みえアカデミックセミナー2022
三重短期大学公開セミナー
「人工知能の現状」の事業報告

開催日
2022年8月18日(木曜日)
開催場所
三重県文化会館1階 レセプションルーム
開催時間
13時30分から15時00分まで
講師
三重短期大学 生活科学科 准教授 笠 浩一朗さん
受講人数
61名
参加費
無料

「みえアカデミックセミナー」は三重県内の大学・短大・高専・放送大学を含めた高等教育機関との連携で生まれた公開セミナーです。
毎年7月から8月(令和4年度は7月14日から8月27日まで)にかけて、三重県総合文化センターを会場に、各校1日程ずつ、選りすぐりの先生にご専門の研究内容を分かりやすく講演いただいています。
前身となる「みえ6大学公開講座」(1996年スタート)から既に20年を過ぎ、「みえアカデミックセミナー」としては、19年目を迎えました。
今後も、県内の皆さんにたくさんの「まなびの種」をお届けしてまいります。
※令和4年度は2セミナーの中止により13セミナーを開催しました。


令和4年度の三重短期大学公開セミナーは、三重短期大学 生活科学科 准教授 笠 浩一朗さんを講師にお迎えしました。

三重短期大学 生活科学科 准教授 笠 浩一朗さん

**************************【講演概要(ホームページ・チラシ紹介文より)】
近年ディープラーニングによって人工知能が急速に進化しており、それにより社会が大きく変わろうとしています。現在の人工知能のブームは、これまでのブームと、どのように違うのかについて解説します。また、人工知能のブームが今後社会にどのような影響を与えるのかについて一緒に考えてみましょう。
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講演の様子1(2022年8月18日)

人工知能の歴史
■人工知能とは何か
人工知能とは、辞書的な意味としては「人間の知能のはたらきを人工的に実現したもの」であるとおっしゃられ、「人間の知能のはたらき」について、会話をしたり、人・動物・物などを認識したり、車の運転をすることだと具体的な例をもとに説明していただきました。

■人工知能の歴史
人工知能のブームは大きく3回に分けて起こったとおっしゃられ、人工知能の流れについて「第1次 A1ブーム」・「第2次 AIブーム」・「第3次 AIブーム」の順番で詳しく解説していただきました。

人工知能にはコンピューターの存在が必要不可欠であることから、「第1次 A1ブーム」は、1946年のコンピューター誕生に始まり、人工知能という言葉が誕生した1956年は「人工知能の起源」の年とされ、コンピュータに色々な人工的なことをさせようという動きが始まり、コンピュータが推論や探索をすることで特定の問題を解くまでに至ったものの、現実世界では役に立たなかったため、その後一旦ブームが去ってしまい、コンピューターに「知識」を入れて賢くしようという動きが広がり、「エキスパートシステム」の登場により人工知能への期待が再び高まったことで「第2次AIブーム」が訪れ、手作業で複雑な「知識」を入力し続けるということに限界がおこり、人工知能への関心が薄れてしまいブームが終焉したのちに、家庭用パソコンが普及し、ウェブサイトの広がりという流れを受けて現在まで続く「第3次AIブーム」につながったのだ説明していただきました。特にウェブサイトの広がりは影響が大きく、たくさんの言葉や画像のデータが自動的に蓄積されるようになったことで、人工知能による大量の知識獲得と自律的な学習が可能になり、「第3次AIブーム」の特徴である「ディープラーニング」の導入は、Google翻訳の性能向上が話題になるなど、これまでのAIブームのように一過性のものではなく、日常生活に人工知能が浸透しだし、やがて人工知能が不可欠な社会が到来するのではないかと考えられていると語られました。

講演の様子2(2022年8月18日)

講師の研究成果
■同時通訳とは/■最近の研究成果
講師の笠さんが取り組まれた人工知能を利用した同時通訳システムの開発について、同時通訳と標準訳の違いや、訳者のテクニックとはどのようなものか、人工知能で同時通訳を行う場合の課題や解決のプロセスについて分かりやすくお話ししていただきました。

人工知能の現状
■ディープラーニング
人工知能を知る上で、非常に重要なキーワードが「ディープラーニング」であり、多層構造の「ニューラルネットワーク」であるディープラーニングについて理解するために、ニューラルネットワークとは何か、じゃんけんのグー・チョキ・パーを認識するニューラルネットワークの仕組みなどを例に解説をいただきました。そして、「入力層」・「中間層」・「出力層」で構成される単純なニューラルネットワークとディープラーニングの違いは、「中間層」がさらに細分化されていることであり、コンピューターの性能の向上やデータの蓄積化が進んだことにも影響され、複雑な学習が可能になったと語られました。さらに、Googleが開発した人工知能のシステムによる自立学習した猫の画像を例に、ディープラーニングの画像認識の仕組みについても詳しく説明していただきました。ディープラーニングも人工知能に関するすべての問題を解決できるわけではなく、大量の学習データが必要なことや、出力した結果の理由が説明できない、人手によるチューニングが必要など大きく3つの限界が考えられているとおっしゃられました。

■人工知能の応用例
AIが与えた影響について、「AI時代の申し子」と呼ばれる棋士の藤井聡太さんを例に挙げられ、コンピューター将棋の学習方法の変化が棋士の学習方法の変化にも影響を与え合っていることや、他にもAIタクシーの取り組み、社員の評価に人工知能が導入された例などをもとに解説していただきました。

講演の様子3(2022年8月18日)

人工知能の将来
■AIによりなくなる仕事
人工知能によって人間の仕事が奪われるのではないかという懸念も社会には存在しているとおっしゃられ、実際に検証した過去の論文をもとに、多くの職種で人工知能化は技術面においては可能とされているものの、複合的に考えるとすぐに変化するわけではないと考えられていることや、人工知能が代替できないと考えられている職種とその理由についても解説していただきました。

■シンギュラリティ(技術的特異点)
人工知能が発達し、人間の知性を超えることによって、人間の生活に大きな変化が起こるとされる「シンギュラリティ」について、予測される時期やどのように考えられているかについてもお話しいただきました。

最後に、近年のAIに関する話題について、小説を書いたAIに関する取り組みや、文書の自動生成を可能としたシステム、2022年に話題となった画像の自動生成サービスについても紹介していただき、この日のセミナーは終了しました。

参加者の声

  • 専門的知識を聞けて少し学習できました。未知の世界ですが参加しました。ありがとうございました。
  • ディープラーニングの限界があり、AIはオールマイティではないことの理解ができました。参考文献を読んでみたくなりました。
  • AI入門として興味深く聴きました。
  • 人工知能は世間でいろいろ話題にあがっていますが概念把握に役立つと思います。
  • 先生や学校の説明がありとても良く分かって良かったです。とても専門的な分野のお話ですが身近な話題でお話下さりとても分かりやすく先生の研究内容の発表もとても良かったです。最新情報をお伺いできとても興味深かったです。ありがとうございました。