まなびぃすとセミナー【おいしいって何?―味が見えると未来が変わる―】の事業報告

開催日
2023年5月14日(日曜日)
開催場所
男女共同参画センター 多目的ホール(三重県総合文化センター) 
開催時間
13時30分 から 15時00分まで   
講師
鈴木 隆一さん(AISSY株式会社代表取締役社長)
参加人数
156名
参加費
無料

今回のまなびぃすとセミナーは大学時代に起業、ご自身も開発に携われた「AI味覚センサー レオ」により味覚を視覚化することで国内の有名食品メーカーの商品開発への協力や自治体からの依頼で「売れる特産品」の開発などにも活躍を広げる鈴木隆一さん(AISSY株式会社 代表取締役社長)をお迎えし、奥深い味覚の世界についてお話をいただきました。

講師:鈴木 隆一さん

学生時代、ラーメン屋経営に携わることで味覚の世界と出会い、産学連携コンサルタント会社を経てAI技術を生かしたビジネスの有望性に着目、食材の味を「甘み、苦味、酸味、塩味、旨味」の基本五味に変換、視覚化できる「AI味覚センサーレオ」を開発。
基本的に体温に近いと味は強く感じられ、冷えたみそ汁がしょっぱく、溶けたアイスクリームが甘ったるく感じるのはこのためだそうです。また、塩味と酸味はそうではないが、苦味と甘味と旨味は年齢によって感じ方に差が生まれるとのことでした。

次にある緑茶飲料の売上が約2倍に伸びたことについて、苦味と旨味が時間の経過による変化が少なくすることで「余韻」が残る味となり、売上アップにつながった事例が紹介さ

10代から80代まで、県外よりお越しの方もいらっしゃいました

れました。ちなみにスイーツを開発する場合、甘味に「余韻」が残らないようスッキリさせるのだそうです。

後半はおいしさの時代による変化や日本の味覚の現況や今後の可能性についてのお話でした。
かつて食は「インフラ」でしたが、今は「エンタメ」になっていて、私たちは常に「ちょっと新しい味」を求めているそうです。カレーとラーメンは長く日本人に愛されていますが、味のアレンジがしやすいという側面があるからで、30年前と今では人々が求める味は同じだろうかという興味深い指摘もありました。
また、講師が行った「味覚力調査」では旨味調味料0.04%の水と何も入っていない水の違いを外国人の正答率の2倍以上である、7割以上の日本人が感じ取ることができたのは、海産物を食してきた歴史の中で旨味を感じる味覚が研ぎ澄まされてきたこと、日本食が味の引き算を特徴とした素材本来の味を生かしたものであること、そして、幼少期からの食育の力も大きいのではと結果の分析を述べられました。

最新の傾向として、「だし」が外国で好まれたり、日本酒を外国料理と組み合わせることで生まれるおいしさの相乗効果が注目を集めるなど、世界の味覚が「旨味」中心となるのでは?と話されました。そして、日本人の味覚を輸出することで日本食をメジャーにしたいと今後の展望を語り、講座を締めくくられました。

質疑応答では「人の味覚は先天的なもの?後天的なもの?」や「今後、『味の著作権』が生まれ、管理される世の中になる可能性は?」など多様な視点からの質問がなされました。

「日本食を世界でもっとメジャーにしたい」と話す講師
質疑応答の様子

参加者の声

  • 食品企業の戦略 (裏側)が少し分かった。日本人の味覚が優れていることがよくわかった。
  • 先日 テレビで日本の漬物屋の店主がフランスで漬物を広めたいと移住し 試行錯誤している番組を見ました。フランス人は旨味を感じにくいので酸味や 塩味 をプラスして商品を作っていました。 日本食を世界に広める 苦労も知り 鈴木さんの味覚センサーのような味覚が数値化されるものが必要であると 今日の話を聞いていて感じました。ありがとうございました。
  • 講師はサイエンスにも真摯に向き合っていると感じた。 質問対応も誠実であったと思う。
  • 大変興味深く拝聴いたしました 。元管理栄養士でしたが、大いに賛同、感銘を受けました。