みえアカデミックセミナー2022
ユマニテク短期大学公開セミナー
「子どもの絵に学ぶ ー発達とその特性ー」の事業報告

開催日
2022年8月24日(水曜日)
開催場所
三重県文化会館1階 レセプションルーム
開催時間
13時30分から15時20分まで
講師
ユマニテク短期大学 幼児保育学科  教授 安藤 恭子さん
受講人数
57名
受講料
無料

「みえアカデミックセミナー」は三重県内の大学・短大・高専・放送大学を含めた高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。
毎年7月から8月(令和4年度は7月14日から8月27日まで)にかけて、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご専門の研究内容を分かりやすく講演いただいています。
前身となる「みえ6大学公開講座」(1996年スタート)から既に20年を過ぎ、「みえアカデミックセミナー」としては、19年目を迎えました。
今後も、県内の皆さんにたくさんの「まなびの種」をお届けしてまいります。
※令和4年度は2セミナーの中止により13セミナーを開催しました。


令和4年度のユマニテク短期大学公開セミナーは、ユマニテク短期大学 幼児保育学科 教授 安藤 恭子さんを講師にお迎えしました。

ユマニテク短期大学 幼児保育学科 教授 安藤 恭子さん

**************************【講演概要(ホームページ・チラシ紹介文より)】
子どもの絵はほほ笑ましい。だが、大人が考えもしないことをやってのけると感心させられることも多い。子どもの絵画指導に携わってきた経験を踏まえ、子どもの絵の世界観について実際の絵(作品)を楽しく鑑賞しながら、そこから大人が受け取る教訓や、子どもの次への表現のきっかけの与え方等について学びます。
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講演の様子_1

はじめに
まず、講師の安藤さんがこれまでに描いたり、作ったりした素敵な作品とともに自己紹介をしていただきました。

1.思わずほほえんでしまう?感心してしまう?幼児の表現とその特徴
描く内容と発達の関係について、5年生と3歳の姉妹がみかんを描いた際の体験をお話しいただき、5年生くらいになると写真のように自分が見た通りの絵を描くことができるようになり、3歳くらいだとみかんのへたと裏側のくぼみを1つのみかんの中で表現しようとするなど、自分が発見したことなどを絵に描くというように年齢によって違いがあると説明していただきました。

また、幼児の絵の特徴について、3歳くらいだと顔からいきなり手足が出ているような絵を描いたり、人物の違いを大きさでは表さず、子どもを大人よりも大きく描く場合もあったりすると、実際に幼児の絵をスクリーンに映して解説していただきました。また、人物を正面と横向きに描いた場合の年齢差など、描く絵によって発達段階における特徴があることや成長とともに認識することを色々増やしながら絵に表現していくことなどについて詳しく教えていただきました。

講演の様子_2

2.
(1)四枚のいもほりの絵(低学年児童)から一人一人のこだわりが見えてくる
続いて、子どもが描いた四枚のいもほりの絵から参加者の皆さんにそれぞれの「推し絵」を選んでいただき、代表の方にその理由を語っていただきました。その後、講師の安藤さんからそれぞれの絵について子どもたちが何に興味を持って描いたのかについて解説していただき、同じ「いもほり」をテーマにしても、いもよりも蔓の長さが印象に残ってメインに描いた子や、みんなで掘ったことに関心を寄せた子、お姉ちゃんから借りたスコップを使って掘ったことが嬉しくてスコップを中心に描いた子など、その子どもの興味や関心が描いた絵からは伝わってくることや、「いもほり」という同じテーマでもひとりひとりが違う視点で描くことを教えていただきました。そして、子どもの絵の良さとは自分なりの視点でもって表現することであり、大人は絵を見て一緒に感動を分かち合い、子どもの発見に共感することが大切であると語られました。 

(2)絵には「まほう」がかけられる!
大玉ころがしの絵を描く際に、「大玉に手が届かない」と子どもに講師の安藤さんがアドバイスをしたところ、子どもが絵の中の手を伸ばして大玉に届かせることを思いついたエピソードをご紹介いただき、絵には子ども独自の「まほう」をかけられると語られました。

