三重県埋蔵文化財センター共催講座「聖武行幸 ~朕、意う所有るに縁りて、暫く関東に往く~」の事業報告

開催日
2023年11月18日(土曜日)
開催時間
13時30分から15時30分まで
開催場所
三重県文化会館 1階 レセプションルーム、オンライン配信、
 
伊勢市生涯学習センターいせトピア(サテライト会場)
講師
櫻井 拓馬さん(三重県埋蔵文化財センター)
参加人数
150名 (会場79名/オンライン57名/サテライト会場14名)
受講料
無料

今回のまなびぃすとセミナーは「聖武行幸 ~朕、意う所有るに縁りて、暫く関東に往く~」と題し、三重県埋蔵文化財センターの櫻井拓馬(さくらい たくま)さんにお話しいただきました。
三重県埋蔵文化財センターが公開考古学講座「三重を掘る」として開催する年間講座のうち1回を、特別講座として三重県生涯学習センターと共催し、総合文化センターを会場に開催しています。

講師

天平12年(740年)、政情不安定の中、聖武天皇は東国(伊勢・美濃)への行幸を実施します。
平城京から、伊賀、伊勢、そして美濃を経由し、恭仁京に至る道程で実施され、出発から5年もの間、平城京に戻ることはありませんでした。

「彷徨五年」とも表現されるこの行幸はネガティブな印象を持たれがちですが、離宮や頓宮(とんぐう/行幸の際の宿泊地)の発掘調査や文献からは、この行幸が計画的で周到に準備された、聖武天皇の強い想いが込められていたことが読み取れると説明されました。

この天平12年の聖武天皇の行幸における三重県内の「駅家(駅と駅との中継点)」や「郡衙(郡の役所)」、「頓宮」、「古道」などの具体的な位置はほとんどわかってはいませんが、平安時代の文献からおおよそのルートは推測されているそうです。
近年の大きな発見として、名張市にある「薦生(こもお)遺跡」からは、「長舎(ちょうしゃ/桁行の長い建物。古代の役所によくみられる)」が見つかり、「薦生遺跡」が聖武天皇の行幸に関連した遺跡である可能性をお話しされました。
そして、「薦生遺跡」が行幸に関連する遺跡であれば、大和から名張に至る「都祁(つげ)山道」のルートに再考につながるとも説明されました。

講座では、遺跡の発掘調査や文献から読み取れる聖武天皇の天平12年の行幸の性格や実態についてお話しいただき、受講者の皆さんは発掘によって明かされる歴史のロマンを感じていました。

三重県内にある頓宮と思われる遺跡についてもお話しいただきました。
会場の様子
会場の様子。演題の「関東」は「関(せき)」の「東」。関とは古代における三関(鈴鹿・不破・愛発)のこと。

参加者の声

  • 埋蔵文化財をつなげて行幸路を探るテーマがおもしろかった。(会場受講)
  • 聖武天皇のことが、遺跡等の具体的な事象を通して説明され、とてもリアルに感じられました。(会場受講)
  • 考古学、文献史学、地理学等を巧みに組み合わせた構成で、素晴らしい講演会でした。特に都祁山道のルートや頓宮の立地について、発掘調査の成果によって導き出された新解釈には感銘を受けました。毛原廃寺跡を再度訪ね、周辺遺跡(山添村)を踏査してみたいと思いました。とても有意義な時間を過ごすことができました。(オンライン受講)
  • 聖武天皇の行幸、知りませんでした。貴重な機会をありがとうございました。古代のロマンを感じます。また、このような講座が予定されましたら、広報にてお知らせください。(サテライト会場受講)