講座ボランティア企画【第94回 名盤を聴く ブルーノ・ワルター 特集 第2弾】の事業報告

開催日
2025年5月30日(金曜日)
開催場所
三重県文化会館 小ホール
開催時間
13時30分から16時05分まで
講師
梶 吉宏さん(三重県文化会館館長)
参加人数
118名
参加費
無料

 20年以上続く 講座ボランティア企画「名盤を聴く」。講座ボランティアさんに資料準備や当日の司会など協力いただいています。今回の特集はフルトヴェングラーと人気を二分するとも言われる指揮者、ブルーノ・ワルター。2003年以来の第2弾です。

講師:梶 吉宏さん(三重県文化会館館長)

【チラシ文】ベルリン生まれ。ピアニストとして活動を始めましたが、指揮者に転向。マーラーに認められ交流を深めました。ナチスの台頭により1933年にフランス、続いてアメリカへ亡命。激動の生涯をたどりましたが、自らを楽観主義者と呼び、常に微笑みを忘れず、温和な巨匠の至芸というにふさわしい名演を遺しました。また、レコード産業創成期から録音に強い関心を寄せ、コロンビア交響楽団を結成し、多くのステレオ録音を行いました。穏やかで温かみのある表現が今なお多くの人々に敬愛されるブルーノ・ワルターの名演を梶館長に紹介していただきます。

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リハーサルを丁寧に行うワルター

今回の講座は、ワルターの音楽に対する姿勢や人間性を、
前半はリハーサルとインタビューを通じて、後半は彼が指揮する曲を通じて理解してみよう、という構成でした。
インタビューは1927年にはじめて訪れて以来、一目で気に入り1945年から暮らし始めたというロサンゼルスの自宅で行われたものでした。彼はニューヨークの生活を「アレグロ(速く)」だとすれば、ここでの生活は「アレグレット(やや早く)」だと微笑みます。

演奏家と指揮者の違いについて、「演奏家はリハーサルまでに十分に準備する時間が与えられている一方で、指揮者は明確なイメージを持たずにリハーサルに臨むと、未熟なまま

オーケストラという音の渦に飛び込むことになり、気がついた時には時間切れになってしまう。」と考えを述べました。指揮者にとって最も重要なのは人間性で、どんな難題も乗り越えようという姿勢、そして未熟さを補う決め手となるのは品性だそうです。

また、野原や小川のような自然を愛さない人にベートーヴェンの「田園」を、ロマンを理解しない人はシューマンを指揮できないとも話しました。さらには好きな作曲家の変遷についても言及し、特にブルックナーは肺炎になり苦しんだ後、その崇高さを感じるようになったと語りました。
リハーサルの場面では、しきりに「歌って!」「感情豊かに!」と各パートに声をかけ、ポイントとなる箇所を丁寧に確認する様子は彼の音楽に対する哲学がうかがえました。

休憩をはさみ、後半は前半の内容を踏まえ、マーラーの『交響曲第4番ト長調』を鑑賞。
通常、この曲は53分で演奏されるそうですが、ワルターの指揮では60分だそうです。このことからも彼が各パートに変化をつけ、ゆったりとしたテンポを好むという特徴がわかると講師より解説がありました。ちなみにこの演奏は亡くなる2年前のワルターとウィーン・フィルハーモニーという名コンビによるもので、偶然フランスで発見されたそうです。

ワルターは「音楽は楽しみでなく尊いメッセージで精神を高揚させるもので、厳しい人生の中で与えられた天の恵みである」とインタビューの中で話しましたが、時代に翻弄され、国籍、地位、財産、家族までも失ってきたなかで、音楽がどれほど大きな存在であったかが伝わってくるような2時間30分だったように思います。

参加の方からも「素晴らしかった。誠実な人柄がインタビューでもわかった。」「ワルターの指揮でオーケストラの一員になったように高揚した。」などのお声をいただきました。

講座ボランティアさんが当日の司会を行います
県外からの参加の方もいらっしゃいます

【プログラム】

1.リハーサルとインタビュー
 ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 Op.73 より
       ヴァンクーヴァー国際フェスティバル・オーケストラ
                           (1958年)

          ――――――― 休 憩 ――――――

2.マーラー:交響曲第4番 ト長調 
         第1楽章 ゆっくりと
         第2楽章 気楽な動きで
         第3楽章 平安にみちて
         第4楽章 きわめてなごやかに

           (ソプラノ) エリーザベト・シュヴァルツコップ
            ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
                           (1960年)

参加者の声

  • 指揮者を取り上げてその音楽に迫るための構成も工夫されていて楽しむことができました 。
  • ワルターは信念を持って指揮棒を振っているのだと感じました。そういう誠実さが演奏に現れているのでしょうね 。
  • オーケストラをまとめるのに大事なのは人間性だとワルターが言われていたとおり、とても暖かく人を惹きつける素敵な人だと感じました。
  • やはりワルターの演奏は人を幸せにする力がありますね 。
  • 初めての参加です。こんな素敵な催しがあるとは。今後全てに参加いたします。