みえアカデミックセミナー2024 放送大学三重学習センター公開セミナー「美術における日本的とは何か」の事業報告
「みえアカデミックセミナー」は、三重県総合文化センターを会場に、三重県にあるすべての大学・短期大学・高等専門学校の高等専門機関全15校が有する高度な学びと県民の皆さまをつなぐ一大連携事業として開催されている公開セミナーです。
毎年7月と8月に各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご専門の研究内容を分かりやすくご講演いただいています。
前身となる「みえ6大学公開講座」(1996年スタート)を経て、「みえアカデミックセミナー」としては、昨年20年目を迎えました。これからも三重県内の皆さまに、たくさんの「まなびの種」をお届けしてまいります。
令和6年度の第11回は、放送大学三重学習センター 客員教員の藤田 伸也さんを講師にお迎えしました。
**************************【講演概要(チラシ紹介文より)】
日本美術は古くから外来美術を取捨選択しつつ積極的に受け入れることで、多様に発達してきました。その結果、中国や朝鮮そして欧米とは異なった特質を持つ日本的な美術が生まれています。長谷川等伯「松林図屛風」などの絵画名品を中国と比較し、日本的と感じるものは何かを美術史の視点から考えていきます。
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江戸時代以前、東アジアの文化は中国の影響を大きく受けます。そして明治以降は西洋からもたくさんの文化が流れ込んできました。日本をはじめ東アジアの各地域では、作品をただコピーするのではなく独自の発展を遂げていきました。講座では、本当に日本的といえる日本美術の特徴(オリジナリティ)は何であるか、作品を見比べて考えてみました。
日本美術の一般的な特徴は、自然との調和、「をかし」「わび・さび」表現の重視、装飾的・金銀の多用、そして遊び心や娯楽性に富み、庶民にも身近な存在として受け入れられているところなどにあります。
一方で西洋美術は教養のある人が嗜むための芸術として発展し、均整美を重視したり自然科学的・写実的で、3次元を2次元に落とし込む図法を確立するような学問的な側面も持っていました。
中国絵画は、詩と書と画すべてに優れる「詩書画三絶」が文人の理想とされ、書画と工芸の作り手は身分によって区別されたり、本質を描くことを目指す中国的写実主義、徹底的な超絶技巧の追求、伝統を重んじ模写を重視するといった、西洋とはまた違った特徴がみられるそうです。
講座では東山魁夷や長谷川等伯、俵屋宗達、伊藤若冲をはじめとした日本人画家の作品や、代表的な中国絵画の作品がスライドに映され、みどころと共に講師が解説。受講者の皆さんは、ご自身の中にある日本的感覚と照らし合わせながら作品を味わいました。
- 日本美術がどこからどう伝わり、日本らしさを生み出したかがとてもよく分かりました。水墨画、山水画は好きですが、ますます魅力を感じました。
- 西洋、日本という比較になりがちで「東アジアの中の日本」であるという意識が薄いという視点は確かにそうだと納得しました。
- 京都や奈良へよく行きますが、中国や朝鮮の美術をもっと見る機会を増やしたいと思います。