(3)ザリガニの絵どこが変?
2年生に描いた絵を4年生になって振り返った際に、2年生の時には気づかなかった部分を発見したことで、4年生の自分にとって描き忘れていた絵は変だと思うと報告してきた子どものエピソードを紹介していただき、成長すると見たままを描かなければと思ってしまうけれど、低学年ごろまではそういうことを意識せず、自分の視点で表現しようとすることが面白いとおっしゃられました。また、自分の普段の体験からザリガニの絵を腹側から表現した子のエピソードも紹介していただき、子どもの絵にはその子の生活が表れるのだと語られました。

(4)物語に沿って表現できる貼り絵(かさこ地蔵)
クレパスや絵の具だけでなく、貼り絵を用いることで子どもたちの表現の幅を広げることができると教えていただきました。

(5)古い木綿の布も捨てられない!画像紙より適することがある
白い紙だと何を描いていいか分からないと拒絶反応を起こす子もいるので、要らなくなった布などを用いることで、子どもの描いてみたいという気持ちを呼び起こすことができることや、色画用紙を用いることで、例えば茶色の画用紙なら運動場、水色の画用紙ならプールに例えるなど、子どもが描きやすい状態を作り出し、子どもが少しでも自分の思いを描くことができるように手助けしてあげることも周りの大人の大切な役割であると語られました。

講師の安藤さんが描いた絵

3.
(1)「水仙月の4日」宮沢賢治もびっくり!こんなにも表現を追及できるのか(高学年児童)
物語を聞いて自分なりに物語の一場面を表現する「お話の絵」について、高学年児童になるとだんだん大人の絵に近づいてくる年代であり、どのように構図を組み立てるかというテーマに対し、自分なりの表現で様々な構図を考えるようになると、子どもたちの絵をもとに紹介していただきました。また、絵の具の使い方も自ら考えて工夫し、表現の幅を広げる子も出てくるとおっしゃられました。

(2)「これは、表現するのに便利!」子どもたちが生み出した「彩色の窓」
講師の安藤さんが子どもたちと一緒に作り上げた「彩色の窓」も用いて、「色合い」・「水の分量」・「筆遣い」について分かりやすく具体例を交えて教えていただきました。
1.パレットは絵の具の学校 
絵筆についても子どもがやってしまいがちなバケツに入れっぱなしな状態を防ぐために、「絵筆が窒息してしまうからバケツから必ず出しましょう」と言ったり、「お風呂から出た後必ずタオルで体をふくように筆も拭いてあげましょう」と言ったりするなど例えを出して行動を促すと、子どもたちが片付けを習慣化できるといった、教える側のテクニックについてもお話しいただきました。また、絵の具のパレットを教室や運動場など学校に例えることで、それぞれの色を出す場所を常に出す場所を固定したり、絵の具をパレットに出す際は絵の具の入っていた順番と同じように出すなど、子どもたちにとって分かりやすく、汚れやすい絵の具のパレットを綺麗に使い続けられるコツついて教えていただきました。
2.ジャム・スープ・ジュース
水彩絵の具の扱い方を子どもたちにも分かりやすいように「ジャム・スープ・ジュース」と食べ物に例えて、水加減で調整する方法についても分かりやすく教えていただきました。

(3)アクティブラーニングに繋がる授業の構造化と実践例
アクティブラーニングと美術の授業の関係性について教えていただきました。

まとめ
最後に、同じテーマでも年代によって描き方が違うことや、描くという行為を通して子どもたちは自分で刺激を与えたり、友達同士で磨き合い高め合ったりすることができるのではないかとおっしゃられ、この日のセミナーは終了しました。

参加者の声

  • タイトルに興味をもって参加しました。講師はとても親しみやすいトークで説明してくれました。子どもの絵に対する見方をよく勉強させていただきました。
  • 子どもが絵で何を表そうとしているのかそれぞれ意図があるということがわかった。
  • 安藤恭子先生に絵を習いたくなる素敵な講座でした。ありがとうございました。
  • たくさんの絵を見ながら、子どもの成長過程や絵にこめられた気持ちなど様々なことがわかって興味深かったです。楽しいお話ありがとうございました。
  • とってもステキな講座でした。実際に絵を見せてもらうことでより分かりやすかったです。先生の今までの経験がたくさんつまった講演会でした。又ぜひ聞かせてほしいです!!