みえアカデミックセミナー2025 皇學館大学公開セミナー「三重県方言の動態」の事業報告
「みえアカデミックセミナー」は、三重県総合文化センターを会場に、三重県内にある大学・短期大学・高等専門学校の高等教育機関全14校が有する高度な学びと県民の皆さまをつなぐ一大連携事業として開催している公開セミナーです。毎年7月と8月に各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご講演いただいています。
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三重県方言は大きく、北勢、中勢、南勢志摩、東紀州、伊賀の5つの地域に分けることができます。コンビニATMの音声案内や『令和7年版三重県民手帳』付録「三重弁辞典」の編集にまつわるお話も交えながら、南北に長く、海沿いと山沿いの特色を持つ三重県方言の現状をみなさんと御一緒に考えたいと思います。
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皇學館大学公開セミナーは、学長 齋藤 平さんにご登壇いただきました。
言葉とは人々が使っていく中で、時代(時間)とともに変化していくものと前置きされ、三重県の方言として使われる「やんやん」「おおきんな」や、松阪を中心に分布している「んす・やんす」や「のし」の表現が、文法的にどのように変化して生まれてきたのか解説されました。また音声の方言にも触れ、三重県ではいま揖斐川を境に東京式アクセントと京阪式アクセントに分かれているが、将来的に青山高原がアクセントの境界になる可能性をお話しされました。
続いて、伊勢平野で使用される「ささって」についてお話しされました。新しい言葉の勢力の範囲が広がってくるとその言い方に切り替えていくというのが言葉の世界での規則であるにもかかわらず、伊勢平野では「あした・あさって・ささって・しあさって」の表現が生き残ってきました。ところが、最近この「ささって」表現にさらなる変容がみられており、四日市の高校生が「あした・あさって・しあさって・ささって」という使い方をしていることが発見されたという事例を紹介されました。これは名古屋圏との日付のずれを防ぎつつ、三重県方言のアイデンティティとして「ささって」を残したいために4日後に置いたのではないかと考えられると解説されました。
講師は、古いものがなくなると同時に、また新しい表現が生まれてくるのが言葉の世界の面白い所。言語学者として、今ある方言がどのように使われているか記録していくことが重要と考え研究を進めていきたいと締めくくられました。

「ブックリスト(関連図書)」のご案内
三重県立図書館に所蔵されている講座関連図書のご案内です。
所蔵状況は講座開催日時点のものです。
- 言葉が生きるものとして変容していることや地域によって違うことを改めておもしろいと思いました。(会場受講)
- 普段使っている何気ない言葉を理論的に説明してもらって面白かったです。(会場受講)
- 伊賀を除く三重県がそのうち京阪式アクセントから東京式アクセントに変わりそうだという話を聞き、しつこく京阪式アクセントを使って行こうと思いました。(オンライン受講)
- しあさって、ささって の四日市の高校生の話が初めて聞く話で面白く感じた。三重弁の独自性は今後も残ってほしいと思います。勉強になりました。(オンライン受講)