まなびぃすとセミナー【すべての人の快適空間をめざして ―私とトイレの35年―】の事業報告

開催日
2023年11月26日(日曜日)
開催場所
男女共同参画センター 多目的ホール(三重県総合文化センター) 
開催時間
13時30分から15時05分まで
講師
小林純子さん(トイレデザイナー 一般社団法人 日本トイレ協会 会長)
参加人数
52名
参加費
無料

今回のまなびぃすとセミナーは、1989年瀬戸大橋開通の際、新観光名所としてのトイレ「チャームステーション」のデザインをきっかけに、日本の公共トイレ設計の第一線を長年走り続けて来られた小林純子さん(一般社団法人 日本トイレ協会会長)をお迎えしました。現在のトイレには当たり前のようにあるパウダースペースやオムツ交換台をどこよりも早く取り入れたのも実は小林さんです。

 

講師:小林純子さん(一般社団法人 日本トイレ協会 会長)

講座では、トイレ空間設計の変遷とその背景について講師自身設計の事例を織り交ぜながら解説がありました。約40年前、社会は「質より量」「個より集団」を重視し、トイレは画一的空間で4K(汚い・くさい・暗い・こわい)、排泄は忌み嫌われ隠されるべき存在でしたが、現在では、デザインが重視され、化粧や休息のスペースとしての役割もあり、バリアフリーなどあらゆる人々の多様なニーズへの対応など、社会の変化が反映されているそうです。また、商業施設などではトイレの快適さが集客や購買力につながっているという講師自身が行ったアンケート調査の結果や、快適さを維持するために、設計者(=生みの親)と従業員や清掃員(=育ての親)が定期的に「メンテナンス会議」を行い、そこで出された870項目の課題をもとにした改修、各階利用調査に基づく便器数の増減などの取組も紹介されました。

社会の変化が反映される公共トイレ

小田急線新宿駅西口のトイレ(IAUD国際デザイン賞2020公共空間デザイン部門金賞受賞)は「喧騒の中に安らぎの場」をコンセプトに、個室空間の貴重さの重要性が強調された設計になっています。

商業施設や駅などのトイレが発展していく一方で、学校のトイレ改修は、費用や短い工事期間、清掃体制などの理由により進まず、洋式化は令和2年の調査でも60%以下(公立小中学校)とのことです。講師デザインの新潟県の糸魚川小学校では、光が射す明るい設計で、トイレの前でお弁当を食べたり、楽しく談笑したりと人が集まる空間になっていると言います。

ご自身が設計の「THE TOKYO TOILET」(笹塚高架下)について解説

後半には、東京・渋谷区を中心としたプロジェクト「THE TOKYO TOILET」(一流建築家が公衆トイレに向き合い、機能・デザイン・メンテナンスの3拍子そろった17か所一挙に出現。)における講師デザインのトイレについて紹介がありました。高架下の環境を生かし、月をイメージした大きい黄色い屋根、明るい大きい窓にはうさぎが配され、安全を保ち、親子も利用しやすいという特徴があるそうです。

このプロジェクトは一般的に入札による最低金額で設計され、脆弱なメンテナンスが課題となる公衆トイレのイメージを破る取り組みとして自治体に影響を与えてほしいと話され、創造性のあるデザインを広報活動によりアピールし、トイレをめぐるツアーなど観光事業に発展する可能性も示唆されました。

講座後の質疑応答では、役所広司さんがトイレ清掃員の主人公を演じ、カンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞に輝いた映画『PERFECT DAYS』の撮影場所について聞く方もいらっしゃいました。

質疑応答の様子
パネル展示(講師設計のトイレ)

参加者の声

  • なかなか出会えないテーマの講座で大変興味深く学びがありました。(50代)
  • 日常に不可欠な行為なのにそれを中心に取り上げた講座なので興味を引かれました。様々なタイプのトイレを通じて 時代の変化などその背景を知ることができました。(40代)
  • トイレが思わぬところと関わっていて、思っていた以上にトイレの影響というものが大きいのだなと感じた 。普段気にせず利用していたトイレがすごく自分の考えや行動と関わっていて意外だった。(10代)
  • 貴重なお話 ありがとうございました。先生のトイレの研究のおかげで今の快適なトイレに進化したことがたくさんあり目から鱗でした。(50代)
  • 学校のトイレの洋式化がまだ60%以下なのにびっくりした。トイレは教育の一環 もっと使いやすい形に早くしてあげたいと感じた。(70代)