みえアカデミックセミナー2022移動講座(熊野市)
皇學館大学公開セミナー
「修験道の思想と修行 ―大峰奥駈修行の事例から―」

開催日
2022年2月12日(日曜日)
開催場所
熊野市文化交流センター 交流ホール
開催時間
14時00分から15時30分まで
講師
皇學館大学 文学部 神道学科 教授 中山 郁さん
参加人数
51名
参加費
無料

県内の全ての高等教育機関と連携し、各校の特色を活かしたセミナーを開催している「みえアカデミックセミナー」。
夏には三重県総合文化センターで公開セミナーを開催しました。冬からは、更に各市町が加わり「みえアカデミックセミナー移動講座」として出張講座を開催しています。今年度は、名張市、伊賀市、熊野市、大台町の4市町で開催します。


みえアカデミックセミナー2022移動講座(全4回)の第3回目は、皇學館大学 文学部 神道学科 教授 中山 郁さんを講師にお招きして、熊野市の会場にて公開セミナーを開催しました。


皇學館大学 文学部 神道学科 教授 中山 郁さん

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【講演内容紹介文(チラシより)】

日本で俗人が参加できる最も厳しい修行が現在も熊野の山々で行われています。すなわち「大峰奥駈修行」です。今回は、私自身も複数回経験させていただいたこの修行の様子を紹介しながら、修験道の世界観、山岳観、人間と自然の関係性について、動画を交えながらご紹介したいと考えております。
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当日は講師の中山さんに修験者の衣装とほら貝の実演を披露していただきました。

1.「修験道」とは?
ー修験道とはいかなる宗教で、「修験者」ってなに?ー
“山とはいかなる世界なのか?”という山中他界(観)についてや、修験道における「修験」と「道」の意味、修験道の本尊と開祖について教えていただきました。修験道の思想には日本人の自然観・山観・生命感が凝縮されていると説明していただき、修験道における山岳修行の意味についても語られました。また、人と山との関わりの変化とともに、古代から近代までの修験道の歴史について教えていただきました。そして、修行の定義や修行の種類についても分かりやすく解説していただきました。

講演の様子

2.修験道の思想と修行
ー人は山に入るとどのように変わってゆくのだろう?ー
修験道の修行の種類についても教えていただき、修験道における「擬死再生の修行」についてや、山岳での修行と登頂によって神仏との一体化を象徴する「即身即仏」ついて詳しく説明していただきました。また、山を尾根伝いに歩き、心身を浄化し雑念を払い心を集中する行である「抖擻(とそう)修行」について、山林修行の基本であると語られ、その現存例が「大峰奥駈(おおみねおくがけ)修行」であり、俗人が参加できる日本で最も厳しい修行だとおっしゃられました。

講演の様子_2

3.大峰奥駈修行
ー日本で在野が経験できる最もきつい修行とは?ー
奈良県吉野山から和歌山県の熊野三山までを縦走する全行程200キロの「大峰奥駈修行」について、成立時期や山中での行動について分かりやすく教えていただき、山で感じるすべての経験と音を神仏の教えや説法(ことば)としてとらえるのだとおっしゃられました。また、過去の文献に命がけの行であったことが記されていることや鐘掛岩の行や西野覗修行の写真をもとに実際の大峰奥駈修行について解説していただきました。修験道の行法である「十界修行」が大峰奥駈修行ではどのように解釈されているのかについても教えていただきました。最後に、修験道の「験」は目的ではなく、結果の一つであり、死と再生の行を通じた新しい自分との向き合いが「行」の魅力であると語られ、修験道の修行には、日本人の自然(神)との極めて近い関係性という、西欧社会の自然観との大きな相違が影響しているのだとおっしゃられ、この日の講座は終了しました。

参加者の声

  • 今後の山登りの際に山に対する思いが変わるかもしれません。
  • 大峰奥駈をもう一度歩いてみたいです。
  • 大変分かりやすく勉強になりました。 有意義な時間ありがとうございました。
  • 熊野古道、特に奥駈の修験道についてより理解が深まりました。 ありがとうございました。
  • 全く知らない世界のこと、 わかりやすくお話いただき興味深く聞かせていただきました。