ「たけくらべ」の世界へ。
時代背景や文化的視点を含めた物語の解説に作品本文の朗読が、生田隆明さんによる打楽器の音色と共に綴られていきます。滔々と響く音の波に、会場の集中力もどんどん高まっていきます。

和太鼓演奏の生田隆明さん
和太鼓演奏 生田隆明さん(ソロパートの様子)

4つのシーンの解説と朗読を経た後、第一部のおわりは生田さんによるソロパート。朗読とのコラボパートとはまた違う迫力のある演奏に、会場から大きな拍手が贈られました。(休憩時間中も舞台では生田さんから和太鼓ほか打楽器についてのお話がありました)

第二部は再び「たけくらべ」の世界へ。
作品のなかでも絶唱中の絶唱といわれる美しい”秋のよそおい”のシーン、大人の女性への成長をどのように捉えるか、その解釈についても語られた”美登利急変”のシーンなど、時にユーモアを交えながらの解説と朗読は、物語のクライマックスへ向けてさらにスピード感を増していきます。そして最後は、異なる道を歩むこととなる美登利と信如、二人の姿が語られる”別れの朝”のシーン。スクリーンに”一輪の水仙”が浮かびます。読者に委ねられた二人の未来、子どもから大人へと変わっていく登場人物たちに思いを馳せながら、心に響く朗読となりました。

「たけくらべ」をさいごまで味わったあとは、この講座の醍醐味でもある「群読」の時間です。講師と共に、和太鼓の音色を感じながら、作品冒頭と終幕の2つのシーンを会場の皆さんと共に”声”にしました。皆で語り終えた会場は温かい空気に包まれます。文字だけでは得られない一葉と「たけくらべ」の世界をそれぞれ我が身に沁み込ませたところで、この日の講座は終了。ご登壇のお二人に大きな拍手が贈られました。

会場の様子
多くの方にご来場いただきました
会場の様子
さいごは会場の皆さんと一緒に「たけくらべ」を朗読

ブックリスト(関連図書のご案内)

三重県立図書館に所蔵されている講座関連図書のご案内です。
所蔵状況は講座開催日時点のものです。

参加者の声

  • 大変ぜいたくな時間でした。まだまだお話を聞きたかったです。あっという間に時間が過ぎました。太鼓もすばらしく、身体に響きました。ありがとうございました。
  • 朗読がすばらしく、情景が目に浮かんでくるようでした。日本文学の奥の深さを感じ、興味・関心が高まりました。本日はありがとうございました。
  • 初めて参加しました。河原先生の語りにひきこまれました。独特の世界観がありました。さらに和太鼓の生田さんの演奏も素敵でした。すごい時代に生きた一葉さんに思いを馳せました。
  • いつもながらすばらしい講座でした。ありがとうございました。