かるみーといっしょ♬(子ども向け講座)
「鳥の気持ちはわからない。別にそれでも構わない。」の事業報告

開催日
2024年12月14日(土曜日)
開始時間
13時30分から15時00分まで
開催場所
三重県男女共同参画センターフレンテみえ 多目的ホール
講師
川上 和人さん(森林総合研究所 鳥獣生態研究室長)
参加人数
110名
参加費
無料
講師の森林総合研究所 鳥獣生態研究室長 川上和人さん

子どもと大人が世代を超えて同じことを学べる講座、かるみーといっしょ♬「鳥の気持ちはわからない。別にそれでも構わない。」を開催しました。
講師は、NHKラジオ「子ども科学電話相談」で「鳥」分野を担当している、森林総合研究所 鳥獣生態研究室長 川上 和人さん。鳥類に関する多数の著作を執筆され、バード川上の愛称で親しまれています。

講座では、鳥というものの「特徴」、祖先からどうやって「進化」してきたのか、鳥の「外見」がどういう意味を持っているのか、体に生やしている「羽毛」がどうやって進化してきたのか、「体の中身」はどうなっているかという5つのテーマをもとにお話ししてくれました。

講師の話に引き込まれ、子どもも大人も楽しそうに聞き入っていました。

はじめに
講師の川上さんから、小笠原諸島の無人島で行っている鳥類研究についてご紹介いただきました。無人島での調査には、泳ぐ訓練や登山訓練が必要で、調査船で10日以上かけて移動し、快適な生活を送りながらも船酔いや水の不足といった困難に対処し、上陸後はさまざまな自然環境に対応しながら調査を行います。火山活動後の新しい島での調査では、海鳥が最初に移住し、その後動植物が定着していく様子が観察されました。川上さんは自然環境が循環していく様子を「すべては鳥のおかげだ」とまとめられました。

1.鳥の特徴はなに?
川上さんは、鳥が街中や自然の中で簡単に見かけることができる最も身近な野生動物だと紹介しました。
鳥の最大の特徴は「飛ぶこと」であり、最も長距離を飛ぶ鳥は1年で8万キロも移動し、最長で10ヶ月間飛び続ける鳥も存在します。また、最も高く飛ぶ鳥は11,300メートルの高さに達し、エベレストを越えることが確認されています。さらに、ある鳥は1メートルの穴を掘ったり海に60メートルも潜ったりすることができ、1,200キロ離れた場所に食料を探しに行って戻ってくるなど、驚くべき飛行能力を持っています。鳥は飛ぶために進化した体を持ち、二本足で歩き、翼を使って飛ぶ構造や足の指、くちばしの形などが、飛行や生活に役立つ重要な特徴だと説明されました。

2.祖先からの進化
鳥の進化についても詳しく教えてくださいました。現在、最も鳥に近い生物のワニと鳥は共通の祖先を持つことが分かっており、鳥は恐竜から進化したことが研究によって明らかになったそうです。恐竜と鳥には多くの共通点があり、特に二足歩行をしていた恐竜から鳥が進化したと言われています。また、恐竜の中には羽毛や翼を持つものもあり、これらが鳥に受け継がれていると話され、羽毛や翼が飛行のために最初からあったわけではなく、もともと別の目的で使われていたものが飛行に役立つようになったと説明されました。鳥が飛び始めた理由については、食物を取るためと逃げるための2つの説があり、川上さんは「逃げるために進化した」説を支持しています。捕食者から逃げるために翼を使って少しでも遠くに飛び、命を守ることができたと考えられており、進化は個体の意思ではなく偶然の積み重ねであることが理解できました。そして、恐竜の絶滅後、鳥は天敵が減り、食物の競争も少なくなったため急速に繁殖し、現在では鳥の種が1万1000種類にまで増えたと説明されました。

3.鳥の外見の意味
恐竜の色や姿を正確に知ることは難しく、化石からは骨しか分からないため、復元は不確かです。実際、恐竜の色は図鑑ごとに異なり、完全な想像はできませんが、恐竜が鳥の祖先であることが分かったことで、鳥の色を参考にする方法が注目されています。しかし、鳥がカラフルだからといって恐竜も同じとは限らず、例えばティラノサウルスのような捕食者は目立たない色だった可能性が高いとされています。また、動物の外見と性質には関係があり、例えばトゲや甲羅は捕食者から身を守るための特徴です。鳥の色も、捕食者に見つかりにくくするために、海や空、水辺の鳥が白黒が多いことが関係していると考えられています。さらに、鳥のシルエットや群れの作り方も捕食者から身を守るための工夫だとされています。

4.羽毛の進化
川上さんの考えでは、羽毛は初めから飛行のために進化したわけではなく、体温調整や色の変化を目的としていたそうです。羽毛を持つ恐竜は最初、飛行には羽毛を使っていませんでしたが、時が経つにつれてその役割が変化し、飛ぶために重要な役割を果たすようになったと言われています。また、羽毛は感覚を感じ取る役割も持ち、例えば虫が近づいてくることを感じ取るために役立った可能性があります。

5.飛べる体のなかみ
飛べる鳥の骨の構造には特徴があります。鳥の骨は非常に軽く、例えば上腕骨は中が空洞で、哺乳類の骨と違って骨髄もありません。また、鳥のくちばしや頭蓋骨も中が空っぽで、骨は軽くて丈夫な形をしています。さらに鳥の胸骨には「竜骨突起」という突起があり、この部分が大きな筋肉を支え、翼を動かすために重要です。飛べない鳥にはこの突起がないため、鳥特有の骨構造が飛行に役立っていることがわかります。

最後に川上さんは「いろんな情報を聞いたとしても、まずは自分で確かめることが大切だ」と話され、この日の講座は終了しました。



  • 講師の川上さんが持参した標本に参加者は実際に触れて鳥の不思議を体感しました。
  • 講演前にも講師による標本の説明があり、子どもも大人も夢中になっていました。
  • 書籍の販売もあり、受講者の皆さんは講師の本に大変興味を持っていました。
  • 鳥の空を飛ぶという特徴についてや、鳥類の進化や機能について紹介していただきました。
  • 質問コーナーでは、子どもたちからたくさんの質問が講師に寄せられました。
  • 講演会終了後、サイン会が行われ、たくさんの子どもたちが川上さんとお話をしていました。

「ブックリスト(関連図書)のご案内」

三重県立図書館に所蔵されている講座関連図書のご案内です。
所蔵状況は講座開催日時点のものです。

「かるみーといっしょ♬」これまでの事業報告はこちら

参加者の声

  • 鳥って恐竜の進化だったって知った。鳥ってすごかった。りゅうこつとっきって言葉も知った!(9歳)
  • 川上先生に質問できて嬉しかった。サインくれて嬉しかった。(9歳)
  • 鳥について調べられてよかった。(12歳)
  • 鳥の生態を改めて学べた。(16歳)
  • 分かりやすくお話いただいて子どもも最後まで聞いていました。(大人)
  • 子どももとても楽しく学ばせていただきました。(大人)
  • 笑いを交えつつ、とても分かりやすい言葉の説明で、息子と楽しく学ばせていただきました。ありがとうございました。また聞きたいです!!(大人)
  • 息子が鳥に興味があり、川上さんの本も何冊か持っています。お話がとても上手で楽しく過ごすことができました。(大人)